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2004.1.10
小劇場投資ファンドの実態分析

1月3日のニュースで報じた「京都の小劇場、長期公演出資者に12%配当」であるが、劇場「アートコンプレックス1928」のホームページなどから、その内容がわかったので、できる範囲で解説を試みる。

簡単に言うと、「ファンド」とは一般投資家から「利益の見込めそうな」イベントやモノ、ヒトなどに出資してもらい、利益が出たら配当金を与えるというもの。利益が出なければ出資金が返ってこないこともある。大赤字なら、出した金が全く返ってこないこともあるが、大もうけした場合、出資金の何倍もの配当があることも。多くは会社などに出資して、事業の利益で配当を受けるわけだが、近年、海外などでは文化的なイベントやアーティストのファンド化も行われるようになっている。ロックスターがCDを制作する際、資金を一般から調達し、CD販売とコンサートなどでの収入から配当金を出す例も見られた。また、ブロードウェイでは舞台のファンド化も行われているようであり、大きな成功に結びつく事例もあるようである。

さて、わが国の舞台の場合、短期間の公演が一般的であり、「利益が出る」ということはほとんどないのが現状。これに対し、京都の小劇場「アートコンプレックス1928」が行ったのは、利益が可能であるロングラン公演である。といっても、たったの3週間であり、ブロードウェイとは比べものにならない。

さて、実態を見てみよう。出資は、一口2万円で100口を集めたそうだ。完売したとか。合計は・・・200万円。ところで、今回の公演の規模は、3週間21ステージであり、劇場のキャパは200〜250席で、料金は3500円ということだから、ほぼ1500万円の売り上げ規模と目される。12%の配当だから、一口2万円出資した人は2400円の配当を受けたということ。200万円に対しては24万円が配当に回ったわけだ。配当は、チケット収入から公演費用を引いた利益が当てられるということで、実際には、1500万円の売り上げに対し、公演費用は1000万円程度であったのだろう。

今回のシステムは、証券会社であるエンゼル証券が仲介とシステム提供を行っている。出資者はインターネットを使って集められた。劇場の方が言っている通り、マスコミ各社に記事として採り上げられたことが完売につながったと言えよう。インターネットで発表しただけではなかなか集まるものではない。

なお、出資者は配当を受けるだけではなく、いろいろな特典も用意されている。公演の招待券がもらえるのは当然だが、出演者との交流などもあったようだ。

今回の試みは、規模が小さいものの、大きな可能性を秘めている。もちろん、実際に公演した劇団の実力が最も重要であるのは間違いない。公演そのものに魅力がなければ成功に結びつくものではない。人気を集める、すなわち観客動員が重要であり、3週間などではなく、3ヶ月あるいは数ヶ月を実現できるなら、大きな利益を生むことも可能となる。そのような試みが、いつの日か行われることを期待したい。

アートコンプレックス1928
ロングランシステム

01.03■京都の小劇場、長期公演出資者に12%配当


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