第5話 ど深夜の試写会へ 2008.4.23更新
それは草木も眠る丑三つ時・・・のちょっと前、午前0時集合で、0:15からの試写会だった。場所は新宿の映画館、新宿バルト9。作品は青山劇場で上演された芝居をそのまんまビデオカメラで撮影し編集した作品。芝居自体が3時間半もあるんで午前0:15からの上映って言うと、終わるのはいったい・・・。
演劇作品のDVD販売で知られるイーオシバイが、パッケージ版のDVD販売だけでなく、全国の映画館で上映する目的で、高性能カメラで撮影し、凝った編集で作品化している企画が「ゲキ×シネ」だ。これまで5作品が作られており最新作の「朧の森に棲む鬼」は全国20会場で上映されている。
| 舞台上演
| 上映
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1.髑髏城の七人〜アカドクロ
| 2004.4
| 2004.9
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2.髑髏城の七人〜アオドクロ
| 2004.10
| 2005.3
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3.SHOROH
| 2004.12
| 2005.8
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4.メタルマクベス
| 2006.5
| 2007.2
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5.朧の森に棲む鬼
| 2007.1
| 2007.10
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この日試写会が行われた作品「メタルマクベス」も、2006年5月に東京・大阪で上演された作品。原作はシェイクスピア四大悲劇のひとつ「マクベス」で、脚色:宮藤官九郎、演出:いのうえひでのり、出演は内野聖陽、松たか子、森山未來 北村有起哉、上條恒彦など。2006年度のぴあテン、えんぶチャート、シアターガイドベストステージなどを総ナメにした作品だ。
2007.02.28■シアターガイドがベストステージ発表
2007.03.04■ぴあテン1位は「メタルマクベス」
2007.03.15■えんぶチャート2006、1位は「メタマク」
ところで、このゲキ×シネ版「メタルマクベス」はこの日が最初の上映ではない。昨年2月の新宿バルト9のオープニング記念上映が一週間の期間限定で行われている。新宿に新たに出来たシネコン(映画館が9つ)の開場記念作品としてこの「メタルマクベス」が選ばれ上映されたのだ。2007年2月9日(金)〜16日(金)1日2回上映で、なんと5000人もの観客が集まったのだとか。(前売2000円、当日2500円)
そして、このたび、全国公開が決まり、新たに編集に手直しがなされ、その非公式完成試写会が行われたのだった。全国公開は5月24日から。公式試写会は4月末に用意されているらしい・・・。
◆
さて、ど深夜の試写会である。新宿バルト9はレイトショーも多く、午前0時すぎに終演を迎える作品も多い。例えば4月23日なら「銀幕版 スシ王子! 〜ニューヨークへ行く〜」「劇場版 名探偵コナン 戦慄の楽譜」「大いなる陰謀」「劇場版 仮面ライダー電王&キバ クライマックス刑事」「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」「クローバーフィールド -HAKAISHA-」「SWEET RAIN 死神の精度」「魔法にかけられて」「クロサギ」「ワンピースTHE MOVIE」「朧の森に棲む鬼(ゲキ×シネ)」「仁義なき戦い」の12作品が午前様になっている。
新宿バルト9
とはいえ、4月16日深夜のそこは、静かでちょっと寒々しかった。会場に入ると、200席ぐらいの劇場に、お客は10人ぐらいという・・・そりゃ確かにこの時間の試写会じゃ集まらないんだろう。本来の試写会は後日行われるということで、この日はスタッフ中心の会だった。とりあえずできあがったので、映画館で通しで上映してみよう、せっかくなので見たい人はどうぞ、という会だ。この後、音の手直しがあるかもしれないとも言っていたし。
そう、「音」だ。ゲキ×シネ第一作の「髑髏城の七人〜アカドクロ」を見たとき思ったのだ。舞台撮影ではセリフと音楽(BGM)を同時に録音せざるをえないため、どうしても音源からダイレクトに出すのと比べると音質が落ちるのだ。ましてや「メタルマクベス」はミュージカルだし、「メタル」すなわち「ヘビーメタル(ハードロック)」という音楽がテーマなのだから・・・音で妥協はできない。サウンドミキサーは地獄だろう。どうクリアするのか。5.1chで公開すると言うし・・・。
結論から言うと、音屋さんはとってもいい仕事をしていた。もちろん、ハードルは高いが、それでも充分及第点を取れるものを作っていた。たいしたもんだ。あとは・・・映画館の音響機材次第だ。とにかく、以前とは比べ物にならないクオリティになっていた。
それにしても、作品が3時間半もある・・・。芝居ファンなら驚かないだろうが、映画ファンはどう感じるのだろうか。途中休憩がある映画なんて・・・。一般公開では芝居と同じく15分休憩を入れるという。この日の試写会では3分しか休まなかったが・・・。もちろん、芝居慣れしている私は苦にならなかったし、眠くもならなかったのだが・・・。それぐらい「面白かった」のだ!
実際、不安があった。ゲキ×シネ初の全国ツアー作品なのだから、なんとか面白い作品になってるといいなあ、と祈っていたのだ。なのに、ミュージカルだし、3時間半だし、「なぜにそんなにハードル上げるっ?!」て思ってた。だいたい「シェイクスピア」ファンとクドカンファン・新感線ファンは重ならないわけだし・・・。
杞憂でした。音も芝居も及第点だ。松たか子も森山未來もテレビじゃ絶対に見れない芝居をしている。そのどアップが2000円で見れる。芝居だと12000円だったものが2000円だ。いや、12000円払っても、近眼の私にはあんな表情を読み取ることはできない。映像ならではだ。映像は「生(ナマ)」の迫力に及ばない、とはよく言われることだが、こと「ゲキ×シネ」に限っては、そうとも言えないものがある。作品自体が「大劇場もの」だし、もともとワイヤレスマイクでセリフを拾っているというのもあるが、正直「大差ない」んじゃないかと思える。もちろん、DVDを自宅のしょぼいテレビで見るのと、映画館の大きなスクリーン、巨大スピーカーで体験するのとでは大違いだろう。それだけは断言できるというもんだ。
聞くところによると過去のゲキ×シネ上映の際に多くの人が「いままで芝居を見たことない人」を連れてきているのだという。2000円なのでハードルが低く感じるのだろう。その結果、多くの人が満足してもらっているのだとか。初めて「芝居」を見る人、「新感線」を見る人に喜んでもらっているのだとか。嬉しいことだ。
松竹が歌舞伎の舞台を撮影し「シネマ歌舞伎」として映画館上映している。今度は海外上映も行うという。さらにはソニーが舞台作品の映画館上映に乗り出すという。そして最近の大ニュースとして芝居のDVDがオリコンのチャートに入った・・・時代が大きく動いている予感がする。映像に対する技術革新のおかげだ。演劇という「場所と時間に縛られたコンテンツ」が、その呪縛から解き放たれるというのだろうか。その可能性は感じていたのだが、もしかするとこの「メタルマクベス」は大きなきっかけになるかもしれない・・・なんて。なんか、大変なことになってるんじゃなかろうか・・・。
2008.4.11■「シネマ歌舞伎」が海外上映へ
2008.3.12■音楽座の舞台映像を全国の映画館へ配給
2008.4.10■演劇DVDがオリコン2位に!
帰途。午前4時の新宿、自転車をこぎながら興奮していた。「あれ」を全国の人に2000円で見てもらえるということに感動していた。すごいじゃないか。「あれ」を入口にして、演劇なんて見たことないという人が芝居小屋に来るかもしれない。あるいは12000円の芝居を見ない多くの役者は、自分たちの芝居と比較してショックを受けるかもしれない。あまりよその芝居を見ない演劇人は多いしね。あるいは、芝居の作り手の中には「映像化」を考える人も出てくるだろう。日々、コンテンツを求めているネットのえらい人の中には、演劇のネット配信も「ちゃんと作れば可能かもしれない」と思うだろう。まだまだ技術革新は必要だし、ツールの低廉化、デジタル上映機材の普及なども必要だ。しかし、それらは時間が解決してくれる。そう信じたい。午前4時の甲州街道をぶっとばしながらそんなことを考えていたのだった。いいもん見たな。久しぶりに目撃しちゃったな。そんなことを感じていたのだった。
2008.3.10■ゲキシネのメタマクが全国ツアー
ゲキ×シネ公式サイト
E!oshibai(イーオシバイ)
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