数々の演劇映像配信サイトが登場しているが、どれもこれも「中途半端」の誹りを免れない。言い過ぎですけど。

何が中途半端かと言えば、配信する作品の価値（興行的な価値・訴求力）と数（カタログ数）である。いかに「見たい」と思わせる作品をたくさん集めることが難しいことか・・・。

そんな中、超優良企業であり、クラウンジュエル（王冠の宝石みたいに輝いている企業っつうことです）として有名になったあのポニーキャニオンが、演劇映像配信事業に参入する。

フジ・サンケイグループのポニーキャニオンは、フジテレビの映像作品の販売事業を行ってきた。もともとはレコード会社として「およげ！たいやきくん」や「だんご３兄弟」などのヒット曲をてがけてきた。近年ではＤＶＤ「踊る大捜査線」が大ヒットしている。また、2001年からは映像・音楽配信事業をスタートさせている。

問題は、どの舞台映像を扱うのか、ということだが、フジテレビ制作の舞台作品が扱われるということではないようだ。扱うのは演劇系のタレント事務所（株）キューブが制作した舞台。キューブ（1997年設立）の名になじみがない人も、関西演劇系のタレントを抱えるリコモーション（1988年設立）と関係が深いと言えば理解できようか。リコモーションの抱える伊藤えん魔や久保田浩、古田新太、橋本さとしなどの東京での活動はキューブが担当している。よって、配信する舞台作品は、キューブおよびリコモーションが制作した舞台である。

7月15日より開始される初の"演劇映像専門"ブロードバンド配信ポータルサービス『ｃｕｂｉｔ　ｃｌｕｂ　ｔｈｅａｔｅｒ』（キュービット・クラブ・シアター）では、１タイトル420円（税込）で、１週間視聴可能という形式での配信。ウィンドウズメディアプレイヤー対応。当初は伊藤英明、長谷川京子が出演した「ＭＩＤＳＵＭＭＥＲ　ＣＡＲＯＬ」（０４年）や生瀬勝久、斉藤由貴出演の「人間風車」（００年）など８作を配信。その後に他劇団の作品などもメニューに加える。

420円という価格や、ＷＭＰ方式、圧縮レートなど、異論も多いだろうが、やはり問題は今後のラインナップであろう。キューブ＋リコモーションでも、年間に制作する作品数は限られる。やはり、演劇映像配信ポータルを名乗って事業化するなら、毎月数作品の公開を期待したい。となると、「他劇団の作品」をどうやって集めるのかが問われることとなる。映像・演劇界に信頼の厚いポニーキャニオンおよびリコモーションの名のもとで、質の良い舞台映像が集まることを期待したい。

第１回配信予定（８作品）

パルコ＋リコモーション

『こどもの一生』

『人間風車』（2000年版・03年版）

『ダブリンの鐘つきカビ人間』

『MIDSUMMER CAROL〜ガマ王子 vs ザリガニ魔人〜』

パルコ＋キューブ

『SLAPSTICKS』

スタジオライフ

『シモンとヴァリエ〜Studio Life 'LILIES'より』

『DRACULA』

ｃｕｂｉｔ　ｃｌｕｂ　ｔｈｅａｔｅｒ

キューブ
リコモーション