7月9日からの公演を前に、多忙を極める劇団稽古場を6月末に訪ねた。本番に合わせた進行で、すでに1場の終わりのところが稽古中であった。と、稽古場の入り口からヨロヨロと、かなりお年をめされたおばあさんが登場した。足元がかなり不安で、手をひかれながら歩いてきて、ふかふかの分厚い座布団の上に座られた・・・?
と、おもむろに三味線のでっかいやつ(ふとざお)を手にすると、それまでの息もたえだえ(失敬!)の存在は消えうせ、驚異的なボリュームと多彩な声色での浄瑠璃語りが始まった。私はもう、ただただびっくりしていた。舞台上の人形劇を見ずに、そこで始まっている「なんだかわからないもの」を凝視していた。三味線のバチをチョッパーベースのようにぶったたき、ほとんど憑依してんじゃないのか、というぐらいの多重人格キャラを次々とがなりまくっている・・・。どういうメカニズムなんだろう・・・なんて考え込んでいた私だった。
その人の年齢を聞いて二度びっくり。89歳だという。そしていろいろなことを知った。名前を竹本素京さんだという。これがウワサに聞く「義太夫」というものだと。2mの至近距離でそれを聞けることなどめったにないことだと。
・・・もしかして、すごくラッキー!
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