大江戸演芸捜査網
〜楽屋口と客席の間で〜

(12) 2001.08.02 ■《東京かわら版ネット》の目指すもの

《演芸情報東京かわら版ネット》というサイトを立ち上げました。落語・講談・浪曲・漫才など寄席演芸の情報サイトです。

落語好きのメディアプロデューサー・三島太郎氏と、演芸情報サイトを作りたい、ということを話したのが……もう何年前になるでしょうか。おそらく5〜6年ほども前かも知れません。その間、三島さんは何度か会社を移ったりしながら忙しく動き回っていたようですし、ぼくはぼくで、『寄席演芸年鑑』を出しはじめたり、有線放送《演芸かわら版 おもしろい人々》を始めたり、やはり仕事に追われてコンテンツを煮詰めることができませんでした。

しかし、志を持ちつづけていれば、いつか機が熟するときはやってくるものです。数年前に三島さんは独立し(株)フェイバーという会社を起こして社長になりました。会社が軌道に乗ったとおぼしき頃、三島さんから「仕切り直しでやりましょう」というメールが届きました。その頃、ぼくの方もひそかに心に機するところがあって「本気でできる仕事をしたい」と思っていた時期でした(注=ほかの仕事を本気でやっていないという意味ではないですよ)。

それからは、まあまあ、トントン拍子に事が運びました。この7月1日に仮オープン、8月1日から本格的なオープンということになったわけですが、三島さんの落語への情熱と全面的なバックアップがなければ実現は不可能だったでしょう。

さて、「寄席演芸情報」ということでは、ぼくのつくっている情報誌『東京かわら版』は圧倒的なアドバンテージがあります。なにしろ同じようなメディアはほかに一つもないのです(こんな儲からないことをやる酔狂なヤツはいない、ということでもありますが)。加えて、『東京かわら版』は、1974(昭和49)年に井上和明が創刊し、以来演芸ファンとともに四半世紀以上歩んできたという歴史があります。この情報を活用しない手はない、というのが、ぼくと三島さんの共通する認識でした。

そこで、《東京かわら版ネット》のコンセプトを次のように定めました。

1、毎月の『東京かわら版』の情報を全て掲載する。
2、『東京かわら版』の過去の記事を、アーカイブという形で掲載する。
3、加えて、インターネットならではの情報提供を行う。

ちょっとキザに言い換えれば、東京かわら版の「現在」「過去」「未来」を全て盛り込 む、ということです。

個々の項目について詳しく述べていると、長大な文章になってしまいますので、簡単に 申し上げるにとどめておきます。

1は、印刷媒体の『東京かわら版』の記事・情報の全てをネットで読めるようにする、ということです。メインの情報欄である「落語・講談・浪曲」は、サイト上で会名や演者名による検索ができるようなシステムをつくりました。

2について。

『東京かわら版』の過去の記事を、少しずつではありますが、テキスト化して掲載することにより、四半世紀の「演芸の歴史」にアクセス可能になります。読めば、懐かしかったり、面白かったり、新たに何かを発見したりするとともに、演芸資料としても貴重なものになると確信しています。また、1で述べた「今月の記事・情報」は、翌月になれば、「過去の記事・情報」としてアーカイブに収録されます。このようにして情報は蓄積していきます。

3については、いろいろなアイディアを持っています。

テレビやラジオ演芸番組などは、詳しい内容が間際になって決まることも少なくありま せん。印刷媒体ですと、どうしても締切があって、そうした間際の情報や情報の変更に対応できませんが、インターネットではきめ細かい対応をすることが可能です。

「会場データベース」をつくりたいと思っています。演芸会を開いている200ぐらいの会場についてのデータを集めるつもりです。会場への道順や当日の電話番号をアイモードからも検索できるようにしたいと思っています。

視覚障害者にも情報提供を行いたいと考えています。パソコンやインターネットの強みの一つは、「障害者にやさしい」ということでしょう。とりわけ演芸情報はソースが限られているために、多くのお笑い好きの障害者たちは情報に飢えています。そこで彼らに向けての情報発信を、《東京かわら版ネット》の重要な目標の一つと考えて、ぜひ実現していきたいと思っています。

《東京かわら版ネット》を充実したサイトにしていくためには、やらなければならない ことが多くあります。しかしこれは、やりがいのある仕事、だと思っています。例えば10年後にどのぐらいの情報が蓄積されているのか、と考えただけでも、ちょっとワクワクしてきます。

余談ですが、三島さんは社員から「社長の道楽にも困ったものだ」と言われているそう です(^_^;)。そんな悪い社員の鼻をあかしてやるためにも、なんとかこのサイトを発展させたいと思っています。

どうぞ一度、《東京かわら版ネット》を訪れてみてください。

《東京かわら版ネット》

《東京かわら版ネット》管理人&『東京かわら版』編集長 大友浩



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