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一跡二跳特集 (1)

1999.11.20
松浦光悦インタビュー

by 一寸小丸

1986年に旗揚げされた一跡二跳(いっせきにちょう)という劇団は、作・演出を担当する古城十忍(こじょう・としのぶ)を中心に、年3回ほどの公演を行っている。最近は、3本のうち、2本が新作、1本が再演というペースだ。劇場も、新宿のトップスや紀伊国屋、サンモール、池袋の東京芸術劇場など、多彩だ。また、地方公演も行っており、おやこ劇場での招待上演も行っている。

この劇団を代表する役者が松浦光悦(まつうら・みつよし)さんだ。小丸に言わせれば、圧倒的にうまい役者だ。猫のホテルの中村まこと氏やtsumazuki no ishiの寺十吾氏などに匹敵する。

この松浦さんは、昨年から今年にかけて大病を患った。流行りの結核だ。ほんと寂しかった。が、前回公演「ガッコー設立委員会」で復帰。きっと、今回は完全復帰の舞台を見せてくれることだろうと、期待が高まる。で、この際、応援も兼ねてお話しを伺っておこうと、1999年11月20日(土)の実寸稽古の場へと出かけていった。三軒茶屋の某ビル地下4階にあるそのスペースには、本番の舞台と同じセットが組まれ、19時から通し稽古が始まった。本番さながらの舞台。そこで、まさに絶好調の松浦さんを見ることができた。以下のインタビューは、その通し稽古が終わった直後の、その稽古場でのものである。(1999.11.20. 21:15〜21:45)

(インタビューは週刊FSTAGE編集部員の一寸小丸により行われた)


松浦さん 稽古中

小丸:
前回の「ガッコー設立委員会」への出演が久しぶりでしたよね。
松浦:
ええ。ちょっと・・・
小丸:
病気してたんですよね。
松浦:
はい。役者の不養生でして
小丸:
その前にも一度、出なかったことありましたよね。聞きましたよ、「松浦さんもバイトしないとならないので」とか。
松浦:
ひぃー。あああ、そういうころもありましたねえ。そーとー昔じゃないですか。あれでしょ。「眠れる森の死体」でしょ。
小丸:
そうですそうです。95年の青山円形ですね。
松浦:
けっこう古くから見てるんですか。
小丸:
ええまあ。最初はえっと、90年の「テラよりの私信」ですね。そんで、「テキーラ・サンライズ」とか。
松浦:
古いですねえ。
小丸:
駅前劇場とかでしたねえ。
松浦:
ああああ、やりましたねえ。
小丸:
ずいぶんメンバーも変わりましたねえ。
松浦:
ええまあ。みんないろいろですから。
小丸:
昔っからいるのは松浦さんと奥村さんぐらいですか。
松浦:
もっとマスメスメディアに行きたいとか、ねえ。
小丸:
松浦さんもテレビ出てましたよねえ。子供番組かなんか。古城さんがホンかなんかやってて。
松浦:
ちょっとね。いまはもう、もっぱら声の仕事・・・
小丸:
えっ、なんですなんです?
松浦:
CMのね、声なんですよ。今も流れてますけど・・・言っていいんですかね。
小丸:
いいですよ。いいんですよ。
松浦:
カネボウのフレイヤ・・・鶴田真由が出てる石鹸かなんか、あと、エバラ食品の松井直美が出てて、あとパナソニックのDVDプレーヤ・・・声は全国区なんですよねえ。
小丸:
いいですねえ。
松浦:
でも、顔がねえ。
小丸:
顔がねえ。でも、病気してたりしたんですからしょうがないじゃないですか。こないだの「ガッコー設立委員会」の時も、当初、チラシに松浦さんの名前がなかったじゃないですか。
松浦:
ええまあ。あれも急遽だったんですよ。
小丸:
みたいですね。私も、制作の岸本さんがインターネットのえんげきのぺーじに「松浦さんが出る」ってギリギリで書き込んでたのを見て、びっくりして、「ほんじゃ観るべえか」と思ったんですよぉ。
松浦:
あああ、そうですかあ。
小丸:
そんで、ちょっとしか出ないのかと思ってたら、もう、思いっきり出てましたねえ。
松浦:
最初はリハビリ公演のつもりだったんですけど、稽古の段階で、ここも、ここもってどんどん増えていって。まあまあ、出るような形になったんです。
小丸:
私も、ちょっと大丈夫かなあ、って思ってたんですけど・・・まあ、言っちゃえば、「本調子」じゃあなかったですよね。こんなこと言うと、むっとされるかもしれませんが。
松浦:
むっとはしませんけど、でも、自分でも精神的な面で「大丈夫かな大丈夫かな」という思いはありましたからねえ。
小丸:
今日のとか観てますと、やっぱパワーが違うと思いましたよ。前回の見てるとき、ここでぶち切れるかな、とか思うんですけど。やっぱねえ。いやらしさはもう、がんがん出てましたけどね。ほんといやらしいやつでした。
松浦:
あははは、褒められてるんでしょうか?
小丸:
もちろん褒めてますよ。もっともっといやらしくなってくださいよう。
松浦:
ええ、まあ。
小丸:
なんていうか、古城さんの書く作品にはディスコミュニケーションなやつってのが必ず登場しますよね。むかつくやつです。今回ですと、奥村さんがそんな感じですけどね。で、こういう役ってのは、てってー的にやってもらわないとダメなんですよ。
松浦:
そうねえ。まあ、持ちまわり的に、今回は。
小丸:
前回の松浦さんはほんとサイテーのやつでしたよ。私は見ていて、むっかむっかしてましたよ。このやろー、みたいな。うまかったでしたよう。で、早いとこ本調子になってほしいと願いました。
松浦:
今回のはどうですか。私、むかつくような感じに見えますか?
小丸:
今回のはねえ、どっちかゆうと奥村さんの方がはらたちますよね。
松浦:
あああ、人間像がねえ。
小丸:
今回の松浦さんは、このやろー、しょーがねえなあ、って感じです。笑えてますもの。
松浦:
ああ、まあ、今回はカレが本線で、こっちはちょっとおかしいかな、って。

松浦さん

小丸:
思うんですけど、松浦さんはよけいなことやりますよねえ。
松浦:
よけいな小芝居
小丸:
そうそう。あれって結構重要だと思うんで、他の役者もやればいいのにって思うんですけどねえ。
松浦:
そうそう。それ、言ってるんですけどね、なかなかやってくれないんですよ。
小丸:
そうかあ。
松浦:
だから、一人で浮いてるんで・・
小丸:
よけいな芝居って発想が重要で、すごいと思いますけど、まあ、難しいんでしょうか。
松浦:
ねえ。そうなんですよねえ。

小丸:
松浦さんは一跡二跳は旗揚げからですよね。
松浦:
ええ。その前はひまわり、みたいな。
小丸:
(小声で)古城さんって、どんなひとですか。
松浦:
古城さんですか・・・学校の先生みたいですね。なんかで自分も書いてたと思いますけど、あの、体育会系の先生って感じですね。

小丸:
芝居は観ますか?
松浦:
最近は観ませんねえ。昔はちょっとは・・・。ショーマとか観ました。行こうかと思ったぐらいで。
小丸:
えっ、ショーマですか。全然合わないじゃないですか。
松浦:
合いませんか、んじゃあ、どこだと思いますか。
小丸:
そうですねえ、サンシャインボーイズとか。
松浦:
ああ。それ、いいですねえ。
小丸:
役者がツブ揃いでしたからね。
松浦:
そうですねえ。
小丸:
三谷さんが、役者に書かされている、とか言ってたぐらいで。
松浦:
役者にホンを書かされるってことですか。
小丸:
一跡二跳は、やっぱ古城さんのホンがきっちり合ってスタートですか。
松浦:
まあそうですけど、でも、どっか当ててるって気はしますけどね。
小丸:
ええ。松浦さんと奥村さんという駒がありますからね。これをどう配置するか、ってのはあるでしょう。
松浦:
そこだけですね。僕が今回、奥村さんの役をやったかもしれないわけです。全然違ったもになる可能性はあるわけです。
小丸:
なるほどー。でも、私に言わせると、ダントツで松浦さんがいいんで、そこがこの劇団のまあ、問題点とも言えるわけで。
松浦:
ほんとはね、僕がバイプレイヤーみたいなとこに居れれば、いいんでしょうけどねえ。
小丸:
そうですね。横からね、芝居をひっかきまわすとか、いろんなことをがんがんやれるとかってね、状況になればねえ。
松浦:
なかなかねえ。
小丸:
若い子がみんな残っていって、育っていけばねえ。
松浦:
いまいるメンツはけっこう固定してきてるんですよ。
小丸:
まあ、伸びてるとは思いますけど・・・女優がなあ。
松浦:
・・・・
小丸:
私、とんでもないこと言ってますね。
松浦:
いえいえ、そういう指摘もね、あっていいわけです。
小丸:
さっき通し観ながら、ノートに「若い役者に頑張って欲しい」とかこれ、書いてますもんね。

小丸:
病気の前と後でなんか考え方って変わりましたか
松浦:
やっぱ「健康一番」ですね。役者は体力が一番大事ですよ。
小丸:
えっ、じゃあ、不摂生はしていませんよね。
松浦:
なるべくしてません。
小丸:
なるべくって・・・お酒とかは?
松浦:
もう、平気です。

小丸:
映画で好きなのって
松浦:
娯楽でしたら、ジャッキーチェンは好きですねえ。ターミネーターとかブルースウィルスものとか
小丸:
エンタテインメント系ですね。その延長にショーマとかがあったんですね。
松浦:
だから、難しいのダメなんですよ。笑いの中に、その、悲しみとか、ねえ。
小丸:
古城さんのホンってのも、社会派とか言われますけど、私はかなりエンタメ系だと思いますよ。
松浦:
まあ、どんどんそうなってきたって言えるわけで
小丸:
絶対、この作家さんは「笑かしたい」と思って作っていると感じますもの。
松浦:
そりゃあありますね。
小丸:
テーマというか、シチュエーションとしては社会的なネタを扱ってますけど、でも、いわゆる社会派とは違うと思いますよ。
松浦:
人と人とのコミュニケーションには、笑いとか怒りとか喜びとか悲しみとかあるわけで、で、いまの世の中は希薄になってますよね。それを芝居の場で表現しているわけです。
小丸:
私に言わせると、「歌って踊る」のがエンタメじゃないんだと。これもエンタメなんだと言う人がいて欲しいわけです。芝居っていうと、コントみたいのが笑いになるんですけど、それもねえ。一跡二跳で十分笑えるし、面白いし、エンタメだと思うんですよ。
松浦:
いわゆる笑かす芝居だよ、っていうのもね、どうかと思うんです。人ってのは多種多様で、笑うものだって違うわけで、人が汗かいて、バカなことに必死こいてるのって面白いと思うんですけどねえ。どっかんどっかんじゃなくていいんです。
小丸:
前回のやつとか、松浦さんのいやらしさがほんと私は笑ってしまいましたよ。面白かったなあ。
松浦:
んじゃあ、今回のはどうですか。
小丸:
今回のですかあ。若い役者のシーンがありますよねえ。あれが本番までにどこまで伸びるか、って感じですかねえ。
松浦:
あああ、そこにつきますかあ。
小丸:
やっぱねえ、松浦さんと奥村さんが出ているシーンってのは楽しめるんですけど、二人がいなくなるとねえ、普通に芝居やられても・・・
松浦:
デフォルメしたり、
小丸:
右往左往したり、ねえ。
松浦:
ありますよねえ。
小丸:
悩んでいるのもねえ、単に苦悩を見せられてもなあ。悩んでいるのが情けないとか、バカだとか、そういう広がりが欲しいなあ。
松浦:
んーん。もうちょいだな。

小丸:
この作品は既に地方とか回っているとか
松浦:
もう10回ぐらい本番をやってるんですけどね。
小丸:
だから完成度は高いんですね。で、地方の体育館でもやったとか。
松浦:
大変ですよ。芝居なんてめったに観ないようなとこでもやるんですから。
小丸:
これをですよねえ。すごいなあ。
松浦:
寒いときもありました。まじめーに観られたりして。で、そういうのに負けてなるものかと、ろくでもない小ネタをえんえんやり続けました。毎回あるんです。こんなのです。「たまたまー、たまたまー」。誰も笑わないんですけどね。それでもやり続けました。
小丸:
それはちょっと、しょーもなさすぎますよ。

小丸:
松浦さんは若い役者とかにダメ出しっつうか、芝居のことを言ったりはしないんですか。
松浦:
言いますよ。でもまあ、いっぱい船頭さんがいてもねえ。
小丸:
まあ、演出的なことはあれでしょうけど、やっぱ言ったほうがいいと思いますよ。
松浦:
言いますよ。いろいろいってもあれですけど、でも、わかるとこだけ吸収してくれればいいわけで。
小丸:
役者もね、欲がないとね。
松浦:
欲がないとダメですよ。これでいいと思った時点で終わりです。
小丸:
ねえ。もう、毎回変えて、どんどん次に向かっていかないと。役者はもう、同じことをやっちゃダメですね。
松浦:
ボクは昨日やったことは今日はやらない主義です。
小丸:
いいですねえ。
松浦:
だって、会話ってそうじゃないですか。
小丸:
ええ。毎回ね。あるいは、こっち側が変わったら、当然相手もね。
松浦:
日常会話ってそうですよ。その場で生まれるものなんだから。明日話したら違うんですから。
小丸:
それをね、若手にもぜひやっていただきたいですね。
松浦:
っていうか、それが役者の作業ですものね。
小丸:
ええ。ぜひね、そうなって、伸びていけば、ね。動員もね。
松浦:
動員もなあ。まあ、群がるような芝居じゃないとは思うんですけどね。
小丸:
でも、サンモールとか300ぐらいキャパでしょう。二週間ぐらいはやれる動員が欲しいよなあ。みんな、アプルとかでつまんない芝居観てないでさあ。
松浦:
ああああ。それって?
小丸:
(ピー)はアンコールがなかったんですよ。

小丸:
動員を伸ばすためにも、社会派の看板ははずしてですね、
松浦:
まぼろしの劇団と言われ続け、まぼろしのまま・・・
小丸:
やっぱ社会派ってのが良くないと思うんですよ。
松浦:
それだけで来ない人とかもいるんでしょうねえ。
小丸:
いますよ。とっぱらっちゃいましょう。
松浦:
自分たちでね、言っちゃったとこありますからねえ。
小丸:
言ったんですか。
松浦:
でも、どんどん変わってきてます。
小丸:
そうですね、普通ですよ。社会的なシチュエーションを土台に、人間のコミュニケーション、人間の右往左往を描いているんですから、十分エンタテインメントな芝居だと思います。これからも、どんどん楽しいことに挑戦していってください。あと、若手を伸ばしてください。
松浦:
はい。

このあと、場所を近所の喫茶店に移動して、古城さんへのインタビューが行われた。

■古城十忍インタビュー
■第40回公演「醜形恐怖。」
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