(56) 2003.2.10 ■「落語とWeb、そして私(9)」
『これがホントの兄弟愛?(2)』
畠山泰英(はたけやま・たいえい)
「柳家三太楼のホームページ」世話人
■『柳家三太楼のホームページ』
(承前)
平成十三年は六月の『権太楼まつり』に力を注ぎつつ、九月九日の『柳家三太楼真打昇進披露パーティー』の準備も並行して進め、どちらも大盛況で三太楼の気分も上々。その後は、九月の末から鈴本演芸場を皮切りに怒涛の日本全国お披露目興業と続いたのでした。
志ん朝師匠が亡くなられたのは、その最中のことでした。
<平成十三年十月三日(水)>
志ん朝師匠の訃報はあまりに突然だった。
楽屋もなんともいえないやりきれない思いで満ちていた。
でもお披露目なんだ!
高座に上がれば師匠方とお客席の明るい一体感があった。
いや、みんなで一生懸命そうしてたのかもしれない。
談志師匠が自身のHPでコメントをだしていた。
心のそこから絞りだしたような言葉だった。
師匠権太楼はおかみさんから聞いた後、
だまってニ階に上がり志ん朝師匠のテープを
じっと聴いていたそうだ。みんな悲しんでいた。
とにかくこれからやるしかない。休まずずっと・・・。
十一月には、鈴本演芸場にて初めての定席主任を務めるなど慌しい日々は続いていたようで、十二月はたった一日分だけ書いて平成十三年の日記は終わりました。
<平成十三年十二月三日(月)>
おかげさまで、ほんとうにみなさまのおかげさまで
どうにかこうにか鈴本演芸場での定席初トリを終了。
ありがとうございました。
それにしても毎日飲んだ。
人生の内で一番密度が高く飲んだ。うん、酒はうまいよ。へへ。
で、休む間もなく、ありがたいことにこんどは関西方面公演へ行ってきました。
三重の伊勢神宮、大阪はなんばの「ワッハ上方」、
須磨寺での「須磨寺落語会」(中略)。
さて、三太楼、本日より七日までまた旅でござんす。
どこへ?へへ、ナイショでござんすよ。行って参ります!
まさに旅芸人。
真打となって初めての年が明けて新年。
<平成十三年十一月一日(火)>
皆さま、新年明けましておめでとうございます。
昨年は私にとっても、落語界にとっても、また世界も激動の年でした。
さて、今年は絶対、絶対、いい年にいたしましょうね。
私にとっては二年目のジンクスを振り払って幸せだった
昨年に優る一年にしたいと思っております。
今年もどうぞご贔屓に!
いつも通りのご挨拶周りに一門の新年会を経て、十四日には群馬県大間々の「ながめ余興場」、十八日からは日本を飛び出しネパールへ行ってしまった三太楼。帰国後すぐに旅の報告をしています。
<平成十四年一月二十七日(日)>
ぼくらの常識から見た発展っていうのはまだまだこれからなんだろうけど、
こどもが一生懸命おみやげ売ってたり、その割にはおとなのおとこは失業で、
朝から晩までひとっところになんとなく立ってたり、
「アリ?」って思うこともいっぱいあるんだけどなんか焦ってないんだねぇ、
これもアリなんだとおもう。
ゆっくり、ゆっくり自分のペースでみんなが調和してるんだもの。
・・・と異文化について冷静な分析をしつつ、新真打としての自覚と仕事があるらしく、帰国のその日から地域寄席、名古屋の落語会、池袋演芸場『注文の多い落語会』など、いつになく精力的な三太楼なのでした。それでも、やっぱり一月二十八日については忘れることなく「二十八日はあたいの三十七回目の誕生日なのよ。パチパチパチ!」と書くことは忘れませんでした。
昨年(平成十四年)は、新たに『さの字の会Returns』をスタートさせ、七月には一門の『七夕まつり』、八月の『円朝まつり』と大型イベントに走り回り、九月に真打の披露パーティーから一年を経て手ごたえを感じたようです。
<平成十四年九月九日(月)>
九月九日。
去年の今日は真打のお披露目だった、お台場で。
翌日は台風直撃だったけ。あれから一年……。
いまだに「師匠」って呼ばれる事にちょっと抵抗あるのよね。
自信が足りないんだよね、きっと。
これから先それはずっとあると思うけどね。
でも去年までの自分とは絶対に違う!
それは自信を持って言えるの。
なにかしなきゃ!ってところにいられて、
それが大きな自信をくれたから。
あと髪の色も、髪型も絶対に去年と違うよ(笑)。
この勢いを大切にしていかないとね。
この後は、「とにかく時のたつのが早い!」と言いつつ、当たり前とはいえ落語浸けの日々が続き「あっ」という間に年末を迎えた三太楼でした。
<平成十四年十二月三十日(月)>
とてもよい天気の続く年末。日なたは暖かいですね。
今年はいろんな意味で「始まりの年」でした。
自分自身もそして落語界もね。
偶然ぴたっと重なったから動きがいがあって楽しかった。
春からみっちり支度をした円朝まつりから、
きのうの一門泣き売・りんご売り(笑・わからない方は
誰かに聞いてください)までいろんな遊びをしました。
これを続けていけば自分に"色"が出て来るんだと思います。
ただ落語やってる人じゃだめだもん。
あとは来年は稼がんとなぁ。(笑)
三ちゃんこれで結構浪費家だから。
皆さまどうぞよろしくお願い致しますね。
ではよいお年を!ありがとう!
そして今年。一日から鈴本演芸場の「吉例落語協会初顔見世特別公演」に初出演と幸先のいいスタートでした。
<平成十五年一月一日(水)>
新年明けましておめでとうございます。
早速初詣に行っておみくじ……『凶』だったぜぃ。
ありゃりゃ。でも万事素直が吉とか。
きょうから初席、張り切って参りまする。
今年もどうぞ御贔屓にお願い申し上げます。
ホームページのほうもどうぞ御贔屓に重ねてお願い申し上げます。
最後になってしまいましたけれど、タイトルの「これがホントの兄弟愛?」のことに触れておきますね。実は、と力を入れるほどのこともなく、三太楼と私は畠山家の長男と次男なのでした。
(おしまい)
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