2007.10.15
小劇場ブームの深層
いま、小劇場ブームらしい。実感が全くないが。文藝春秋の「文学界10月号」、岡田利規・前田司郎・三浦大輔・柳美里の対談記事冒頭で司会が「野田秀樹や鴻上尚史らが登場してきた80年代の小劇場ブームと似たような状況が起こっているのでは」と紹介し、en-taxi秋号の特集「深化する長塚圭史」のサブタイトルは「<小劇場ブーム>の渦を眺めながら」だった。いま、小劇場ブームらしい。
確かに雑誌が小劇場や演劇を特集している。
・學燈社「國文学7月号」特集:現代演劇と世界同時性
・幻冬舎「papyrus8月号」特集:小劇場には、“今”がある。
・文藝春秋「文学界10月号」総力特集:演劇最前列
・幻冬舎「papyrus10月号」特集:徹底特集:阿佐ヶ谷スパイダースの存在理由
・扶桑社「en-taxi秋号」特集:長塚圭史<小劇場ブーム>の渦を眺めながら
などなど。どれもこれも読み応えがある特集で、長塚圭史および三浦大輔、岡田利規、前田司郎らの若手にスポットがあてられている。
1年前、「落語ブーム」とか言われても、小朝は「うそです」と言い切っていた。が、そうこうしているうちに、ほんとうに「落語ブーム」になりつつあると感じられる。「落語ブームらしい」とメディアが勘違いして採り上げているうちに、実際に「落語ブーム」が立ち上がってしまったのだ。ならば、「小劇場ブーム」もばらばらに起きている現象が、勝手に相乗効果を生み出してしまうかもしれない。と期待しつつ・・・。
いま起きているのは単発の現象。80年代の小劇場ブームに比べれば、「へ」みたいなもんです。列挙してみましょう。
・劇作家が書く小説が文学賞レース「候補」常連に
・劇作家が書く小説がさまざまな文芸誌に毎月のように登場
・小劇場出身の役者が大活躍(阿部サダヲ、大倉孝二、八嶋智人などなど)
・小劇場のヒトが女優やアイドルと結婚したりウワサになったり(河原雅彦・ともさかりえ、長塚圭史・常盤貴子、サタケミキオ・大河内奈々子、吉田メタル・岩崎ひろみなどなど)
・東京セレソンDXの冠番組や原作ドラマや
・映画監督が舞台演出へ
・アイドルが小劇場舞台出演へ
・歌舞伎界と小劇場の交流
・映画界と小劇場の交流
・文学界と小劇場の交流
・NHKが「PJ」で大人計画、「サラリーマンNEO」でコンドルズを
・「下北サンデーズ」(小劇場劇団の実態を題材にしたドラマ)
・三谷幸喜、宮藤官九郎のテレビでの活躍
・フジテレビ「お台場SHOW-GEKI城」開催
・CoRich舞台芸術×フジテレビ×講談社で「T★1演劇グランプリ」開催
・チームNACSと大泉洋の活躍
だんだん細かくなるけど・・・
・秋元康のAKB48(秋葉原にアイドル小劇場)
・タレント事務所の劇場運営、演劇制作
・タレント事務所が劇団設立(米米クラブ劇団やEXILE劇団、新垣結衣の事務所劇団など)
・弁護士や警察やシルバー世代が多数の劇団設立
確かにいろいろと起きてることは確かだ。どれもこれも「表層」のような気がするけど。ただ、これらの現象がウズとなって、マジの「ブーム」にならんとも限らん。「落語」なんか、深夜帯にさまざまな特番が組まれるようになり、NHK朝の連続テレビ小説の現在のやつは「女流落語家の生涯」がテーマだもんね。大阪の繁昌亭は連日満員らしい。(と言っても、普通の寄席にわんさか客が押し寄せているわけではない)
さてさて、ほんとうに「小劇場ブーム」と言えるんだろうか・・・。80年代のブームと比べると、あのときはつかこうへいが直木賞、唐十郎が芥川賞取ったし、いろんなメディアや業界が小劇場に注目してたし、劇場に観客があふれてた。その結果、才能が集まった。結果としていろんなメディアや業界に影響を与えていた。その意味では、採り上げている媒体はまだまだ少ないし、注目されるような賞も事件も起こしていない。これからだ。
とはいえ、明らかに見られている。アンテナを高く張った業界人がチェックに来ていることは確かだ。ほんとうのブームになることを期待したい。可能なら、長塚、本谷、近藤ら以上に注目される才能の登場を望みたい。
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