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藤本企画稽古場取材
2001年8月第三回公演
「魂込め」(まぶいぐみ)
@駒場アゴラ劇場

別に、「社会派劇団」を目指しているわけではないという。がしかし、今、この時代に生きて、偶然出会った短編小説に感動し、沖縄問題を題材にした作品を上演する以上、避けては通れないという。教科書問題などの社会科学的な事象と対峙せざるを得ない。沖縄問題とて、沖縄出身でもない人間が扱うことは慎重でなければならず、多くの場合は避けて通るものだが、真正面から向き合っている。「まあ、それぐらいが、つかさんとこで学んだことですかね。」演出家藤本聡氏は、そう言って笑った。ちょっと、かっこいいと思った。

藤本企画は昨年(2000年)4月に、北区つかこうへい劇団で演出を担当していた藤本聡が独立して立ち上げた劇団。旗揚げ公演は2000年8月、アイピット目白での「魂込め」である。原作:目取真俊、脚色・構成・演出:藤本聡(左写真)である。

まずは、作品について。原作との出会いを尋ねた。2年ほど前、紀伊国屋で北区つか劇団が公演を行った際に、劇中劇として使ったのだそうだ。この原作、短編ではあるが、見えないもの(魂)との対話があり、まさに演劇的だと感じたのだとか。そして、映画とかに使われる前に、「芝居にすべきだ」と考え、この公演が企画されたのだ。原作は短編であり、2時間の作品にすべく、大きく膨らませている。

さて、藤本企画は「劇団」ではあるが、毎回、役者を集めるプロデュースの形態をとっている。とはいえ、金泰希、小木宏誌、中垣賢二ら、常連もおり、また北区つか劇団からのつながりもあるようだ。

金泰希はソウル出身の女優。韓国で演劇の短大を卒業し、日大芸術学部演劇学科に入学したが、「切磋琢磨のない練習に失望して」映画学科に移籍し、NHKのハングル講座にレギュラー出演したり、衛星放送のニュースキャスターなどでも活躍していた。大学院卒業後、偶然目にしたつかこうへい主催の演劇セミナーに参加し、舞台との再会を果たしたという。

沖縄で戦争があったことすら知らなかった金。「韓国では教わらない歴史」を知り、戦争に対する見方が変わったようだ。金の演技は注目に値するものとなっている。

さて、この芝居は昨年8月に旗揚げ公演として上演された後、10月に沖縄でも公演を行った。現在の沖縄が抱える諸問題を扱っているがゆえ、沖縄在住の方の反応も決して小さくはなかったという。本土の人間が「共通語」を使ってやることに対する抵抗も見られたとか。

けっこう、これはキツイ、よね。はたして、実際の芝居は見てもらえたのだろうか。見てもらえれば、何かは伝わるとは思うのだけれども。まあ、先入観との戦いは常にあることだし、それに逃げずに向き合うことが藤本企画の売りかもしれない。

ところで、藤本企画の第一回公演はこの「魂込め」であり、その再演(今回)が第三回公演。間に、今年4月の第二回公演「THEいじめ」(作・演出:藤本聡)がはさまっている。両国シアターXで、4/19〜22。死刑制度、いじめを扱い、1999年に北区つか劇団で上演したものの大幅改定再演だったという。

この「魂込め」(まぶいぐみ)は、沖縄を舞台とし、沖縄の問題や教科書問題が扱われている。藤本さん自身、教科書問題には関心を持っているようだ。ただ、意図的にそれを表そうとしたというよりは、役者に韓国出身のものがいるため、たまたま現在、話題となっているものを避けて通れないだろう、というぐらい位置付けらしい。当然、再演に際しての改定部分である。

『時事ネタ』は避ける劇団も多いが、「時代と対峙する」ことをかなり意識している藤本さんであり、熱い芝居を作りあげている。

ところで、稽古を見ていて思った。セリフはかなりつか調である。いい回しや身体の使い方もつか調。熱い。口立てでセリフを入れていくのも同じ。目に力のあるいい役者がそろっている(写真参照)。特に金、小木、馬場らは将来を期待させるものがある。一見の価値はあるよ。

ピアノや琉球音楽、琉球舞踊を織り交ぜた演出も興味深い。果たして、2時間を通した作品として、どのような仕上がりになっているのか、楽しみであり、また、期待したい。8月2日から5日まで(5日はマチネのみ)、駒場アゴラ劇場にて。

金泰希

金泰希&丸山昌子

 

 

 

 

公演情報などの詳細は
藤本企画ホームページ

取材:週刊FSTAGE編集部 神保正則

◆◆◆観劇レポート◆◆◆


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