週刊StagePowerTopPage
日刊StagePower

乾坤一滴
NYの日本人俳優
西山水木の使い方

野平総研!!
テレビ文芸時評

レコメンの殿堂
お気楽鑑賞記
目撃者
TheStageTribune
特集:さいたまGT
特集:小劇場史
週刊SP企画室

NEWSバックナンバー
過去の連載・記事
取材のお願い
Onlineインタビュー
このサイトは?
楽天舞隊稽古場取材
2003年5月第2回公演
「妖盗葵小僧」
@中野MOMO

テロがあって戦争があって、くそ面白くない空気が蔓延している時代に、アクション系エンタメ劇団を立ち上げようとしているのは、いったいぜんたい、何を考えているのか! 若手劇団は今、何を考えているんだろうか?

「楽天舞隊」はNYテロ後の2001年9月に結成され、1年間の準備期間を経て昨年11月に旗揚げ公演を行っている。テロの影響を受けた芝居だったというが、アクションのできる役者を集めて「ピカレスク活劇」をやっていくんだと。だけど時代はさあ・・・。

エンタメ系って難しい位置に来ていると思う。たいがいのことは新感線がやっちゃったし、その新感線がホリプロと組んだり、ジャニーズの役者やカブキスターを使ったりで、はるかに高いとこに行っちゃってる。あれに匹敵することをやらないと、ただのビンボ臭いものになってしまうわけですよね。おまけに「マトリックス」と「少林サッカー」のインパクト。特に小劇場演劇のテイストをそのまんま持っている「少林サッカー」の存在はやばい。あんなことを映画ごとき(!)にやられちゃったら芝居の立場は・・・。

2003年5月25日(日)の午後、初日を4日後に控えた楽天舞隊の稽古場を訪ねた。主宰者の待田堂子さんからの「少林サッカーがなんぼのもんじゃい!」(私の印象です)というメールに突き動かされて、久々になんの接点もない劇団への接触であった。どんなハードガイなお姉さんが登場するのかと思ったら・・地味めのちっこい人が・・・。

まずは稽古を見せてもらう。芝居の終盤のアクションてんこ盛りシーンだそうだ。アクションというと、ピスタチオやACファクトリーやR:MIXやアンドエンドレスやカプセル兵団と比べてしまう私だ。特にすごい、という印象はない。アクションは「キレ」だけど、まあ、かなりキレてる役者もいたことはいたが・・・。しかし、思ったよりもちゃんと芝居している印象を持った。情宣的にアクションが前に出ているが、どうもそれだけじゃないみたい・・・。

役者はいい男のみ7人。かなりのイケメン揃い。主宰の趣味か? 「ええまあ、スタジオライフの・・・」そうかなあ?

「やっぱメインはアクションですか?」の問いに対し、いろんな話が出た。確かに「アクションと笑い」を重視しているが、どうも主宰の待田さんは「作家」であるようだ。もともとテレビアニメの台本を書いていたとか。作家仲間が集まってオムニバス公演とかをやっていたとか。別役やベケットの不条理劇が好きだとか。私も好きです。

かなりホンにこだわりを持っていると見た。だとすると、情宣面での「エンタメ系アクション」を前に出しすぎているような気がするが。確かにお客を呼びやすいかもしれないけど・・・。


「アクション系芝居って、アクション俳優さんに芝居を覚えてもらうのと、芝居のできる人にアクションを覚えてもらうのと、二つのアプローチがあると思うんですが?」と聞いてみた。ここは絶対に後者だそうだ。アクション中心に活動している俳優もいるけど、基本は芝居だとか。ここの役者は、主宰があっちこっちの芝居を見て、声をかけて集めたのだとか。それゆえに、「アクションだけ劇団」ではないということだ。公演終了後、「アクションはすごかったよ」とか褒められても困るということだ。そういう劇団は少なくない。ミュージカル劇団で、歌とダンスだけ褒められるとこが多いように・・・。もちろん、芝居にとってエンタメの要素が重要であることは疑いないけど。

さてさて、それにしても、なぜ今エンタメなんだろうか? 「芝居は非日常のハレのもの、ケレン味が大切。大衆演劇の復興をも意識している」とか・・。

イギリスを旅行したとき、日本との大きな違いを最も感じたのは「客層」だそうだ。日本は芝居の観客って、似通っていて、傾向が見て取れるのだとか。イギリスじゃ、様々な人が芝居を見に来ている。それをうらやましいと感じた。日本でも様々な人が普通に芝居を見るようになればいいと思ったのだとか・・。

でもなあ、それがエンタメなら、そんなに意味はないとも思うなあ。「文化」が生活に根ざす、という意味ではいいと思うけど。大人の息抜きとか、ストレス解消とかが、現在では飲み屋で発散したり、風俗行ったりだというこの国の現状ってのは情けないとは思うけどね。「たまには芝居でも見に行くか」となれば素晴らしい。しかし、それがエンタメ系だと、やはり映画やテレビやゲームでいいし、どう考えても飲み屋でおねえちゃんを口説いたり、風俗行ってスッキリさわやか、のほうが楽しいような気がするなあ(逆にへこむこともあるけど)。

取材を終えて思ったのは、主宰の待田さんが「エンタメ」「アクション」にこだわっているけど、それと「ホン重視」「役者の芝居重視」というのにギャップがあるなあってこと。待田さんの本質は「ホン」や「役者芝居」であるようだ。それに加えてエンタメ要素としてのアクションがあるのだろう。ということは、ここから先の評価は本番を通しで見てから行うしかない。芝居とアクションの連携が重要だ。ミュージカルでしばしば歌とダンスが唐突だったり、ホンや芝居のレベルが低かったりするのは知られている。はたして楽天舞隊はどうだろうか・・・。

「やろうとしていること」は確かにかっこいいと思う。アクション系のエンタメ芝居だけど、徹底的にホンにこだわり、クオリティの高い役者芝居をきちんと作っているところって、なかなかないもの。「演劇的ご都合主義」でごまかさないホンのエンタメ芝居を見てみたいと思うもの。それがやれているなら、すごいことだしね。まだ2回目の公演でもあるので、せめて目標に向かっている姿が見えればいいと思うのだが、はたして・・・。

楽天舞隊 第二回公演
「妖盗葵小僧」(作・演出/待田堂子)
2003年5月29日(木)〜6月1日(日)
@中野MOMO
前売3000円、当日3300円

問い:楽天舞隊サイト

撮影・文/編集部:神保正則


取材募集