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【No.008】

日本の演劇状況を変えるか、アゴラ劇場新システム

衝撃の発表からひと月半、「劇場費無料」というアゴラ劇場新しいシステムの現状と、それへの反響を探ってみた。

簡単にアゴラの新システムを紹介すると、アゴラで公演を行う劇団は、劇場費が無料となり、電気代などのみ負担でいい。アゴラ劇場の話では、「劇場費無料」というのは、劇場が今の段階でできる最低の保証であり、可能性としてはさらに多くの協力もできるかもしれないそうだ。すなわち、劇団から徴収する劇場費の代わりに、「助成金」と「支援会員費」でまかなうわけだが、この額を増やすべく、最大限の努力を行っているとか。いっぱい集まれば劇団に還元する、のだそうだ。聞いてて涙が出そうです。

アゴラはもう、めちゃめちゃかっこいいこと言ってます(って、まあ、スランプのない平田さんが言ってるんですけど)。つまり、芝居は料金が高すぎる、と。それは、制作費がいっぱいかかるから、料金を上げざるを得ないわけです。芝居作りは金がかかるけど、収入は少ないということ。で、それに対するアゴラの姿勢はこうです。「制作費と収入のギャップは、劇場側が、どこかから調達してくるべきものであり、それは劇場の責務であるとさえ考えている。」・・・「劇場」が劇団の収入の足りない部分を補ってくれるんだと。それは「劇場の責務」なんだと。そんなこと考えてもみませんでした・・・こんなこと言ってあたしらを泣かせて、ナニさせようって言うのでしょうか。なんでもします。

しかしまあ、どっかから持ってくるって言っても、「どっか」ってどこなんでしょう。やっぱ、そこんところはつっこんでみたくなります。

アゴラの戦略はこうだ。まず、助成金。現在、青年団は新世紀アーツプランの特別支援団体になっています。この助成金はけっこうな額みたいです。で、この助成金を使って、若手劇団を支援していく、と。「新世紀アーツプラン」って知ってますか? 平成14年度から始まったやつです。演劇・映画・音楽などに年間193億円を助成するもの。団体の公演支援は70億円が72団体に配られました(演劇は19団体)。なんか、すげえ金額なのでピンときませんが、2001年に話題になった「文化芸術振興基本法」のおかげで、えらい増額になっていたみたいです。

アゴラはさらに、文化庁の芸術拠点助成も狙っているという。14年度は民間劇場の採択がなかったわけですが、いつかはきっと・・・どうでしょうか。まあ、アゴラが選ばれないのであれば、民間劇場なんかには絶対に降りてこないってことでしょう。いや、いずれ・・・。民間劇場が選ばれなかったことで非難されていた文化庁は、どう思っているんでしょうか。

さて、わたし的には助成金のことはよくわからないのですが、「支援会員制度」にはとても興味があります。その会費が劇場費の代わりになるらしいのですが、いったいどんだけ集まるのかしら?

この「劇場支援会員」は現在募集が始まっている。1万円から5万円までの五つの会員種別がある。一般の「通常会員」は1万円でチケット引換券5枚、企業などの団体に適用される「法人会員」は5万円で引換券50枚。

さて、そこで問題になるのは、「アゴラは劇場費代わりの支援金を、いったいいくら集めねばならないのか」ということ。アゴラの小屋代って1週間で50万円ぐらいだ。年間で2500万円。実際には、アゴラは小屋代の取れない青年団の自主公演も行っているので、現在は1500万円前後の劇場収入だそうだ。これを、助成金と支援会員費と寄付金でまかなう。

ということで、支援会員で集める金額の目標は600万円ぐらいですって。そりゃ無制限に集めて2000万円ぐらいになればラッキーでしょうが、お客がそっちばっかりじゃ劇団の収入が・・・。劇団が売ったチケットは劇団の収入なわけですから。(アゴラで余ったら制作費補助に回るからいいのか?)

実際には、どんくらい集まるんでしょうかね? 私の個人的な予想としては、このご時世ですし、東京の観劇人口とかから予測すると、まあ、200〜300件ってとこだと思っています。行っても500件。1件平均2〜3万円ですから・・・あれ、けっこういい線行ってるのねえ。600万円なら行けそう。って、目標が低すぎませんか?

いや、600万円(300件)でいいと思います。法人会員の5万円はめちゃめちゃ安いし、学生のサークルや勝手に作った団体でもいいらしいので、けっこう法人会員が多くなるようにも思います。1件平均2〜3万円ですが、1件平均25〜30枚の引換券とすると、300件で約1万枚の引換券が出るってことになるわけですね。これはアゴラの年間キャパの4分の1です。残りの4分の3は劇団が売る余地となるわけです(しかし、1万人の基礎動員が確保されているってのは、すごいなあああ)。

さて、2月初旬現在、アゴラには100件近い個人・団体からの申し込みがあったそうです。目標に達したらセーブするかもしれないとか。どのあたりが上限となるかは、様子を見ながらだそうで、いずれにしても「無制限ではない」そうです。

さてさて、それにしてもこの「法人会員」ってのはポイントであるような気がします。5万円でチケット引換券50枚ですから、アゴラの公演を1000円で見ることができるわけです。あ、チケットの転売は禁止ですよ。きっちりチェックするって。で、この「法人」ですが、学生のサークルや劇団でもいいとか。あるいは勝手に作った団体でも可能ですって。事実、FSTAGEではひそかに複数の貧乏人団体が立ち上がりつつあります。法人会員は、アゴラ発行のすべての印刷物に名前が載るらしいので、変な名前があったら、それは貧乏人です。(あ、私も某貧乏人団体に参加・・・20人で15万ぐらい集まってる)

って言うか、大手の法人は5万円以外にも「寄付」に参加して欲しいもんです。メセナですよメセナ。日本じゃ寄付にも税金かかるんで、広告料5万円って判断になるかもしれませんが、メセナ関連の税制特例が拡大してますし、今後はなんとかなるんじゃないでしょうか。

というわけで、このアゴラの賭け、というより、平田オリザ氏の「挑戦的な政策提言」をどきどきしながら見守りたいと思うわけです。劇場を取り巻く環境は厳しいものです。劇団はもっと厳しい。かと言って、「困ったなあ」と心配していても何も始まりません。アゴラが投げかける「問題提起」を、やっぱ受け止めるしかないでしょ。どうでしょうか?

私、某貧乏人団体に、5千円だけ参加しましたよ。少ねぇ〜〜〜〜〜。

週刊FSTAGE編集部
神保正則
2003.2.3


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