2004年8月第3週

 いやぁ、アテネの日本勢は燃えてますねぇ! しかし、こう金ばっかりじゃ、銀や銅の方が貴重な感じがしたりして……いや、そんなことはないって。まぁ、韓国で買って来たDVDを観る以外はオリンピックばっかり観ている私ですが、とにかく、やっているのが日本時間で夜だから、酒飲みながら観れるってのはいいですよね。つい気合も入っちゃうってもんです! まだまだ後半も楽しみですね!

 では、先週に引き続き、ソウルの話、っていうか、〈ペ・ドゥナ遭遇篇〉を!

 私が会いたい、初舞台を観たいと切望していたペ・ドゥナは、元々ファッション雑誌のモデルから出発し(身長が171cmある!)、『学校』というテレビドラマで人気になり、その後、映画『リング』の韓国版で、なんと貞子役にあたる役で映画デビュー。『リング』も観ましたけど、やはり2000年の(日本公開は昨年から今年にかけて)『ほえる犬は噛まない』(原題:フランダースの犬)で、私はペ・ドゥナ中毒になってしまったわけです! さらに、韓国で観て、日本の東京国際映画祭でも観た復讐者に憐れみを』(今年のカンヌ映画祭でグランプリを受賞した『オールド・ボーイ』や『JSA』のパク・チャヌク監督作品で、私の2002年度の韓国映画ベストワン!)で、完全にノック・アウト! なんたって、●●させられて、●●●●●●しながら●●●●●んですから(今年、一般公開されるらしいので、ネタバレしないように伏字ですみません)! もちろん、そのシーンだけがいいわけじゃないですけどね。さらに『子猫をお願い』という等身大の女の子たちの、またまた違うタッチの映画(乾坤でもジャージ姿の写真を披露させてもらったチョン・ジェウン監督作品)のナチュラルな演技に魅かれて、最近ではチョン・ジヒョンもシム・ウナも抜いて、韓国で一番お気に入りの女優になった彼女の、初舞台を観れて、しかも、直接会えるっていうんですから(行く前は確実じゃなかったんですけど、絶対会えると信じてましたからね!)、例え2泊3日でも、いえ1泊2日であろうとも、ソウルに行ってましたよ、きっと!

 前置きはこれぐらいにして、運命の8月10日! 私は後でこの日を〈ペ・ドゥナ記念日〉と名付けたんですけど(笑わないで下さい!)、彼女の初舞台『サンデーソウル』を上演している劇場、大学路[テハンノ]の精美所[ジョンミソ]に開演の40分ぐらい前に着き、熊谷さんと二人で近くのコンビニでジュースを買って飲んで待っていました。受付の人も熊谷さんの知り合いで(なんたって演出はパク・グニョンですから)、パンフレットももらい(私は当然、後でもう一冊買いました)、今回の舞台のプロデューサーでもあり、元々舞台女優だったペ・ドゥナのお母さん、キム・ファヨンさんにも紹介してもらって挨拶し(この時点で、公演が終わってから一緒に飲みに行くことが確定しました!)、招待してもらったチケットで開演ちょっと前に劇場の中に入ったんですが、ここがまた、ビルの一階と二階をぶち抜いただけのコンクリートや鉄骨剥き出しの解体途中のような空間で、いっぺんで気に入ってしまい、期待は高まるばかり! しかも、最初に案内された席はちょっと後ろの方だったんですが(何しろ満員ですから)、ペ・ドゥナママが指示してくれたらしく、開演直前に観やすい前の方の真ん中の席に換えてくれたんです。先週も書きましたが、みんながみんな、私とペ・ドゥナの出会いを祝福してくれているんじゃないかと思えて、うれしかったですねぇ! すみませんね、ホント、脳天気で、ハハハ!

 さて、芝居のタイトルにもなっている『サンデーソウル』というのは、70年代から80年代にかけて韓国で人気のあった成人向けの週刊誌の名前で、物語と直接関係はないんですけど、つまり、その時代の一般大衆の姿を描いているというわけで、ペ・ドゥナは、食堂で働きながら、そこに来るタクシー運転手に身体を売って、田舎にお金を送っているという女の子の役をやっていました。ちなみに脚本は共同脚本で、原案はパク・チャヌク監督です。彼女は、最後には、同じような境遇というか、その社会から阻害されて絶望した男たち二人と一緒に飛び降り自殺をしてしまいます……というような話だったと思うんですけど、間違ってたら、ごめんなさいです。まだ、パンフレット全部訳してないんで。まぁ、台詞の細かいところは理解出来ないんで、観客たちが笑っているところで笑えなかったりして(結構、暗い話なのに、笑うところは笑ってるんですよ)、私はすべて真剣に観入ってしまったんですが、パク・グニョンの演出はなかなか柔軟性があって、やっぱり好きですねぇ。もちろん、初舞台とは思えない、っていうか、舞台でもナチュラルさをまったく失わないペ・ドゥナの魅力には、さらに惚れ込んでしまったわけですが、特にオープニング、暗闇の中で、後ろ向きの彼女がゆっくり振り向きながら、大きな目を見開いて、こちらに顔を見せるシーンは、ゾクゾクして感動に打ち震えてしまいました! 他の出演者で、主役の一人の青年の顔はどこかで観たことがあるなぁ、と思っていたんですが、なんと私の大好きなキム・ギドク監督(『悪い男』は今のところ、今年のベストワン! DVDも出ました! もちろん、買いました!)の『受取人不明』(これも今年一般公開される予定)の主役の三人の若者のうちの一人、キム・ヨンミンだったんです。いやぁ、彼の舞台も観れるとは! 他に、今年の3月にソウルに行った時に観たパク・グニョン作・演出の『三銃士』にも出ていたコ・スヒ(『ほえる犬は噛まない』でもペ・ドゥナと共演)も新興宗教の教祖役で、巨体を揺らして存在感を示していましたし、公演を観る前にナクサンガーデンで会ったチェ・ジョンウ氏は『KT』や『永遠の片想い』にも出ているベテラン役者、といろいろ魅力的な役者がたくさん出ていました。

 そして、公演終了後、ロビーでペ・ドゥナママにペ・ドゥナに引き合わされて軽く挨拶をした後、日本と同じように、客人は出演者たちより先に飲み屋に行っているというわけで、近くの、大学路の劇場で公演を終えた役者たちがよく飲みに来る“円卓の騎士[ウォンタゲ キサ]”という店(大学路で公演している舞台のビデオが上映されていて、店の中は役者たちのポラロイド写真がいっぱい! 私もペ・ドゥナママと一緒に撮られたので、行く機会のある人は探してみて!)で、ドキドキしながらペ・ドゥナの到来を待っていました。

 すると、しばらくして、来ましたよ、ペ・ドゥナが! もう、最初は熊谷さんに通訳してもらっていろいろ話し、日本からのおみやげ(温泉の入浴剤と桜染めの携帯ストラップ)や私の戯曲集をプレゼントし、差し入れの球磨焼酎(日本ではそういう習慣があるんだと熊谷さんが通訳してくれたら、打ち上げの日にみんなで飲むといってくれました)や雷おこしを渡すなど、熊谷さんも苦笑するほど、完全にただのミーハーのファンになってましたね! すると、ペ・ドゥナママが気を使って、「パンフレットやポスター(買ったんです!)を出しなさい」といってくれたので、わざわざ持参したペンを出してサインをしてもらいました。日本語の勉強をしているペ・ドゥナは、日本語で「ありがとうございます」とも書いてくれました。調子に乗った私は、彼女が出演して日本で公開された映画はすべて観ているという話をしたついでに、前の日に“MUSIC LAND”で買っておいた『復讐者に憐れみを』と『子猫をお願い』の韓国版DVDを取り出し、それにもサインをしてもらいました! この時、その席には、3月に『男子衝動』を観た時には会えなかったチョウ・ガンファ氏や、大学路で上演中のイ・マニ氏作の舞台『灯、ちょっと消して下さい』に出演している女優のパク・ユミル、熊谷氏の友人の役者チョウ・トクチェらがいたんですが、私は完全に、一人、ペ・ドゥナとの世界に入っていましたね!

 ペ・ドゥナとは、その後、直接、カタコトの韓国語や英語、時に日本語も交えていろいろ話しました。彼女は今度、日本映画(山下敦弘監督作品『ブルハザウルス17』)に出演するとかで、9月から東京にロケに行くといってたので、私も「東京に戻れれば、陣中見舞い(熊谷さんによれば、韓国語では「慰問」だそうです)に行くよ」といったのですが、どうも9月は忙しくて東京に行けそうもなくなりました。でも、その後もいくつかの映画(『TUBE』や『復讐者に憐れみを』)の公開に合わせて、日本に来る予定もあるそうなので、いつか日本で再会出来るでしょう! 彼女は、翌日も舞台があるので先に帰ることになり(ペ・ドゥナママは残ってました)、最後に私も、「いつか、あなたのために作品を書くので、ぜひ一緒に舞台をやりましょう!」と、一応、演劇人らしく締めくくり、仲良く写真を撮って握手をして、見送りました。

 まぁ、彼女が帰った後も、ペ・ドゥナママと彼女についていろいろ話したんですが、ペ・ドゥナママは、彼女には女の子のファンが多く、男の人にはあまり人気がないようなので心配だ、といってましたし、日本でも活躍してほしいんだけど、ファンもマニアックなファンが多いらしく、やはり日本から彼女の舞台を観に来た女性のファンが、終演後、彼女に会った途端に泣き出してびっくりした、ともいってました。まぁ、日本の、韓国スターの女性ファンは、ヨン様やイ・ビョンホンに会っても泣き出しますからねぇ。いえ、私はペ・ドゥナに会えたからといって泣き出したりはしませんでしたよ。ただ、夢のような時間だったことは、確かですね!

 というわけで、さらにペ・ドゥナママがすべての支払いをしてくれて(ほんと、韓国では誰か一人がまとめて払うんです)、帰った後も我々は店に残り、ようやく落ち着いてチョウ・ガンファ氏と2年前の横浜以来の再会を喜んだり、もう一人の女優パク・ユミルと話をしたりして、その店を出たのが夜中の1時近く。それから、熊谷さんやチョウ・トクチェらと“SCREAN”に行き、明け方近くまで飲み(しかし、韓国に行くとほんとに毎度のことですねぇ)、その後、大学路近くのホテルまで歩いて帰ってひと眠りし、11時30分、仁川空港発のアシアナ航空132便で福岡に帰って来ました。

 とりあえず、2泊3日、実質1日半のソウル報告はこれで終わりですが、お盆休み、神奈川に戻ってからもいろいろあったので、それはまた次週にね!

(2004.8.24)
(つづく)


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