1989年 ペーパーカンパニー「広島に原爆を落とす日」本多劇場
つかこうへいの代表作でもあり、1979年の初演以来、固く封印されていた作品でもあった「広島に原爆を落とす日」は、80年代を通じて「幻の舞台」と言われていた。
が、実は「幻」だったのは東京だけであり、関西では新感線やMOPなどが上演していた。いったいどういう経緯で台本を手にいれたのか不思議。戯曲は出版されていない。噂では、初演のときのスタッフが持っていた書き込みだらけの台本がコピーされ出回っていたとか・・・。
1989年12月、時の小劇場演劇スター・筧利夫や池田成志を集めたプロデュース公演が行われた。作品として選ばれたのが「広島に原爆を落とす日」だ。構成・演出は「市堂起立」。これは、ある意味匿名。人気劇団「青い鳥」が集団制作のペンネームとして「市堂令」としていたものを拝借した。
この公演、それほど前宣伝がなかったと記憶しているがどうだろうか。とにかく、公演が始まってから情報が伝わってきたのだから。とんでもないものが行われている、と。あわてて当日券にならびに行くと長蛇の列。どう考えても入場は不可能。しかし、これを見逃したら演劇史は語れない、とか真剣に思ったので(当時、そんなことを語る筋合いはなかったが)、本多劇場の階段で不審な客がいないかと目を凝らした・・・チケット余ってる客を探したのだ。当時はネット転売などなかったのだから。・・・無事、見ることができました。すごいものを見たって感じ。役者はまあ、いっぱいいっぱいでしたが。
キャストは下記。当時は何も知らなかったが、この公演を企画したのは岡村俊一という人で、市堂起立はマキノノゾミという人らしい。とりあえずメモした。演劇界の要注意人物だという予感がしたから。
その後、これに匹敵するような刺激的な企画は生まれていない。
もしかすると、このとき「劇団からプロデュースへ」という劇作の流れのトビラが開かれたのかもしれない・・・。
役名 | つかこうへい事務所 | ペーパーカンパニー | RUP |
上演年 | 1979 | 1989 | 1997 |
ディープ山崎 | 風間杜夫 | 池田成志 | 稲垣吾郎 |
夏枝 | かとうかずこ | 篠原伸子 | 緒川たまき |
重宗貴一郎 | 加藤健一 | 羽場裕一 | こぐれ修 |
ヒトラー | 加藤健一 | 加納幸和 | 山崎銀之丞 |
兵士 | 平田満 | 筧利夫 | 春田純一 |
兵士 | 加藤健一 | 杉山良一 | 山崎銀之丞 |
兵士 | 石丸謙二郎 | 久松信美 | 河野まさと |
兵士 | 長谷川康夫 | | |
土人 | 角替和枝 | 不明 | 光浦靖子 |
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