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(1405)

2007.7.23
増えているんです演劇ワークショップ

演劇ワークショップの現状と将来(2)
(The STAGE Tribune特約)

演劇ワークショップはさまざまな主催者によって開催されている。それも、「俳優養成」や「創作」が目的ではないほうの演劇ワークショップが「確かに増えている」と、演劇ワークショップの開催情報を掲載している「演劇ワークショップポータルサイト」のDEN(Drama Education Network)は伝えている。「表現教育」や「コミュニケーション教育」をメインとし、俳優志望じゃない一般人(大人から子供、老人まで)を対象とするものが増えているのだ。主催者も、劇場や自治体、劇団主宰者から教育関係者・団体までさまざま。地域のイベントとして開催されたり、授業のひとつとして行われたり・・・。

開場10周年を迎えた世田谷パブリックシアターは設立当初から演劇ワークショップを開催していた。劇場主催のイベントとして恒常的に演劇ワークショップを行っていたのである。そして5年ほど前からは毎年区内の小中学校にパンフレットを配布し、「授業で演劇ワークショップをしませんか? ワークショップリーダーを派遣しますよ」という活動を行っている。徐々に人気を集めてきて、2006年にはのべ125日間も派遣があったのだとか。区内の2割の学校から依頼を受けている。

こまばアゴラ劇場では、2003年に「オリジナルのワークショップを創る研究会」を開始した。平田オリザ氏の呼びかけに応じた現代演劇界の演出家、俳優などが参加し、より実践的な活動を行った。その成果は「活動成果報告書」として平成15年版・16年版の2冊がまとめられている(各500円)。また、その成果を踏まえて書かれた「演劇ワークショップのつくりかた」という本も出版された(1000円)。いずれもアゴラ劇場で購入できる。そして、現在、アゴラでは新たに「ワークショッププログラム開発のための研究講座」をスタートさせるという。これは、前の研究会が「よりよいワークショップとは?」がテーマだったのに対し、「コミュニケーションティーチャー育成プログラム」を意識しながら「演劇ワークショップ普及」の具体策を練る組織のようだ。

演劇や舞踊、落語などの実演家の団体である(社)日本芸能実演家団体協議会(芸団協)は1996年から「教育における芸能」などのセミナーを開催してきたが、2000年からは「表現教育」を意識した活動が開始された。当初、他校と差別化を図りたいと考える学校側の要請により生まれた「芸術の授業」のニーズがあり、実演家は「どんな授業が可能か」ということを試行錯誤していった。その結果は充分な成果が得られたとは言いがたい状況であるという。これを受け、芸団協では「どんな授業が良いか?」から「表現教育は可能か?」といった俯瞰したテーマを掲げて検討するようになっている。「子供にとっての表現教育とは何か?」という根源的な問いを発している。そこには「演劇や芸能に興味のない子供たちを対象にした授業」が考慮されており、芸術選択科目で「演劇を選んだ子」だけが相手じゃない授業という難問に挑戦しているのである。これはすなわち「演劇ワークショップ」が歩んでいる道と呼応する。(なお、演劇以外の実演家も対象とする芸団協では「演劇ワークショップ」とは言わず「表現教育」を使っている)

演劇ワークショップポータルサイト「DEN」を運営する(有)フロントステージは、自らも演劇ワークショップへのリーダーを派遣している。2001年からスタートし、各地の市や区の財団・公社などの要請に応えている。現在、5年連続で行っているものがあるなど、その依頼は増える傾向だという。その特徴は、主催が自治体の文化振興財団や文化振興公社であり、市の広報で集めた子供たちが対象となっている。和光市文化振興公社が主催した演劇ワークショップには近郊の中高生が参加し(遠くから来た子もいた)、2日間に渡って行われた。予定では3時間だったが、40分も延長してた。初歩的なコミュニケーションゲームから始まったが、参加者の中に演劇部の子がいたとかで、一日目の最後には台本を使った二人芝居をやっていた。内容は参加者の顔ぶれに合わせて変化させるという。コミュニケーションや基礎的な表現だけを行うことも多いらしい。参加者が中高生で演劇部がいれば、ある程度は「創作」や「演じる」ものを行うということだ。

さて、このように対象を「子供たち」とした演劇ワークショップが増えており、「総合学習の時間」や「ゆとり教育の反映」で学校への導入もさまざまに始まっているわけだが、そこで起きる「大問題」は共通している。世田谷パブリックシアターも芸団協もDENも平田オリザ氏も同じ悩みを抱えている。さて、それは・・・。

(つづく)


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