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2007.6.12
文庫版「腑抜け」解説の中身は!

文庫版では本編の後に「解説」がつく。本谷有希子の脚本を自ら小説化した「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の文庫の解説は高橋源一郎氏によるもの。あまりにも面白いので紹介したい。

小説自体も、どろどろでみもふたもなくて、修羅場の連続で地獄絵図が続く傑作だが、そこに加えられた「解説」もまた、小説の価値を高める秀作ではないかと・・。

高橋源一郎氏は、あるとき本多劇場でポツドールの『激情』を見たのだとか。それがあまりにも面白かったので、興奮してロビーで知人に、この三浦大輔は素晴らしいが他には?と尋ねると、「いまいちばんおもしろい劇作家」として岡田利規、前田司郎、本谷有希子の三人の名があがったのだとか。それは、高橋が考える「いま、いちばんおもしろい小説家」の名前と完全に重なっていたのだった。愕然とし、「ほんとうに、どうなっているんだ? もしかしたら、小説の世界は、劇の世界からやって来た連中に乗っ取られようとしているのかもしれない」と思ったのだった。

高橋源一郎氏は80年代、多くの演劇を見ていたのだとか。そして、そこで活躍していた劇作家もまた小説を書いていた。がしかし、当時の劇作家が書いた小説を高橋は「小説」として受け入れることはできなかった。「劇を、そのまま、小説に持ちこむことはできないよ」と感じ、観劇から遠ざかったのだとか・・・。そして本谷有希子に出会ったのだった・・・。

以下、ぜひ文庫版「腑抜け」で確認して欲しい。「解説」だけでも立ち読みして欲しい。そこで考察されていることは、この10年ぐらい小劇場の舞台で起きていた現象と言えるもの。多くの優れた舞台が描いてきた「崩壊」を、高橋源一郎は本谷有希子の小説で発見したということだろうか。どうだろうか。

講談社文庫「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
週刊SP:2007.6.8■「腑抜け〜」文庫化


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