(since 2003.1)
【No.002】
となりの芝生(1)
「となりの芝生は青い」なんてえコトワザがありますよね、たぶん。お隣りさんちは自分ちよりも良く見えるみたいで・・・。そんな感じの演劇周辺系をシリーズで紹介しようと思いました。第一弾は「でかまつり」。不定期連載で、その時々の話題を、のんのんジャンルで。もちろん、一部、「となり」じゃなくて、自分ちネタ(芝居関係)もあると思う・・・。
■オムニバス映画「刑事(でか)まつり」
下北沢のちっちゃな映画館・シネマ下北沢(ザ・スズナリの並び)で公開されているオムニバス映画が面白そうだ。(朝日新聞2002.1.21夕刊掲載)
黒沢清、青山真治ら、12人の人気映画監督が自腹で参加。何が「刑事まつり」かと言えば、このオムニバスのそれぞれの監督が撮る短編に、以下のようなルールが決められているためだ。
1.主人公は刑事
2.長さは10分以内
3.1分に1回ギャグを
など。デジタルビデオによる短編競作だ。
なんでも、「また気軽な自主映画を撮りたいね」という監督たちの雑談から生まれたらしい。プロのスタッフや俳優もノーギャラで参加。制作費は「ビデオテープ実費のみ」という人から、最高でも数万円(宴会費別)だとか。アクションありSFありの多彩な作品が集まっている。とにかく、そのゆるゆるなタイトルを見てください。
- 青山真治「NOと言える刑事」
- 市沢真吾「スローな刑事にしてくれ」
- 奥原浩志「さよなら地球刑事」
- 黒沢清 「霊刑事」
- 佐々木浩久「だじゃれ刑事」
- 篠崎誠 「忘れられぬ刑事たち」
- 高橋洋 「アメリカ刑事」
- 西山洋市「特殊刑事」
- 廣木隆一「刑事VS刑事」
- 堀江慶 「引き刑事」
- 万田邦敏「夫婦(めおと)刑事」
- 山口貴義「モーヲタ刑事」
入場料千円。刑事割引は200円引き。刑事割引を受けるためには、受付で警察手帳を示さないとならないのだろうか・・・。
面白い企画だよねえ。行くとこまで行ってしまった観のある日本の映画配給システムとか、ローコスト製作が可能となったデジタルビデオ撮影・ノンリニア編集、とかのおかげなんだろうね。企画としては、やはり短編オリジナル競作の「Jam Films」があるけど、どう考えても「刑事まつり」のほうが楽しめそう。
演劇でも、こういうのやらないかなあ、って思う。瞬発力の高い短編を書ける作家はいるんだから。きっと、映画よりもはるかにアナーキーな世界を描けると思うし。どうでしょうか。
なお、第二弾の計画も進行中とか。今度は、是枝裕和、塩田明彦、瀬々敬久などが参加予定。これまたすごいことになりそう。塩田監督には、どんどん長編にトライして欲しいとも思うが。にしても、やっぱり映画の世界で、何かが起きつつあるってことなのかしら。「硬直化した配給システムの打破」と「ローコスト製作手法の登場」は、若手の監督にきっと化学反応を起こすよね。うーん、楽しみ。
シネマ下北沢
編集部/神保正則
2003.1.21
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