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(since 2006.12)

第1話 新国立劇場Z席に並ぶ〜2006.12.12

この連載の主人公は、場粍蓄光(ばみり・ちっこう)氏。現場主義。事件は現場で起こっている。

場粍氏の足取りを追う。2006年12月12日早朝、彼は東京・渋谷区の初台に現れた。新宿駅から京王新線で一駅。目的は新国立劇場で開催中の公演「エンジョイ」の「Z席」を獲ることだ。これは特別の当日券。新国立劇場で行われる公演は5000円だ1万円だと、高額のものが多いが、このZ席だけは常に1500円。どんなにプレミアのつく公演であっても1500円なのだ。格安なのだ。ただし、当日朝の10時に窓口に並ばなければならない。

その日の場粍氏はあせっていた。チケットが発売となる10時の1時間前に並ぼうと考えたからだ。だが、すでに9時20分になろうとしていた。以前、人気の「太平洋序曲」で9時に並んだら長蛇の列で、結局チケットが獲れなかった経験があるのだ。9時についた時点で30人ほどが床に横たわっていた。かなり早くから並んでいたようで、みんな屍のようにごろごろ転がっていた。その日の「太平洋序曲」は昼夜2回公演で、売り出されるチケットの枚数が多かったにも関わらず、場粍氏の3人前で完売してしまったという・・・。

この日の9時20分、新国立劇場に到着した場粍氏は「座席指定席」が完売であり、Z席は10枚だけだと知る。Z席はこの新国立劇場窓口と都内チケットぴあ5店舗で10時に同時発売となる。競争率は高い。場粍氏はあわてて劇場ロビーに入っていった。

誰もいない。

もしZ席に並ぶのが初めてだったら一瞬不安になったことだろう。誰も並んでいないのだから。しかし過去に一度経験のある場粍氏は所定の場所に一番で並んだ。数分しても誰も来ないので、ロビーにある複数の公演チラシを集め、チェックを始めた。いくつかのチラシに興味を惹かれたようだ。こまばアゴラ劇場の冬のサミットでは「制作者のための宣伝美術ワークショップ」がfringeの荻野氏らを講師として開催されるという。大阪の精華演劇祭は「宇宙堂」や「表現・さわやか」などが参加し「饒舌演劇宣言2」がテーマだという。演劇評論誌「舞台芸術」がバックナンバー10冊の一括購入(2万円)しろという。新国立劇場バレエ研修所の第4期研修生募集応募用紙には全身ポーズ写真を5ポーズも添付しないといけないという。キラリ☆ふじみ制作の芝居が乞局の下西啓正の作・演出作品だという・・・などなど。

そうこうしているうちに9時45分。ようやく二人目が並んだ。9時50分に三人目が。そして9時55分に係の人が現れ、販売窓口へ移動。10時3分前にはお金を準備し、チケット購入臨戦態勢へと入った。なんせ販売開始と同時に、都内5箇所のチケットぴあ窓口との競争になるのだから。向こうに何人並んでいるのかわからない。現段階で、キャンセルチケットは1枚のみ。Z席は10枚だ。係のお姉さんに聞くと「確かにここに並んでいる人は少ないですが、他の売り場の状況によっては、あっという間に売り切れてしまう場合もあります。」とのことだ。気合を入れて購入態勢を整える(と言ってもサイフ出すだけだけど)。

10時ジャストに「Z席を」と言い、無事ゲット。新国立劇場の窓口は端末2台で対応してくれるので場粍氏の次の人もZ席をゲットできたようだ。めでたしめでたし。

で、10時2分には新国立劇場を後にした場粍氏。それから9時間後の午後7時に再び会場に舞い戻ることになる。

午後6時50分。新国立劇場小劇場に場粍氏は現れた。会場前には長蛇の列。どうやらキャンセル待ちのようだ。約20人が並んでいた。彼らの横を通り会場へ。Z席は客席横の2階バルコニー席だ。通常の舞台設定なら「見づらい」かもしれない。が、今回の公演「エンジョイ」(劇団チェルフィッチュの岡田利規の作・演出)は客席部分に舞台を設置し、客席がコの字型に舞台を取り囲む形なので、横位置の客席と変わりないもの。本来の舞台の部分にはスクリーンがあり、映像や字幕を映すだけで、Z席はとてもお得だった。

通常舞台
通常舞台
今回の「エンジョイ」(がZ席観劇位置)
「エンジョイ」舞台

また、心配されたチェルフィッチュの方法論が新国立劇場小劇場という「大劇場」で通用するのかという問題だが、役者がしっかりセリフをしゃべり、舞台を広くして客席と近くしたため、なんの障害も起きなかった。充分伝わっていた。公演は23日まで。

定価4200円(全席指定)の舞台を1500円で見れた満足感にひたる場粍氏であった。その後、不敵な笑みを残し、初台の闇に消えていった・・・。

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