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王子小劇場・舞台美術ワークショップレポート

20分で芝居を作れ!
〜杉山至の空間構築講座〜

文責:編集部 じんぼまさのり


疲れていたんです。徹夜明けで、昼に芝居を見て、その後女の子を1時間半誘ったんだけど逃げられて、で、このワークショップの後もバイトがあるという・・・。だから、部屋の隅っこでおとなしく、杉山さんの講義を聞いていようと思ってました。居眠りしないことだけに注意して。だのにだのに・・・。20分で芝居を作れだなんて。ワークショップに集まった20数人を4組に分け、20分で作った芝居を最後に発表してもらうという・・・。

2003年11月4日(火)。東京は北の最果て(ってほどでもないが北区)、京浜東北線の王子にある王子小劇場を訪ねた。小劇場界ではかなり有名な舞台美術家・杉山至さんの「舞台美術ワークショップ」が王子小劇場の主催で、この日行われたのだ。杉山さんの直接指導が受けられるというのは興味深いが、いったい「舞台美術ワークショップ」というのはどのようなことをするのか・・・? 行って見てみるしかないだろう。

王子小劇場では、今年の2月にも関連企画を行っている。『王子小劇場企画 スライドレクチャー「イタリアの舞台美術事情」 パネラー■杉山 至』というものだ。これは2002年に文化庁在外研修員としてイタリア・ナポリ舞台美術工房へ留学していた杉山さんの帰朝報告とも言うべきもの。2月3日に定員50名での無料イベントが行われていた。そして今回は、10月28日に「空間のワークショップ」と題して、杉山さんと岩城保さんの「舞台美術と照明デザインをめぐって」という講座が開かれ、続いての11月4日が杉山さんによる「舞台美術ワークショップ」〜劇場空間から発想する舞台美術と物語〜である。岩城さんは青年団の照明を担当していらっしゃる方。杉山さんもまた、青年団その他で活躍なさっている。

■杉山至・プロフィール
(すぎやま いたる)Sugiyama Itaru
1986年ICU(国際基督教大学)在学中より劇団青年団に所属。以後そのほとんどの 公演の舞台美術を手がける。
舞台美術家集団Co-Arts突貫屋主宰
舞台美術家協会会員 二級建築士
桜美林大学非常勤講師
2001年度文化庁在外研修員としてイタリア・ナポリの舞台美術工房にて1年間研修を受ける。

■代表作品
双数姉妹「神無きフタリの霊(ゴスペル歌)」
青年団「上野動物園再日々々襲撃」
ビーンズ「すぎのとを」

杉山氏のイタリア留学の日記(「青年団」サイト内)

突貫屋

●18:00 はじめに

「舞台美術ワークショップ」というものに、どんなやつらが集まるのか・・・。中高生は無料とあったが、女子高の高校演劇の生徒が制服でいたら、オレは動揺するよな・・・。

そんな心配は無用だった。得体の知れないうさんくさいやつらが20人ほど、集まっていた。どう考えても、シロートではない・・・。と、杉山さんが緑の養生テープを取り出し、「これに名前を書いて服に貼ってください」と。で、「んでは、はじから順番に自己紹介をお願いします。」と。で、みんなの挨拶を聞いてわかったのだが、今回集まったのは、やはり劇団関係者がほとんどだった。過去に王子小劇場を使った方、今後王子小劇場を使う予定の方。トリのマーク、スロウライダー、エレカ、などなど。杉山さんによると、10月28日の岩城さんとやった回にはいろんな人がいたそうだが、この日はたまたま劇団関係の役者、演出家、主宰者などばかりになってしまったのだった。3分の2が役者、残りはスタッフ。女性が半分弱です。

舞台美術WS ということで、この日のレクチャーは「実践編」という特別講座になるらしい・・・。「最後に芝居を作って発表してもらいます」とか・・・何を言っているんだろう、この人は・・・>杉山さん。

ということで、まずは杉山さんが考える「空間」というものについての説明があった。杉山さんは1995年から青年団でワークショップをやっていたとか。つまり、青年団の役者を相手に舞台美術をレクチャーしてきたのだ。それは、役者がタタキ(装置の制作)を行うがゆえであり、「役者の演技は舞台美術と関わる」からだとか。「例えば舞台上にカベがあるわけですが、そのカベの材質が何であるかで、役者の演技は変わるわけです。床や壁の素材が堅いのかやわらかいのかで、演技を変える必要があるわけ。その意味を知らなければならない。」のだとか。

杉山さんの考える「舞台美術」とは「空間装置」のことだ。このことは重要。「舞台美術」と「美術」とは全く違う。学校で美術を学んだ人が舞台美術をやると、大きな勘違いの装置を作りがちだ。美術で飾るのではない。ホンや役者を前提に空間を構築するのが「装置」なのだから。

で、杉山さんは言った。「では空間とは何だろうか?」と。それを理解することが今回のワークショップの目的のようだ。ということで出された課題が、この王子小劇場の施設内を歩いて、「気になる空間」をスケッチしてこい、というもの。「気になる」には「好き・面白い」と「嫌い・怖い」などがあるが、今回は前者の好きな空間・場所を渡された紙にスケッチしてくるのだとか。

●18:30 作業開始!

舞台美術WS 20数名は、画用紙と鉛筆を持って、施設内へと散らばった。ご存知の方もいるかもしれませんが、王子小劇場は地下1階にあるのですが、実は広大なバックヤードを抱えているのですね。裏の奥のほうに、よくわからない空間が広がっている。また、劇場(舞台&客席)部分を取り囲むギャラリー(バルコニー)があり、そこも客席として使えるようになっている。ということで、約25分ほど、あっちこっちを歩き回って、気に入った場所を探しました。
舞台美術WS 舞台美術WS

●18:55 スケッチのすり合わせ

書き終えたスケッチを持ち寄って、みんなで見せ合います。で、何をするのかというと、似た様な感覚の人を探すのだとか。自分が描いた絵に似ている人を探すわけです。で、グループを作るのだとか。とは言っても、そうそう「似ている」と言える人はいないわけで・・・。

舞台美術WS ちなみに私が描いたのは、ギャラリーの入り口の小さいドア越しに見える劇場内部です。入り口の外側の無機質な空間に開いた小さな穴から見える劇場(照明が入っているので明るい)内部が、なんかいい感じに思えました。

女性を中心に数人に、私の絵を紹介して聞いて回りました。で・・・。

結局、無理矢理ですが、共通点のあるものが集まってグループとなりました。その結果、四つのチームができました。多いチームは10人ぐらいいます。私のチームは・・・不幸なことに、私を含め、野郎が5人です。最小人数です・・・。

●19:15 チーム発表!

舞台美術WS それぞれのチームが、どういうチームなのかをプレゼンします。四つはそれぞれ名前をつけました。

1.「見上げチーム」

下から見上げた絵を描いた組

2.「カド・サカイ・カド」

空間の仕切りに注目し、左右や上下に分かれる部分を描いた組

3.「チーム見下げ」

上から見下ろした絵で、通称「王様チーム」。私もここに入った。男が5人。

4.「王子の秘密」

空間の構成要素である「モノ」を描いた。結構バラバラであり、無理矢理グループ化したとも言える。人数が一番多い(10人ぐらい)。

ちなみに、私が入った「チーム見下げ」の絵に共通した点を私なりに挙げると以下。

  • 上から見下ろしている
  • 遠近法を使い先細りの絵である
  • 自分の立っている床が描いてある
  • 一番遠くにあるものがメインであり、真ん中に詳細に描いてある

など。パースペクティブを使っているのは、「空間認識」としては、いいんじゃないだろうか・・・そんなことは問題じゃないのかな。手前の床とか、自分の位置も認識されている点もポイント高いんじゃないんだろうか。もちろん、スケッチしているときは、そんなことは全く考えていなかったんだけど・・・。

●19:45 作品作りへ

で、4班に分かれたわけだが、それぞれの班ごとに「芝居を作れ」だと。課題が発表になった。場所は、王子小劇場の施設内のどこを使ってもいいんだと。ただ、お芝居のテーマは「ある家族の崩壊と再生」だと。チーム分類の性格(絵の共通点)にはこだわらなくてもいいので、自由に芝居を作っていいんだと。用意してあった小道具や布や平台やイスや発泡スチロールのオブジェや脚立や照明機材など、何を使ってもいいんだと。5分程度の芝居を作ればいいんだと。ただし、制作時間は20分しかないんだと・・・。

ということで、この瞬間から、私は完全に「取材」する気持ちが消えました。その瞬間からノートには「どんな芝居にするか」のメモが走り書きになり、「客観」はどっかにぶっとんでしまいました。次にワレに返るのは、自分たちの発表が終わったときです。私たちのチームは2番目の発表でした。ので、3番目と4番目の写真はあるのですが・・・。

●19:50 創作開始!

【「チーム見下げ」における芝居作りの過程】

●20:15 発表会


舞台美術WS 第1組、劇場入口の階段を使う舞台。客は階段の下、舞台は階段の上の方。下から見上げる形で芝居を見る。なんか、「釣り」がテーマだったような・・・。ちゃぶ台が使われていたような・・・。(後で撮った階段の図)

第2組、舞台は劇場の床、客席は上のギャラリーの一辺に。私が所属する組です。照明を使いました。
舞台美術WS 第3組、舞台は劇場の床、客席は上のギャラリーの全辺。舞台を取り囲んで見る。平台5枚をバラバラに離して置いて、それぞれに役者が立って、家族間の距離を描いた。家族同士はメジャーを持ち、中心の父親とおぼしき人との距離が離れたり・・・。


舞台美術WS 第4組、王子小劇場の施設の奥にある倉庫の、二階建ての部屋。一階と二階は仮設で平台で仕切られている。二重舞台のような構造。その1階部分が客席で、上が中心の舞台。したがって、下の階の真上が舞台なので、芝居が見えない。ただ音だけが聞こえる。下の客席側に一人の役者がいて、上の大勢の役者と会話している。ドンドンという音が聞こえ、何が起きているのかと興味をそそられる。さらに、その奥にも部屋があり、エンディングでそこにあったと思われる(ドアが閉められるので見えない)和太鼓が打ち鳴らされる。

「ギャラリー」の観客の図と、杉山さんチェック!
舞台美術WS 舞台美術WS ●21:30 シメ

ということで、21時終了予定を大幅に超えて、終了。簡単なシメがあり、すぐにバラシとなりました。

●21:37 バラシ(みんなはたいしたバラシはないが、私は照明をバラさないと・・・)
●21:45 アフタートーク(宴会)

舞台美術WS ビールで乾杯し、乾きものをサカナに宴会が始まりました。私は深夜の肉体労働があったので、この時点で帰りました。疲れ果てていましたとさ。



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