大江戸演芸捜査網
〜楽屋口と客席の間で〜

(58) 2003.2.22 ■「落語とWeb、そして私(11)」

「落語が好きで何が悪い!!」

千里家市松(せんりや いちまつ)

「落語が好きで何が悪い!!」

 どうも。全国の大学落研・素人天狗連の公演情報サイト「落語が好きで何が悪い!!」(以下「らくすき」)管理人の千里家市松と申します。「なんでもご自由に書いてください」とのお言葉を頂いたものの、過去の執筆者を眺めてみれば、ネット上でも普段からお世話になっている方々ばかり。そんな中にのこのこと私が出て行って、何を話せば良いのやら・・・という感じですが、とりあえず思いつくままに「らくすき」にまつわる事どもをお話させていただきます。しばらくの間お付き合いください。

●とりあえず自己紹介。

 小学3年生の時に伯父から貸してもらったLPで米朝師匠の「地獄八景亡者戯」を聴いたのがきっかけで落語に興味を持った私ですが、その後母親に連れられて国立文楽劇場で観た大学落研の合同寄席を観て、自然に「落語というのは観て楽しむだけではなく、自分で演じて楽しむもんなんや」と思い込んでしまったようです。残念ながら中学・高校には落研は無かったのですが、大学で念願だった落研に入ってからは案の定舞台のトリコになってしまい、社会人になった今も「落語天狗の会」「泉佐野落語会」などで年に数回、舞台に立たせてもらってます。

●「らくすき」開設のきっかけを。

 これはもう他の落語関連サイト管理者の方も言われているように「他になかったから」に尽きます。私自身は平成12年の春ごろからネットを始めました。学生時代に所属していた「関西大学落語大学」のサイトを作って遊びつつ、ネット上のいろんな落語関連サイトを覗くようになったのですが、大学落研はもちろん、素人の天狗連が思いのほか多い事に気付きました。実際に全国にどれくらいアマチュアで落語に携わっている人々がいて、どれくらいのペースで公演を開いているのか、これを把握できるサイトを何故誰も作っていないのだろう、と思いました。その時は。今になってみれば、「みんな面倒くさいからやらんかってんな」というのが分かるのですが。

 あと、記憶が定かではないのですが、確か「寄席熱目」の掲示板で「アマチュアの公演情報をまとめたサイトを誰か作ってくれへんかな」という書き込みがあったので、「ニーズはあるのだ(少なくとも自分を含めて2名は)。そこに需要があるかぎり、供給するのが私の役目ナノダ!(←?)」と意味無く確信を深めたのは覚えています。

●開設したものの・・・。

 そんなこんなで平成13年の夏に「らくすき」を開設したわけですが、当時は姉のPCを間借りして使わせてもらっていましたので、毎日PCに触れるわけではありませんでした。ですから公演カレンダーは無料のカレンダーページを借りて、基本的に主催者に自由に書き込みしてもらう、という方式をとりました。管理人である私にかかる労力・負担も少なく、出だしも好調だったので「これはいけるな」と思っていたのですが、あっという間に寂れていきました。カレンダーページの使い勝手が悪かったのもひとつの要因ですが、私自身が前述したような理由から日々のチェック作業をまったくできない状態だったのが最も大きな要因ではなかったかと思います。開設した際にいろんなサイトに宣伝してまわった手前、しっかりと運営していきたい気持ちはあるものの、どうして良いか分からずにもてあましていた、というのが正直なところです。このような開店休業の状態が1年ほど続き、結局「らくすき」は一旦休止することにしました。このまま中途半端な状態で放置しておくよりも、看板に偽りのない状態・・・つまり、「全国の大学落研・天狗連の公演情報がきちんと反映されている」サイトを運営できる態勢を整えてからきちんと再開するべきだと思ったのです。

●マイPCで「らくすき」再開。

 昨年の9月にめでたくマイPCを購入し、11月の末に「らくすき」も心機一転、再開いたしました。基本的に私がネット上で集めた公演情報をその都度更新していくことにしました。更新のペースをきちんと保てるか当初は不安もあったのですが、今のところ更新はこまめに出来ていると思います。

 公演情報の取捨選択に関しては、
   (1) アマチュアが一人以上出演している公演を掲載
   (2) 賛助・慰問と思われる公演は省く
上記2点を基本ラインとして考えている程度です。(2)に関しては公演名や会場名を見て勝手に判断しているだけですが・・・。

 いろんな団体のサイトを巡回していると、やはりいくつか気になる点も出てきます。

 まず、公演情報の非常に不親切なものがある点。開場・開演時間はもちろんですが、会場の住所や、簡単なアクセス方法くらいは記載しておかないと、わざわざ世界中から閲覧できるインターネットで情報を公開している意味がないと思います。
もうひとつは、大学落研では退部・卒業などで部員の入れ替わりが常にあるのですが、管理者の引継ぎが行われないままサイトが寂れていくものがままあるという点。せっかく作ったサイトですから、きちんと引継ぎして、各大学の個性をどんどんアピールしていってほしいものです。

・・・などと偉そうなことを言っていても、「らくすき」は皆様から頂く公演情報が頼りです。特に今後はネットで情報を入手しにくい団体の公演情報も掲載していきたいと考えてますので、「この公演も掲載してくれ」とか、どんどんメールを頂ければありがたいです。

● 最後に「私見・アマチュア落語」。

 アマチュア落語のおもしろさとは、素人だからこそ許される自由な発想やアレンジであったり、あるいは玄人はだしの巧さであったりすると思います。それらのおもしろさはもちろん大前提として、もうひとつアマチュア落語は落語界全体を考えた上で大切な役割を担っていると私は考えています。それは「落語の世界へ一般の人を招き入れる重要な入口のひとつになり得る」ということです。  つまり、「落語なんて退屈」「落語は難しい」と思っている人は、例え値段が安くてもよほどの機会がない限りなかなかプロの公演には足を運びません。しかし「知り合いの○○さんが出演する」という理由があれば、気楽に「学芸会感覚」で来てもらえます。それがきっかけとなり一人でも落語に興味を持つ人が増え、プロの公演にも足を運ぶ人が増えれば、こんなにうれしいことはありません(もちろんその学芸会がきっかけで"二度と落語なんて見るかい!"となる可能性もおおいにあるのですが)。落語に対する先入観を少しでも失くす、落語という芸の持つ奥深いおもしろさを100分の1・1000分の1でも良いから感じてもらう、それがアマチュア落語に関わる者の役割だと思います。

「らくすき」を運営しているのは、大学落研や天狗連などの裾野が広がって盛り上がることが落語界全体の隆盛に繋がると信じているからです。一般の人に向けての公演情報発信というのはもちろんですが、このサイトを通して、慢性的な部員不足に悩む大学落研同士、或いは大学落研と社会人団体の交流などのきっかけになればと思っています。
 過去そして現在のプロの噺家さんたちが厳しい修行を重ね、生活をかけて磨き上げてきた「落語」という芸を、あくまでも趣味の範囲で、楽しく気楽にやらせて頂くのですから、ほんの欠片程度でも落語界の発展に役立つような恩返しができるよう、がんばりたいものです。私自身も出来る限り精一杯のことはやっていこうと思っています。

 ごちゃごちゃと好き勝手偉そうに思いつくままに述べてまいりましたが、とりあえず「らくすき」は、青春の輝きを高座に見つけようと日々奮闘する落研部員、来るべき本番に向けて仕事の合間や自宅の風呂の中で必死にネタを繰るアマチュア落語家のみなさん・・・全国の愛すべき落語馬鹿たちを心から応援していきたいと思っています。これからもご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。

(この項ここまで)



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