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2004.12.17
亜門版「太平洋序曲」に称賛と批判

ミュージカルの本場、ニューヨーク・ブロードウェーで、宮本亜門演出の「太平洋序曲」が上演されて話題を集めている。ブロードウェーでアジア人の演出家が作品を手がけるのは史上初めて。

1年以上の準備を経てこぎつけた、今月2日の初日。公演後の宮本さんは思わず涙をこぼした。「役者たちが本当に素晴らしい演技をしてくれた。それがうれしかったですね」。18歳の時から夢見た本場の舞台が実現した日だった。

出演者には黒人やアジア系も珍しくないブロードウェーも、作り手は白人主流だ。「白人95%、黒人5%という感じ。かつては英国の演出家がやるだけで大騒ぎになった所ですから」と宮本さん。今回の公演で、厚い壁が一つ破られたのだ。

「太平洋序曲」は28年前に、米国人の作、演出で初演された。2000年に宮本さんがリメークして日本で上演したのを見たオリジナルの作曲家、スティーブン・ソンドハイムさんが絶賛。その後押しで、2002年、米国で短期公演が行われ、日本での再演を経てブロードウェー公演が実現した。今回はアジア系米国人の役者を中心に起用した英語版(過去の上演は日本人による日本語版)。宮本さんも通訳なしで演出した。

舞台は幕末の日本。黒船来航にあわてふためく日本人を描き、居丈高な米国人の姿を風刺する。米国の外圧で開国した日本の、その後150年間の発展も紹介し、イラク戦争までも登場する実験作に評価は分かれている。

ウォールストリート・ジャーナル紙は「これまでのブロードウェーで、最も魅惑的で美しいショー」と絶賛。ニューヨーク・ポスト紙は「シンプルで深みのある能の舞台だ」と評した。

一方で、日本人俳優が演じた前回の米国公演と比べて見劣りがするという酷評も多かった。ニューヨーク・タイムズ紙は「役者にとまどいがある。『自分は何をやっているんだろう』と自問しながら演じているようだった」と出演者の理解不足を指摘。「観客に考えてほしいので、舞台では結論を出さない」という演出の意図も「主張がわからない」(ワシントン・ポスト紙)とされた。

宮本さんには「役者たちはアジア系だけれど米国育ち。作品のテーマについては、けいこ場で議論を重ねて勉強してきたけど、米国批判の部分はどうしてもつらいし、恐怖感が出てしまう」という反省点もある。だが、作品の出来には自信がある。批判も本場ゆえの厳しさと受け止め、「各紙とも大きな紙面を割き、熱心に見たうえで、指摘してくれてうれしい。これでブロードウェーの一員になれた、と感じています」。

公演は1月末までの予定。

(毎日新聞報道より)

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