大江戸演芸捜査網
〜楽屋口と客席の間で〜

(34) 2002.05.27 ■漢方ときかん坊(12)


漢方ときかん坊  〜その12〜
「季刊『芸協』その2」

桂 歌助

平成13年8月31日に行う第一回「はなし塚祭り」を、季刊『芸協』の創刊号のトップ記事にしよう、とすぐに意見がまとまり、作業に入りました。協会事務局内には色々な資料が山積みになり、本法寺の「はなし塚」の由来や協会の歩みを調べて原稿にしていきました。が、実は、この祭りの正しい名称が正式に話し合われておりませんでした。正式名称は「はなし塚祭り」「はなし塚祭」「はなし塚まつり」のどれなのか? 本法寺の塚は「はなし塚」が正式な名称ですから、それはそのまま使うとしても「まつり」の表記が正式に決まっておりません。 落語家はしゃべるのが専門で、文書で残す、という意識がないのかもしれません。事務局長と相談の上「はなし塚まつり」と表記しましたが、結局「はなし塚祭り」となりました。

私が原稿を書く。歌若が写真をはめたり、レイアウトしたり、原稿を割り付けたりします。紙面に載せる時は字数の制限を受けますから、こちらは書きっぱなしで、歌若一人でやった編集業務は大変だったと思います。何度も打ち合わせの末、創刊号が出来上がった時には喜びもひとしおでした。

出来上がった創刊号は三笑亭夢太朗編集長、桂文治会長桂歌丸三遊亭小遊三両副会長に見てもらい、最終OKが出て、8月1日に発行できました。出来上がると、後は協会事務員の手で配付です。全ての協会員とお席亭、演芸関係のマスメディアの方には無料送付。寄席にも置き、先着のお客さまには無料贈呈。定期購読も可能です。

ほっとする間もなく、次号の準備です。季刊『芸協』は年4回の発行で、1月、4月、7月、10月、各月の1日に出す予定でしたので、実は、8月の創刊号は一ヶ月遅かったのです。次は10月。トップ記事を何にするかで悩みました。協会の行事が秋にあると良いのですが、 この時期に行われる行事はありません。目玉が何かないかと思っておりましたところ、芸術協会の理事会が9月28日に行われるとのことでした。

内々に真打昇進についてや、寄席の五日制興行の実施などが話し合われるという噂は聞いていましたが、決定したからといって、すべて発表できるというわけではありません。理事会は季刊『芸協』の発行に合わせて開かれているわけではなく、各理事の師匠の一番都合の良い日を選んで行われますから、多分こうなるだろうという形で、予定稿を作っておくしかありません。理事会では、寄席の興行五日制の導入と、平成14年5月に桂デッドボール(現・桂米多朗)橘ノ好圓(現・三遊亭圓馬)、平成14年8月の神田北陽の真打昇進がそれぞれ決定したので、それを原稿にしました。 その時点では襲名等の話は噂でしかありませんでしたから、真打昇進だけの記事になりました。

我々も仕事があり、10月1日の発行予定ということになると、3日間での原稿作成はできません。出来上がった機関誌を夢太朗師匠に見てもらう作業もあります。「少し遅れる事になるでしょう」と夢太朗師匠に了解をとっていた最中の10月1日、落語協会副会長の古今亭志ん朝師匠が亡くなられ、落語芸術協会の事務所はそれへの対応が先で、新聞どころではなくなりました。夢太朗師匠に「10月11日に発行」の段取りを出してもらい、パニックの我々二人は救われました。

多分、これからも、毎年10月号は悩むと思います。

なぜなら、正月号は今年一年の行事等、年頭の話を持ってくることができます。4月号は真打披露が5月にあります。6月の寄席の日もあります。池袋の東京芸術劇場での「芸協まつり」もあります。7月号は「はなし塚祭り」や8月の「にゅうおいらんず」「あろはまんだらーず」「講談の怪談の会」など、各寄席が力を入れた特別興行がありますし、今年は神田北陽の神田山陽襲名披露もあります。10月だけが決まった行事がなく、記事をどうすれば良いか、と、事務局長に相談をした事がありました。一昨年は芸協70周年記念興行が秋に行われましたので、今年はそれに準ずる物を考えてみよう、とおっしゃっていただけました。

昭和5年10月11日、日本芸術協会(落語芸術協会の前身)が設立されました。その時は、神楽坂演芸場・神田花月・白山紅梅亭・麻布十番倶楽部・新宿末廣亭で旗揚興行が行われました(参考:芸協/歴史)。落語芸術協会は、3年後には創立75周年を迎えます。まだ、正式に決まったわけではありませんが「その日に毎年行事を考えよう」と言ってくれております。そういう行事があると、良いと思います。協会内でアイデアを出して、新しい寄席や落語界の目玉になる行事が増えると、お客様も増えると思います。「寄席の日」(現在は、毎年6月の第一月曜日開催)のような催しを、芸術協会だけで、秋にやるようなものになると思います。

毎年定期的に行事をこなすだけでなく、新しい試みをどんどんやっていく落語芸術協会の姿勢を、頼もしく思います。もちろん「芸協ディ」なる物はまだ、私の勝手な想像ですので、いつ、どういう事が行われるか等は理事の方も、まだ、誰も考えていないことです。現時点では、そこのところを、お間違えにならないようにお願いします。

つづく



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