2006.11.4
どこへ行く!王子小劇場!
いま、小劇場界で何が一番注目かと言えば、王子小劇場の動きじゃないでしょうか。違いますか?
「ライバルは駅前劇場とアゴラです」を標榜する東京・王子の「王子小劇場」はこれまでもアグレッシブな活動を行ってきた。そこいらの貸し小屋とは一線を画す動きであり、いたれりつくせりの公演サポートは「劇団を甘やかす」んじゃないかと心配する向きもあった。また、「しょせんアゴラのマネじゃん」という声も。しかし、「アゴラのマネ」はハンパじゃできません。チラシの折込管理を劇団じゃなくて劇場が行う「アゴラ式」を王子小劇場が採用した時点で、その本気度がわかりました。そしてとうとう、アゴラの先を行く行動に出ます。アゴラにはアゴラ企画と平田オリザという看板がありますが、はたして王子は・・・。
王子小劇場が知られていたのは「佐藤佐吉賞」を主催していたことで。これは、王子小劇場で公演を行った劇団を対象に、劇場スタッフが賞を授与するもの。かなり限定された対象に対し、限定されたスタッフの主観で選ばれる賞だった。ために、知る人ぞ知る賞だった(1998年より開催)。しかし、与えられる部門賞が作品賞、脚本賞、演出賞、舞台美術賞、照明賞、音響賞、衣装賞、宣伝美術賞、主演男優賞、助演男優賞、主演女優賞、助演男優賞と多岐にわたるもので、普段なかなか評価されないスタッフにとっては嬉しいものとして位置づけられていた。また、2004年からは佐藤佐吉賞を受賞した劇団による連続公演「佐藤佐吉演劇祭」を開催している(佐藤佐吉演劇祭【劇視力1.0】2004.11〜12)。これは今年も開催された(佐藤佐吉演劇祭2006【劇視力2.0】「物語の現在地」10/4〜12/5)。
さて、そんな王子小劇場がいま、大きく変わろうとしている。まずは「王子トリビュート001 畑澤聖悟」の開催。これは王子小劇場が「戯曲」に注目し、一人の劇作家の作品を連続上演することで、劇作家に注目を集めよう、という試み。「結局芝居はホンです」とは誰でも知っていることだが、世の中に埋もれたホン、埋もれた作家は数多いわけで、注目の作家に陽を当て、力づくで育てようというのだろう。12月20日から07年1月7日まで、畑澤聖悟の3作品が3人の演出家による「王子小劇場プロデュース」「いるかHotel公演」「渡辺源四郎商店公演」の形で連続上演される。
また、2007年4月から、「王子小劇場では全ての劇場利用団体を審査する」と発表した。一般に劇場は公演内容には口出ししないのが通例であるが、王子小劇場は違うようだ。もちろん作品内容に口出しはしないだろう。公演のクオリティに関わる部分だ。制作体制やスタッフの部分。劇団の多くは、スタッフの調達は口コミとコネによるところが大きいため、明らかに弱体のスタッフで我慢している場合がある。それに対し、劇場サイドとしてフォローしていくということだろう。「そんなスタッフではいいものはできっこない」と感じることは多いが、王子小劇場の「審査=口出し」がいい方向に働くことを期待したい。
さらに、「会費2万円で年間の全ての公演を観られる支援会員を25人限定で募集する」とも発表した。現在、アゴラ劇場では、「アゴラ支援会員制度」を行っており、法人会員なら5万円で50公演が観られるというものだ。また通常会員(個人)なら1万円で7公演を観られる。あるいは「特別賛助会員」となれば2万円でアゴラの全公演を観ることができる。
王子小劇場が発表した支援会員もまたこのアゴラの「特別賛助会員」と同じものだろう。2万円で王子小劇場の全公演を観れるものだ。ただし25名限定だ。これは、あまり増えすぎると劇団の収益に影響が出てしまうためだろうか? しかし、普通の劇団なら収益よりも動員のほうが重要と考えるのだから、いずれこの数は増えるのではなかろうか・・・。どうだろうか。
その他、「ロングラン奨励制度」なども発表している。いつも思うが、こういった動きが一つの劇場だけで行われるのではなく、横に広がっていくことを期待したい。その意味で、アゴラの活動が広がったと言えるものだが、さらに多くの劇場が「単なる貸し小屋」を脱し、連携し、演劇の制作環境と、観劇環境を変えてくれることを期待したい。さて、次はどの劇場が動くのでしょうか?
王子小劇場
アゴラ劇場支援会員制度
(この記事は王子小劇場をまだ取材しないで書いてます。発表された情報のみで判断して書いたものです)
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