さて、毎回のインタビュー同様、このあたりから脱線が始まる。お話を聞くよりも、意見を言いたがる私の悪いクセだ。しゃべりすぎだっちゅーの。
気がつくと私は言っているわけだ。「劇団の代表作って何になるんですか?」とか。過去に見た作品と比べ、この「愚者〜」があまりにも面白かったので、心配になったわけだ。自分の中での扉座の位置付けと、「愚者〜」の作品の位置付けを確認したいのだ。すると、「新羅生門」「夜曲」「ジプシー」などがあるんだそうだ。私は「新羅生門」と「ジプシー」は見ている。だとすると、やっぱ「愚者〜」は扉座の代表作と言っても過言ではないだろう。大丈夫だよ。他の作品で楽しめなかったアナタも、この「愚者〜」は楽しめるってば。
(なんか失礼なことを言ってないか>オレ)
稽古4
「愚者〜」はね、童話「裸の王様」のその後から始まる。ハダカであることを暴露されて大恥をかいたあの王様のその後だ。大恥って言うか、パニくって、街から消えてしまったんだよね。王としては「終わり」だもんね。で、身をやつしていて、サンチョパンサと出会うんだ。ドン・キホーテになるという・・・。見てると、いろんなことを考えさせるよ。学校とかも出てくるし。
10年前に書かれたものを再演するのって、結構難しい。この10年って、日本は変わってしまったもんね。2年ぐらい前まで続いた10年と、今とが大きく違う。そこいらへんはどう処理したのか尋ねた。やっぱりいじったんだって。「笑い」の部分を削って、よりハードになったんだって。「笑い」とかやってる場合じゃないんだって。「お金もらえるんなら『笑い』もマジメにやるけど、そうじゃないのにそんなノーテンキな芝居やってる場合じゃない」んだとか。うん。ほんとそうだよね。でも、見ていて、今はもっともっとクールだよなあ、って思ったのも事実。金八みたいなのってもうリアリティないもん。はるかに「無関心」だもんね。とか思った。
初日までに、もっとハードに変わるかもしれない。っていうか、役者がそれを表現できるのか・・・。
稽古5
今の演劇状況について尋ねた。まずは気になる劇団とか、役者とか。町田カナさんが気になっているそうだ。リセットNは見たことないけど、町田カナの一人芝居を見たんだって。たぶん、それって「愛のコレブシ」とか言うやつだよね。私も見た。頑張って欲しいんだと。あと発砲B・zinときだつよしが気になるんだと。そりゃあ、ワタシ的にはノーコメントだ!
で、それはそれとして、今の小劇場の状況はどう考えておられるのかを尋ねた。アイドルとかを使ったプロデュース公演がいっぱい動員し、若手の小さな劇団は1000人にも満たない動員で伸び悩んでいるという状況。
スタッフ打ち合わせ
横内さんに言わせると、「ビジネスにしようという意思の問題」だそうだ。「芸術を追求する芝居だと、スポンサーとかがついてそこそこやっていけてる状況があるけど、そうじゃない芝居が食えていないという状況はやばい。才能ある人が食えないというのはダメだ。」だそうだ。横内さんは、「芝居で食う」ということを重視しているんだ。それはほんと重要なことで、そういう意思を持った人が多くないのは確かに問題だよね。いや、「芝居で食べていきたい」「芝居で食べていけりゃいいなあ」と思っている人は少なくない。けど、そのために意思を持って動いている人はほんと少ない。そのギャップは恥ずかしいよねえ。かといって、どうすりゃいいのかわからないんだろうけどね。横内さんのやってることとかを見て参考にすればいいだけなのにね。
ダメ出し
私は尋ねた。「横内さんの芝居って、説教臭いって言われますけど、どう思います?」・・・失礼な質問だ。
横内さんは、顔色を変えずに答えた。「一時、説教臭くならないようにと注意したんですけど・・・やめました。説教臭くてもいいんじゃないかと思って。だから、気にしてません。ハードに行くことにしてます。」・・・いいんじゃないんですか。横内さんのカラーと言ってもいいかもしれないんで、どんどんハードな説教をかまして欲しいもんです。だけど、「愚者〜」は見ていて、説教臭いとか思わなかったし、単に受け手の感性の違いだけかもしれないしね。
◆
「インターネット」のことを聞いた。やってますか?と。前に一度、「えんげきのぺーじ」の掲示板に横内謙介の名で書きこみがあったけど、あれは本人なのか尋ねた。本人だそうだ。あまり意識せずに、あっちこっちを見ているらしく、なにげなく書きこみとかしているらしい。で、横内さんの方から「えんげきのぺーじ」の「ホモ問題」が語られた。以前、「えんげきのぺーじ」で扉座の芝居を「ホモ差別」として糾弾する発言があったのだ。横内さんはその発言は結局読まなかったらしい。「私は、作品に対して何を言われてもかまわないと思っています。それを読みたいともあまり思わないし、反論したいとも思わない。ただ、言いたいことがあれば、直接言ってくれてもかまわないんですけどね。だって、芝居はテレビや映画と違って、その劇場でやっているんだから。そこに私がいるんだから。いる場所がわかっているんだから、そこに来て言ってくれていいんです。言ってくれれば、私も答えますよ。」・・・面白いじゃないか。確かに、居るよなあ。まあ、直接言うのは大変だけどね。でも、本当に文句があるんなら、やっぱ直接言うべきだと思うのは確かだ。目からウロコが落ちたよ。ぜひ、言ってくださいませ。
ダメ出し
ところで、横内さんに突然質問された。「あのー、『えんげきのぺーじ』に『横内会長』っていう人がいるみたいなんですけど、あの『横内』ってのは私のことですか。」と。そうです。横内謙介のヨコウチです。ファンみたいです。「その人は女性ですか?」・・・そうです、女性です。・・・気にしているみたいだ。目が泳いでいるぞ。でも、けっこう嬉しそうだぞ。カイチョーに伝えておこう。カイチョー、狂喜乱舞するぞ、きっと。
そこで、カイチョーに頼まれていた質問をした。「横内さん、美容院はどこですか。」・・・横内さんはけっこう嬉しそうに答えた。「えっと、最近変えたんです。青山の××××(フランス語みたいで覚えられなかったよ)」・・・やっぱ美容院に行ってるんだよな・・・。
ダメ出し
最後に、再び作品のことをお話しした。この時代のことを踏まえて、この作品がどう位置付けられるのか。いまのガキのこととか、ドン・キホーテ的なバカもんのこととか。通し稽古を見ていて、「やっぱエンゲキはアントニオ猪木一人に勝てないんだよなあ」って私は思ったんですもの。横内さんは言った。「この時代って、やっぱダメだと思う。どこで間違えたのか。私はやっぱり、明治維新のときに、坂本竜馬とか西郷隆盛とかが死んでしまったことが失敗だったと思うよ。それで明治は木戸孝允とか大久保利通とか・・・。竜馬とかが生きていたら変わってたんじゃないかなあ。」・・・面白いじゃないか。誰か、竜馬が生きていたという前提の芝居を書いてください。
気がつくと、1時間ぐらいインタビューしていた。15分の予定だったのに。10時をとっくに過ぎていたという・・・。作品に何かあると、見た後いろいろ話したくなるんだよね。ネットで書きこみしている人なら理解してくれると思うけどさ。それにしても、やっぱり作り手の人の話は面白いよなあ。どんどん話してくれるといいのに。そういえば、横内さんは先日、俵万智と「シアタートーク」というトークショーをやったみたいだ。そういうのどんどんやって欲しい。確か1990年の「新羅生門」のパンフに「現実と虚構がどうの、という芝居はもうヤメだ。もっとリアルなことを書いていく。オレは戦うぞ。」みたいなことを書いていたっけ。かっこいいぞって思ったもの。その「戦う姿勢」はすばらしいと思う。外見がヒヨワで、ナルシィな横内さんだが、ビジネス志向とか、ハード主義とか、意外と戦う姿勢なんだよな。20周年を迎え、さらに新たな企画に挑戦していくというし、楽しみだよなあ。商業演劇向けのホンもきっちりこなしながら、扉座というリングの上で、沈滞する社会と演劇界に、がんがん刺激を与えていって欲しいと思います。ほんと、期待してます。
ところで横内さん、やっぱ田中康夫はドン・キホーテなんでしょうかね?
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劇団扉座第22回公演
愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸
2000年11月2日(木)〜9日(木)
@新宿南口・紀伊國屋サザンシアター
作・演出 横内謙介
出演
岡森諦・有馬自由
石坂史朗・田中信也
犬飼淳治・伴美奈子
鈴木真弓・三木さつき
河合まどか・村内貞介
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公演日程
厚木公演レポート
劇団扉座ホームページ
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