大江戸演芸捜査網
〜楽屋口と客席の間で〜

(71) 2003.7.21 ■国立劇場・図書閲覧室


国立劇場に行ってきました。といっても、舞台を見てきたわけではありません。伝統芸能資料館の2階、図書閲覧室に行ってきました。

国立劇場と演芸場、それぞれの建物内に別々にあった図書資料の閲覧室が、今年の3月、伝統芸能資料館の中に合併してオープン、という報道を見て数か月。先日、ようやっと足を運ぶことができました。

以前の演芸関連の図書閲覧室は、演芸場の一階展示室の奥、事務所横にありましたが、狭くてちょっと息苦しさを感じるような空間でした。もう、そんなことはありません。広々として、きれいで、明るく、静かです。ただ、お話を伺ったところによりますと、以前は演芸場と同じ棟にあったので、出演している芸人さんが資料などを調べに来ることもしばしばあったそうなのですが、建物が別になってからはちょっといらっしゃることが少なくなったかな、とのことでした。

今までほとんどなかった開架の資料はかなり増えました。一般向けの演芸・演劇(伝統芸能)関連の図書・雑誌、新着図書、国立劇場主催の公演のパンフレット・筋書など、また文化庁の関連団体などが発行している雑誌類、演芸関連では「落語の友」「季刊藝協」「講談研究」などの、なかなか普通は見ることができない業界誌・紙などの最新号を手にとって見ることができます。

それ以外の書籍や雑誌のバックナンバーなどは、閉架式となり、カード検索の上で資料を特定した上での、請求による閲覧となります。カードの量は演劇・演芸ともに膨大です。たとえば、雑誌「東京かわら版」は昭和50年からそろっています(若干抜けあり)。館外貸出は原則行われていませんが、資料のコピーは可能です。(申し込みの上のセルフ式、一枚30円)

利用しよう、という方にせんえつながらアドバイス。

(1)何の資料を見たいのか、目的をはっきりさせて行ったほうがいい

閉架式の資料の請求は、書庫が遠くなったせいか(階が異なる)、今までに比べて少々時間がかかる、と感じてしまいました。請求した資料が手元に届くまでに、10分程度はかかるでしょうか。ばくぜんと開架資料を手に取るのも面白いですが、膨大な資料をより有効に利用・活用することを考えると、何が見たいのか、そして何を知りたいのかをはっきりさせてから足を運んだほうがいいかもしれません。

(2)開いているのは平日昼間のみ

国立名人会・花形演芸会などのついでに見よう、と考えた方。残念ながら、土・日はお休みです。新装オープンで、そのあたりの変更も期待していたのですが、ちょっと残念でした。定席の前や後に見るのも、開架図書の閲覧は可能になりましたが、閉架図書の請求・閲覧となると、時間的に少し無理が生じるようにも思います。ですから、普通の会社勤めの方や地方在住の方に「こちらに来ればいいですよ」と言い切ってしまうのも、ちょっと気がひけます(わたしも会社を休んで行きました)。サイトで確認したところ、定期休館日を平日にずらしたり、土・日曜に開いている資料室もある(新国立劇場・国立能楽堂など)ようなので、ぜひ、そのあたりを検討していただければ、と思います。

*            *            *

こちらにある資料はあくまで公式なものが中心です。そして、収められた資料は確実に後世に「その時の『今』」として残ってゆくでしょう。それ以外に「今」としてひとりひとりが感じているもの、表現されているものを残してゆくためにはどうすればいいのか、そのためにこちらの資料をどう活用してゆけばいいのか。

そんなことを思いながら館外に出たところ、そぼ降る雨を目の前に、煙草を吸っているYシャツ姿の男性と目が合いました。もちろん、館内は、禁煙です。

■国立劇場・図書閲覧室

東京都千代田区隼町4-1 伝統芸能資料館2階
03-3265-6300(直通)
開室時間:月〜金  10:00〜17:00
うち閉架図書閲覧受付 10:00〜11:30・13:00〜16:30
休室日 :土・日・祝日/伝統情報館休館日・月末整理日・創立記念日〈7月1日〉・夏季・冬季整理期間・年末年始 (詳細はサイトでご確認ください)

日本芸術文化振興会(国立劇場)ホームページ

(この項ここまで)



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