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2003.2.21
ダメな方にこじれちゃってる静岡・上演中止問題

昨年の6月に第一報を報じ、12月には続報と解説までも報じた静岡県磐田市での演劇公演中止問題が、その後、ますますダメな方にこじれちゃっている。報道(静岡新聞西部版2月9日付)によると市教委はいったん決定した劇団との和解案を撤回し、公演委託料百万円の返還を劇団に請求する方針であることが明らかになった。支払いに応じない場合は訴訟も辞さないという。

この公演は磐田市の市民文化会館が主催するもので、委託を受けた劇団の作品中に「差別を助長する表現がある」ということで、市主催のものとしてはふさわしくない、と公演二日前に中止となったもの。

問題が再燃したのは、前館長と劇団プロデューサーの「口裏合わせ工作」が浮上したためだ。公演の際、劇団は事前に台本を提出した。それに対し、そのときの文化会館の館長が「差別表現を直せ」と言ったわけだが、劇団は応じずに公演を行おうとした、というのが前回の調査であきらかになっていた。ここから「劇団には差別を助長するシナリオを上演しようとした法的責任」がある、という指摘がされていた。

ところが、実は事前の修正要請はなかったことがあきらかになった。前館長とプロデューサーとの間で口裏あわせがあったというのだ。本来は劇団にはなんら非がない、ということになるが、今後のことを考え、前館長から「事前に言ったことにしておいてくれ」と言われ、「はい」と答えたという。

で、この「口裏合わせ」という行為が問題視され、「劇団の言い分は信用できない」ということで、渡した百万円の返還が要求されることとなったわけだ・・・。

さて、どうでしょうか。「事前の修正要請があった」にも関わらず公演を行おうとしたのでないとすると、劇団の「法的責任」は何になるのでしょうか。やはり「差別表現そのもの」が問題なのでしょうか。しかし、演劇の中の差別表現を裁判で問えると思っているのでしょうか。個人の名誉を毀損する問題とは違うわけですから、難しいと思いますが。

この問題、大人の政治が絡んでいるので、報道されたまんまの利害関係だけでは判断できません。しかし、この国の文化に対する民度の低さをみせつけちゃってるようでもあり、ちょっと情けない気がします。問わなければいけないのは「劇団に法的責任はあったのか?」であり、口裏合わせは問題ではあるけれど二次的なものです。

「差別的な表現」にフタをすれば「差別」がなくなると思うのは間違いです。「暴力シーン」が「暴力を助長する」という論がなんの根拠もないのと同じと言えるかもしれません。今回の問題は、「表現活動を尊重する」かどうかという「国民のレベル」が問われているように思われます。あまりにもダメなほうに向かっています。ただ、これは静岡だけの問題じゃなくて、きっと日本全国の表現者が抱えている問題なのでしょうね。あまり報道されないけど。その意味で、こうやってこじれて報道されていることは、悪いことではないのかもしれません。

劇団はツライでしょうけど・・・。

2002.6.23■差別的表現を理由に公演中止(静岡)
2002.12.23■静岡・演劇上演中止問題続報(1)
2002.12.23■静岡・演劇上演中止問題続報(2)
2002.12.23 ニュース解説(じんぼ)


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