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結城座公演・観劇レポート
2003年7月江戸糸あやつり人形芝居結城座
古典公演@三軒茶屋シアタートラム
「伽羅先代萩の世界」
(めいぼくせんだいはぎのせかい)

結城座古典公演「伽羅先代萩の世界」を見た。以下、観劇報告。

「ワークショップ」を見に来た。と言っても過言ではない私だが、予感があったので、とりあえず、客席の前の方へ移動(全自由席)。さらに上手へと・・・。ふと前を見ると、舞台上手の一部がちょっと加工されている・・・予感的中か!

客席にはちょうちんが並び、舞台全体もかなり和風になっていて、雰囲気的には見世物小屋に来たって感じ。シアタートラムなのに・・・。いい感じだ。

5分押しで開演。「伽羅先代萩」上演に先立ち、「ワークショップ」だ。MC役の女性が登場。ギリギリで必死で覚えた口上を述べる(必死で覚えた感じが伝わっているという・・・)。

で、促されて人形操作解説役の役者さん登場。人形操作の人なのだが、しゃべりがうまい。後で気づくのだけど、結城座の役者さんは自分でセリフをしゃべっているため、MCが達者なんだよね。そこんとこが、普通の人形劇の劇団員さんとは大きな違いと言える。楽しい解説が続く。

さて、約25分程度の解説と質疑応答であったが、予想外に盛り上がった。盛り上がりまくった。次々と質問が出る。こっちが「仕込んだんじゃないか?」と思うぐらい、次々と質問が。劇団員の一人がマイクを片手に右往左往。質問のたどたどしさから仕込みじゃないことはわかったけど。

人形の素材、保存法、糸の役割、動作、などなど。「○○な動きはできるのか?」という質問には笑ってしまった。それは操作手の技術の問題だで!

にしても、質問に役者さんが答えるたび、客席のおばさんたちが、「はぁ〜」と感嘆するのがおかしかった。途中から「へえ〜」って聞こえちゃって、ここは「トリビアの泉」かい、とか思ってしまった。聞いて、明日、役に立つのだろうかどうだろうか。

25分、めいっぱい質疑応答が続いた。たぶん、時間があればまだまだ質問が出たように思う。「若い人に糸あやつり人形を知ってもらいたい」という目的が果たされたかどうかはわからないが、「若い」はともかく、みんながかなり「関心を持っている」ことだけは確かだと証明された。ワークショップだけの公演も可能じゃないか、と思わせるものがあった。まあ、今回については、トラムという場があり、「伽羅先代萩」という作品があってのものであることは明らか。「ワークショップ公演」については「可能性が見えた」とだけ書いておきます。

■「伽羅先代萩」

古典芸能については数えるほどしか見たことがない私ですが、思ったよりもエンタテインメントしていて楽しめました。人形劇については、ひとみ座を何回か見てますが、結城座の「伽羅先代萩」を「古典」とはそんなに感じませんでした。直前の解説や、最初の「花水橋の場」でうまく概要が説明され、ストーリーが理解されていたためかもしれません。「ありがちな話」と言えばそうですし、「べた」であることは確かですが、「古い」という感覚はまったくありませんでした。

さて、問題は素京さんの素浄瑠璃「飯炊の場」です。人形が出ず、素京さんが舞台中央に鎮座し、延々語ります。すごかった。

すごかったというか、一人でウケてしまいました。ビジュアルが面白いし、テンションの異様な高さが素晴らしい。なんか、絵としてはそんなに動きはないんですけど可愛いし、でも、インパクトあるし・・・なんかに似ているなあって思って浮かんだのは福助でした。

始まって一分間、私は必死で笑いをこらえていましたよ。すごいなあああ。

で、「飯炊の場」が終わり、次の「御殿の場」になり、素京さんはハケましたが、予想通り、上手の特別席に登場し、義太夫を続けました。私の席からは3mぐらい。特別関心のある方は、上手の最前列に座りましょう。

エンディングですが、悪役・ニッキダンジョウ(すごい名前!)が正義の味方の攻撃を退け、まんまと逃げおうせます。悪役がやっつけられずに逃げおうせる、というストーリーだけでもすごいのに、最後、舞台に一人になったニッキダンジョウが、なんかしゃべるのかと思ったら、全くコトバを発しず、ただ、悠々と退場する・・・すごい演出ですねえ。現代劇では絶対にありえない演出です。画期的です。素晴らしいです。見習いたいものです。で、これを歌舞伎だとどんな風になるのだろうかと、とっても思いました。この江戸糸あやつりの「伽羅先代萩」は、たぶん歌舞伎の「伽羅先代萩」を前もって見ているとずっと楽しめるんじゃないかと思いましたが、ある意味では、歌舞伎の「伽羅先代萩」を見たくなる作品だとも思いました。あそことかあれとかは、人間がやる歌舞伎ではどう処理しているんだろか、どうだろうか、と気になります。

あと、たぶん、見終わってからのほうが、さらにさらに質問したいことが増えただろうなあ、と帰りの客席を見ながら思いました。おばさんたち、欲求不満にならなければいいけど・・・。んでもまあ、からくりに関しては、やっぱナイショであって欲しいとも思いますけどね。しかしアレはどうなっているのかなあああああああああ?

公演は2003年7月13日まで

稽古場取材

江戸糸あやつり人形芝居結城座
古典公演
「伽羅先代萩の世界」
@三軒茶屋シアタートラム

2003年7月9日(水)〜13日(日)全5回公演
問い:結城座ホームページ

取材・文/神保正則


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