演劇関係者のごく一部で目標にもなっているフランス・アビニョン演劇祭。ことしは７月８日から開催される予定だったが、中止となった。

中止の原因は「俳優スト」。政府による失業保障制度改革に反対するフランスの俳優ら数百人が、アビニョン演劇祭が開幕予定の８日からストに突入すると宣言し、ギリギリの折衝が行われたが、10日、全面中止が決定した。今年で５７回目を迎える同演劇祭は、夏の行事ではフランス国内最大規模を誇り、３週間にわたり例年１０万人以上が来場する。

政府が問題にしている失業補償制度は、非常勤である舞台人に対しシーズンオフの間も収入を保証する制度。舞台の仕事がないことを「失業」と呼ぶこと自体が日本人には理解が困難だが、世界の俳優業は「職業」として確立しているということだ。そして、フランスでは政府の赤字が膨らみ、失業補償期間の短縮などの改革を打ち出していた。国の財政緊縮という目的で失業補償を減らす、という名目だが、フランスの舞台人は納得していない。