大江戸演芸捜査網
〜楽屋口と客席の間で〜

(10) 2000.12.25 芸術祭賞決定!ここはひとつ、選評をきちんと読んでみよう(演芸部門)

12月20日、文化庁・芸術祭賞の受賞者が発表になりました。

受賞者については各マスコミで報道されましたし、こちらのトピックスでも報じましたのでもうご存知とは思います。ただ、きちんとした受賞理由・選評についてはなかなか読む機会がないと思いますので、ここに、演芸部門について、それぞれの全文を掲載します。

結果を見ての感想としては、この賞に取り組む熱意に比例した結果になったんじゃないかな?という感じが強いのですが、いかがでしょうか。選評を読んでも、「成果」と「話芸」への評価の違いや、選評の中に出てくる審査員の芸に対する認識、必ずしも一発勝負だけでないと感じさせる評価、「演芸」の範疇など、読み込むといろいろと楽しめます。

見に行った方、この選評はきちんと舞台を評価しているでしょうか?
見ていない方、いっとう図抜けた舞台の様子が見えてきますか?

お暇な方はじっくりどうぞ。

《 演芸部門 》
賞区分受賞者受賞対象制作会社・連絡先等
芸術祭大賞春風亭昇太「古典とわたし2000」の成果(有)ティルト
自作の新作落語で現代の笑いを開拓し、同時に独演会「古典とわたし」シリーズで古典落語にも挑戦を続けてきた実績が、古典二席「壺算」「佃祭」により存分に発揮された。奔放にして的確、創意工夫にとんだパワフルな高座は客席を爆笑と熱気に包み、二席とも古典の骨格・風合をきっちり生かしつつ個性豊かな昇太ヴァージョンを現出、古典の現代的継承に新たなる展望を見せた。
芸術祭優秀賞笑福亭小松「小松のらくだ」の話芸松竹芸能(株)
亡き師松鶴との日々を語るまくらが、単なる回顧談ではなく、本題の世界に無理なく重なり、小松・松鶴・登場人物がスリリングに溶け合うところに「新」骨頂があった。豪放かつ繊細な大阪言葉が正しく駆使され、懐かしい陰影と人恋しさが浮き彫りになった。死骸・死体・死人(しぶと)の使い分けも鮮やかで、生き生きと描かれる<らくだの死>は<らくだの詩>にまで高められてゆくようであった。
芸術祭優秀賞一龍齋貞心「「夢幻抄II」における話芸一龍齋貞心
江戸吉原の名妓・玉菊の悲恋物語を乙女文楽の人形を背景に語った「玉菊灯蘢」にすぐれた成果を見せた。とくにせりふ回しの巧みさが光り、玉菊の悲しみとともに人間的魅力をも浮き彫りにし、聴衆に深い感銘を与えた。
芸術祭優秀賞快楽亭ブラック「快楽亭ブラック毒演会」の成果(株)立川企画
勢いがある。若い観客の反射的な大笑を呼ぶ時代感覚充分のブラックギャグがいい。全身を表現体として駆使するエネルギッシュな動きもいい。こういった特徴が「道具屋ミレニアム2000」「英国密航」で十二分に発揮され、落語の観客層を拡大する先兵としての貴重な働きをしている。今後もより以上に過激な毒演をもって落語界を活性化させることを期待する。
芸術祭新人賞日向 薫日向薫朗読ミュージカル「勝手な娘んさぁとパートVI」の成果劇団ひまわり砂岡事務所
近年、作・演出家の山崎陽子とともに、朗読ミュージカルという新しい舞台芸術ジャンルに挑み続け、楽しく夢のある世界を表現し続けてきた成果が、とりわけ第二部のポエム・ファンタジー「動物たちのおしゃべり」において結実していた。また、第一部の朗読ファンタジー「岸辺の花」も、さらなる可能性が顕著であり、元タカラジェンヌというキャリアを超えて、スタッフとともに新たな表現領域を開拓しつつある姿勢が評価された。
(文化庁ニュースリリース「平成12年度(第55回)芸術祭賞受賞一覧・贈賞理由」より抜粋)



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