2002.03.21
舞台で役者とCGが競演>新作歌舞伎
東京・国立劇場で上演中の新作歌舞伎「秋の河童(カッパ)」(矢田彌八作、織田紘二演出)で、コンピューターグラフィックス(CG)で描かれたカッパが連日“熱演”している。モーションキャプチャーという最先端の技術を提供し、CGのカッパに命を吹き込んだのは「わらび座」のハイテク部門・デジタルアートファクトリー(DAF)。カッパと役者の“夢の競演”を実現し、歌舞伎400年の歴史に新風を吹き込んだ。
舞台そででモーションキャプチャーという装置を体に着けた役者の動きを、舞台のスクリーン上に映し出されたCGのカッパがリアルタイムで再現する仕組み。役者の演技をモニターで見ながら、それに合わせてカッパ役の役者も演技する。テレビの子供番組などではおなじみの方式。
昨年と今年のわらび座正月公演「始まりの森の物語」など、既にモーションキャプチャーを舞台で実用化していた実績を持つDAFが、国立劇場側からの技術のノウハウ、オペレーターの提供要請にこたえたもの。
愚直な飾り職人・常次と、彼にしか見えないカッパの「太郎」の物語。身長1メートル30センチのひょうきんな太郎は、1幕3場、すべてのシーンに登場する。
第1場の「飾り職人、常次の家」で、常次役の中村翫雀(かんじゃく)さんと夕飯を共にするシーンでは、茶わんを手から手に持ち変えるといったリアルな素早い動作や、開幕中の大相撲春場所を話題にした即興の掛け合いも披露。リアルタイムならではだ。
また、ラストシーンの第3場「亀久橋の袂(たもと)の堀端」では、常次が太郎を連れて花道から退場するという原作を、太郎が常次以外の登場人物にも姿を現すというストーリーに書き換えた。
原作が書かれた20年ほど前の時点では、役者の演技力によって舞台上には存在しない太郎を表現しようという想定だった。だが最先端技術が、見えない設定だった太郎のビジュアル化を実現し、原作に手直しを加えさせるまでに至った。
上演に先立ち、DAFは「スクリーンの存在をいかに客席に意識させないよう工夫するか」「コンピューターの安定性を保つ上での対策をどうするか」など、これまでの技術的な蓄積を基に企画の段階から積極的に提案してきた。
DAFチーフディレクターの長瀬一男さん(48)は「技術的な難しさよりも、事前に収録した映像を流すのと違い、NGが許されないという生の恐さがあったが、CGによって舞台独特の間や呼吸を現出できたと思う」と話している。
「秋の河童」は24日まで。
「秋田魁新報/さきがけ on the web」から
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