2003.10.24
前川麻子傑作新刊の、驚くべき内容!
前川麻子の新刊「劇情コモンセンス」が書店に置かれるようになり、緊張と不安でドキドキしながら、読んでみた。あれはもう、かなりの、かなりの、傑作だ。・・・と思う。・・・のですがいかがでしょうか。
登場人物は、劇団の制作さん、座長さん、座付き作家さん(座長の妻で元女優)、若手俳優さん、ベテラン女優さん、現役女子高生女優さん、舞監さん、などなど。これらの人々が「劇団木村座」という舞台で、くんずほぐれつの濃厚なるカラミを展開する。
この小説、作り手の人にとっては、一つ一つのエピソードが「ありがちな話」として楽しめよう。まさに木村座というのは、ある種の劇団の典型例といえよう。100や200の劇団が該当するのではないだろうか。(もちろん、東京に2000ぐらい劇団はあるんだから、残りの大多数は「?」なのだろうが)
また、一般の観客にとっては、自分たちが見ている演劇のバックストーリーとして楽しめるのではないだろうか。小説の中に出てくる演劇用語はきちんと解説されているし。
さらに興味深いのは、小説の中に登場する下北沢の飲み屋が実在のものであることだ。笑ってしまう。また、登場する木村座の公演会場は、おなじみの下北沢駅前にあるビルの中のあそこだ。
さらにさらに画期的なのは、登場人物の名前である。木村座座長は「森和義」。若手俳優役は「山田郁生」。この名前にピン!と来たら、あなたは演劇通。知ってますよね、林和義さんや、山田伊久磨の名を。で、よく見ると、本のカバーにはまさに「木村座」さんたちの集合写真が写っているわけですが、そこにはちゃんと林さんや山田さんが・・・。
架空の小説と、リアルな役者とがリンクしているのです。登場人物の顔がリアルに浮かぶのです。もちろん、実際の林さんはあんなに身勝手じゃないし、山田さんはいいかげんじゃありません(と思うが・・・?)。本のカバーをはずすと、木村座劇団員の個別の写真を見ることができます。そこには小説中の登場人物の名がリアルな写真に対応して記載されています。まさに、実際の役者が小説中の「役」になっているという・・・。
ということで、かなりの傑作です。文芸春秋社の担当さんも、「前川さんの作品の中では、かなりの傑作になっていると思います」と断じている。
読んでいただきたいものです。書店では、新刊文芸書のコーナーか、芸術書(映画・演劇)のコーナーにあります。税込み1500円です。演劇が今、どうやって作られているかが理解できます。演劇人が今、何に苦悩しているのかが、わかります。
−−>表紙写真とか・・・
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