2007.7.16
演劇WSは演劇界のディープインパクトか?
演劇ワークショップの現状と将来(1)
(TheStageTribune特約)
「演劇ワークショップ」はこの10年で激変したと言える。「訓練」「創作」から「教育」「エンタテインメント」にまでその価値を広げている。「演劇ワークショップ」はすでに「演劇」だけのものではなくなっている。
90年代に入り、「ワークショップ」はひとつのブームとなっていた。その存在は現在の「演劇ワークショップ」とは別物である。劇団や演出家が単独で一般公募した「生徒」を集め、自らの演劇的な方法論を実践し提供する機会となっていた。当時、演劇界は劇集団による創作から「プロデュースユニット(公演ごとにメンバーを集める)」や「一人劇団(中心になる作家・演出家のみが所属する劇団)」の創作に移行し、作家・演出家とフリーの俳優との交流が盛んになっていた。その出会いの場として「ワークショップ」が開催されていた。主催する演出家や劇団にとっては新しい役者との出会いの場となり、出演機会を探す俳優にとっては、新しい方法論や演出家や共演者との出会いの場となった。多くのメリットを生むのがワークショップであった。90年代のワークショップブームはこうして形成され、現在も多くの機会が設けられている。
それとは全く別の存在としての「演劇ワークショップ」が10年ほど前から登場していた。ベースとなったのは、イギリスなどで行われていたもの。演劇のノウハウを使った表現・コミュニケーションを楽しむイベントとして、劇場や個人が場を提供していた。1997年にオープンした世田谷パブリックシアターは、その開場時から地域の人々を集めての演劇ワークショップを開催していたという。最初の頃は、演劇のことなど何も知らない(関心もない)おじさんとかが参加していたという。
現在、「演劇ワークショップ」は様々に開催されている。劇団や演出家が「創作」や「俳優養成」を目的として開催されるものも続いている。一方で、表現やコミュニケーションを楽しむイベントもまた数多く開かれている。地域社会の一般の人々が対象だったり、子供を相手に学校の授業だったり、老人やハンディキャッパーが対象だったりと、さまざま。主催する側もいろいろで、劇場が中心となっていたり、演劇人が自分でチラシを作って受講生を集めたり、教育者が中心となって演劇人を呼んできたり。
そして今、演劇ワークショップは新たな段階に入ろうとしている。さまざまに行われていたものを実績として踏まえ、学校教育の授業へ科目へ、という動きである。まだ端緒についたばかりではあるが、その動きが確実に起きているのは事実である。それも、音楽・美術に並んで演劇・ダンスなどが選択科目として入るという意味ではない。国語・算数・理科・社会に並ぶ必須科目となる可能性もあるというのだ。大変な事態である。はたしてそんなことが可能なのだろうか・・・。
想像してみて欲しい。いまどきの子供たちが表現力・コミュニケーション力が豊かになることのインパクトを。そして、「演劇」することが特別なことじゃなくなるということを。その結果、目の肥えた観客が増えてしまうという意味を。そしてそして、それが「授業」となるためには多くの「特別の先生」が必要になるということでもある。「元演劇やってました」という全国各地にいる人たちに要請が生まれる。そのインパクトは決して小さくない。
週刊StagePowerは「演劇ワークショップの現状と将来」と題し、取材をベースに、特に「演劇教育を学校へ」という動きを追っていく。
(つづく)
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