小丸:
| 僕らの調査局って、芝居のパターンが三つぐらいあって、「缶みかんシリーズ」と「小津」とあと、「東京コンバット」みたいのと。
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宮本:
| ええ。
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小丸:
| 私は「東京コンバット」がすごく好きだったんですけど、あれは他のと全然違う芝居でしたけど、で、宮本さんは、どれがやりたいんですか。
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宮本:
| 僕は芝居がやりたかったですね。
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小丸:
| なるほど(笑)
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西角:
| それは、コントじゃなくてという意味ですか
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宮本:
| いや、なんていうか、喜劇がやりたかったんですけど。でも、「笑い」っていうとみんなコントに行っちゃうってのがあって、僕の中ではちょっと嫌だったですね。
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小丸:
| そういうのありますねえ。
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宮本:
| だから、「小津」はコメディですし、「東京コンバット」もめちゃくちゃコメディですしね。その意味で、三つとも同じって自分の中では考えてました。
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小丸:
| 同じですか。小津も東京コンバットも同じ!
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宮本:
| 全部同じですね。作品としては違いますけど、「笑い」としては同じで、こういう笑い、こういう笑いという違いで、まあ、笑いを三つに分けたとしたら違う笑いというのがあるだけで、
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小丸:
| なるほど。
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宮本:
| でもまあ、コントの方が見やすいってのはあるんでしょうね。ちょこっちょこってやれるからなあ。
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小丸:
| 「東京コンバット」はニフティでもすごく評価されたんですよ。93年のシアターフォーラム演劇ベストテンで3位に入りました。
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宮本:
| そうなんですか。
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小丸:
| 観た人はみんな高得点をいれたんですけど、なんせ観た絶対数が少ないもんだから3位でした。
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宮本:
| そうでしょうね。
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小丸:
| 93年の「東京コンバット」って初演じゃなかったんですね、シアターガイドにちょっと書いてありましたけど。
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宮本:
| そうです。最初は初台のSKスタジオで89年にやったんです。それで再演が駅前劇場だったんです。
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小丸:
| あの戦車は初演のときもあったんですか。
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宮本:
| いえ。初演はなかったですね。初演では原っぱにしようというのがあって、駅前では学校にしようってのがあったんです。
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小丸:
| 新聞敷いたのは
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宮本:
| あれは前からありました。
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小丸:
| 西角さんは「東京コンバット」は
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西角:
| 私はにんじんボーンになってからです。
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小丸:
| 宮本さんは談志が好きなんですよねえ。
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宮本:
| 好きですよ僕は。「ダンシ」なんて言っちゃだめですよ。
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西角:
| 談志師匠
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宮本:
| 談志師匠ですよ。大好きです。練馬の武蔵関に引っ越したとき、「田舎に来ちゃったなあ」ってへこんだんですけど、近くに談志師匠の稽古場があったんですよ。歩いて100歩ぐらいのとこに。
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小丸:
| 稽古場、ですか。
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宮本:
| お弟子さんとかとの事務所があったんです。それで感動しましてね。田舎、なんですけど談志師匠がいたんで、嬉しかったですねえ。
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西角:
| (談志師匠に)会いましたか
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宮本:
| 会いましたよ、よくスーパーとかで。
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西角:
| 落語一般ってわけじゃなくて、談志師匠が好きなんですか
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宮本:
| いや、落語が好きなんですけど、落語家の中では談志師匠が一番好きなんです。とにかくもう、うまいしね。ほんとうまいんですよ。
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西角:
| 実際に寄席とかにも行かれるんですか。
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宮本:
| いまはねえ、ここんとこちょっと行けないんですけど。村上は志らくとか行ってるみたいですけど。
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西角:
| 舞台とか映画とか寄席とかありますけど、割合的にはどんな感じですか。
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宮本:
| 舞台はねえ、いまは見ませんねえ。昔は見たんですけどね。自分のスタイルが決まってないときは観てました。僕調やってるころまでですね。まだスタイルが決まってませんでしたから。でも、だんだんスタイルが決まってきて、「このスタイルで行こう」ってのが見えてくると、そうすると見なくなっちゃいますねえ。勉強にならないし。興味がなくなっちゃうというか、「いいなあ」って思わなくなっちゃいますから。役者さんを見に行くというのはありますけどね。
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西角:
| 昔見たうちで、影響を受けたというのはありますか。
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宮本:
| 舞台からの影響というのはほとんどありませんねえ。テレビのバラエティとか落語とか映画とか本とかの影響はありますけど。舞台を見て影響されたというのは、ないですねえ。
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小丸:
| 確かに、にんじんボーンの芝居ってのは、ほかと似てないというか、どっかの芝居の影響ってのを感じるものはないっていうか、まあ、他にないですよね。
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西角:
| まあ、確かにないですね。
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小丸:
| 今日、稽古を見てて思いましたもの。微妙な間(ま)を要求しまくってるなって。
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宮本:
| まあねえ。間は大事にしてもらわないと、ほんと困るんですよ。間だけは。どうも僕は、芝居の間と日常の間の間の間(あいだのま)が欲しいんですね。だから、芝居の間ってあるじゃないですか(やたらテンポの速いやつのことだろう)。あれもちょっと気持ち悪いんですけど、日常の間ってのも長すぎちゃったりするんでだるいなって思うんで、その間の間が欲しいんですよね。それをやって欲しいんですけど。
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小丸:
| だから、その間を開けろっていっても役者はわかんなくて、気持ちも入れてごく自然に開く人と、それができない役者とがいるんで
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宮本:
| ほんと間だけは・・・よその芝居見ると間もなにもなくやってるのあるから、もうかんべんしてくれって感じになるんです。
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小丸:
| あとね、間も微妙なんですけど、それよりも見てて思ったのが、芝居がみんな中途半端なんですよね。
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宮本:
| ちょ、ちょっとまってくださいよ。
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小丸:
| いやほんとに。中途半端っていうか、99の次は100って断言する芝居がありますけど、つまり、「99の次は100である」ってきっぱり言い切りますよね。そういう芝居って多いというか、まあ、99の次は100ですからいいんですけど。でも、にんじんボーンの芝居ってのは、99の次は100・・・って、なんかその後に続きそうなんですよ。なんかありそうなんですよ。そんなことを要求はしてらっしゃらないんですか。
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宮本:
| それはまあ、言われるんですけどね、自分の中では、そんなに要求ってのは
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小丸:
| 山口さんの芝居とか見てると、なんか、その場だけで会話してないってゆうか、気持ちは別のとこにあるってゆうか、
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宮本:
| ええまあ、
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小丸:
| なんか、あるんですよね。そこがうまいってゆうか
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宮本:
| 普段言ってるコトバって、いろいろ省略しますけど、そういうのも言ってしまわないと気持ち悪いっていうか、そういうのはありますね。あなたが好きだ、っていうのも、なんで好きなのか、こうこうこういうわけで好きだってのを徹底して言わないと気が済まない。それで、だから好きなんだよって言うんですけど。
|
小丸:
| 人間ってのは、実際に会話しているときに、いろんなこと考えてますよね。何か別のことが気になってて、それでもこっちに向かって会話しているんですけど。芝居ってあんまりそれをやらなくて、会話として必要なことだけセリフに書かれるってのもあるんですけど。でも、山口さんの芝居とか見てると、言ってることとは別のところになんかがありそうなのが伝わってきて、何があるんだろうってすごく気になります。まあ、さっきは全体の一部の稽古を見ただけなので、なんなのかがわからないんですけど。
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宮本:
| 全体を見るとですね、面白いですよ。(笑)
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小丸:
| いやもう、全体を見ると、そういうのがわかってくるんだろうなあって。
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西角:
| 間もあるんですけど、独特の言い方っていうか、イントネーションもあると思うんですけど、それは指示しているんですか。
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宮本:
| いや、そんなには。コトバ選びはやりますけど、単語も選びますけど、あと、語尾の上げ下げとか、おっきな音で入ってこられるとちょっと待てよ、ってのはありますけど。音もやっぱり大切だから。
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西角:
| 日常会話ってのですけど、ことばを途中で切るのの切り方とか、いろいろありますけど、そういうのは意識的に変えているんですか。
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宮本:
| いや、意識的にはないです。
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西角:
| 舞台向けに変えてるってのはないですか。
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宮本:
| いや、全然ないです。
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西角:
| んじゃあ、わりと日常の喋っているコトバを
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宮本:
| そうですね。
|
小丸:
| なんていうか、セリフの入り方も中途半端っていうか、上からどーんじゃなくて、すっと入ってきて、そのまま抜けてくみたいな終わり方で、こーゆー方法論ってのはたぶんないと思うんですけど、これってなんなんでしょうかねえ。
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西角:
| さあああ?
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小丸:
| うーん。
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西角:
| さっき、日常と芝居の中間の間ということをおっしゃってて、すごく印象に残ったんですけど、確かに日常的な単なる会話でも客に印象づけることができてるように思うんですけど、その正体がなんなのかはわからないんですけど、なんだろうこれは、ってのがあって、これがたぶん、にんじんボーンが他の劇団と違うとこだと思うんですけど。
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宮本:
| はあ。
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西角:
| 芝居のストーリーとか別にして、純粋に会話だけで楽しめるってのが特徴だよなって思うんですけど。
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小丸:
| 一個一個の会話だけで楽しめる、ってのが私なんかあるんですけど、でも、そこを楽しめない客はもう、だめなのかなあって気もしますけどね。楽しめないかもなあって。意識が別のとこにある会話とか、中途半端ってコトバは悪いんですけど、どっちつかずの状態の会話ってのが、ワタシは楽しいんですけど、そこを楽しめない客ってのもいるだろうし、そうすると、きついのかなあって思います。そんでもって、その芝居を役者に要求するのって、かなり高度な要求だって気がするんですけど。
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宮本:
| そうなんですか。
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小丸:
| いや、ごく普通なんですけど、人間がそういうもんなんですから。
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宮本:
| そうですよね。
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小丸:
| 日常において、いろんなとこに意識が行きながら会話してるんですけど、それを再現するのっては、けっこう難しいとは思うんですよ。
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宮本:
| まあ、そうでしょうか。
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小丸:
| 昔っからやってる山口さんとかはできちゃうんでしょうけど。今回、新しい役者さんが多いですよね。
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宮本:
| ええ。新しい方が多いんです。もう、一人、リーチかかっちゃってて大変です
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小丸:
| もしかして、私の知ってる方では(笑)
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宮本:
| そうです。今日、いないんですけど、たぶんお知り合いの方かと。
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小丸:
| 聞いてます。ひえーぃ。(笑) |