既に新聞各紙でも報道されているが、「撤退」というよりは「オンラインへの移行」という表現の方が正しいようだ。「興行チケット販売事業」に関し、コストがかかる窓口販売を廃止し、インターネットを使ったオンライン販売に特化するということ。そのための新会社をソニーその他の出資により設立するのだ。ソニーが主導する形で、ナンバーツーは「チケットセゾン」のエス・エス・コミュニケーションズではなく、クレディセゾンである。こういうのを「事業の再構築」というんだよな。エス・エス・コミュニケーションズは出版事業に経営資源を集中する。
チケット販売取次事業の現在の市場規模は約1000億円。最大手はぴあ。「電話予約・店頭引き取り」が一般的になっているが、発券拠点(窓口)のコストが大きく、脱店舗化が命題となっていた。ぴあも新会社を作り、オンライン販売を志向している。しかし、現段階でのインターネットでのチケット販売は、全体の数%にすぎず、利便性の高さが必ずしも魅力となっていない。セゾンの新会社も「ホームページ予約・クレジット決済・チケット郵送」のシステムで事業化するが、既に行われているそれの利用は少ない。
近年、ネットワーク事業へ傾倒するソニーと組むことは、当然、次のステップとして非接触型ICカードによる電子チケットの導入を視野に捉えていると予想できる。「チケット郵送」を行わず、デジタルデータを転送するだけで、イベントへの参加を可能とするもの(ICカードで入場)。(既報6月1日ニュース配信参照) 将来的には、必ずこうなるであろう。それが3年後か5年後か10年後か・・・。
オンライン販売で3年後300億円の売上を目指すセゾングループであるが、現状の延長線上では困難であろう。インターネットの利用率が10数%の現状が、40%程度に伸び、ネット予約および決済手段の多様化が望まれる(クレジット決済は敷居が高い)。3年後、そういったインフラがどう変容しているかがカギであるが、イメージ戦略や啓蒙活動に強いソニーとセゾンが組んだことで、「なにかやってくれるんではないか」との期待が高まる。期待したい。
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