2006年10月第1週

 先週の金曜日で、学院の前期の授業が終わった。横浜校は人数が少ないので、1、2年の合同授業で、成績表を渡し、前期の反省と後期への抱負を、みんなの前で発表させた後、2年生はあと実質5ヶ月で卒業、1年生は2年になるのに基礎が出来ているかなどの話をして、その後、全員で教室や廊下、階段の掃除。2年生はさらに、前期の最後の方の授業の、サウンドドラマの録音の終わってない部分の収録を行った。このサウンドドラマの台本は、私が2年ほど前に福岡にいる時に書いたもので、学院の教材として使われているが、福岡にいる時は私が担当していなかったので、自分の作品のサウンドドラマを演出するのは、実質、初めてだ。サウンドドラマの場合は、演出というのか、アニメのように音響監督というのか、よく知らないが、これがなかなか楽しいものだった。

 舞台の演出の場合は、全体を通して見なくてはいけないし、役者に対しても、台詞だけではなく、動きも考えていかないといけないわけだが、サウンドドラマの場合は、声だけなので、かなり違う。台詞を間違えたり、ダメな場合は、何度も録音し直すことが出来るし、一部分だけ、後で差し替えることも出来るのだ。まぁ、編集の時に大変だが、それもなかなか楽しい。なんというか、ゲームをやっている感覚で編集を進められるのだ。台詞の間合いを詰めたり、ボリュームの調整も出来るし、BGMも、後でいろいろ選びながら入れることが出来る。要するに、収録したものを、さらに加工して作っていけるわけだ。映画も確かに編集でいろいろ変わるが、サウンドドラマの場合は、演出というか、編集の作業で、かなり変わってしまうだろう。とはいえ、スタジオにずっと籠っていたら、普段とは違う疲れを感じ、グッタリしてしまったので(やはり、動き回ってる方がいいようだ)、専門的にやりたいとは思わないが、普段はほとんど聞かないラジオドラマとかも、ちょっと聞いてみようかなという気に、少しなった。

 三連休の初日は、横浜校のイベント“ハマフェス・わんだふりゃ2006”があり、私も出勤した。“ハマフェス・わんだふりゃ”というのは、今年の4月にも行われ、ここでも報告したが、同人誌の即売会として有名な、コミックマーケットの簡易版のようなもので、横浜校の学生だけでなく、一般の人も参加して、同人誌を売ることが出来るイベントだ。横浜校では、春と秋の2回、行われている。もちろん、それだけでなく、同時にコスプレ大会も行われる。いや、大会というより、コスプレが好きな人たちが集まって、お互いに写真を撮ったりするのだ。最初の方は、私もおもしろがって、「それ、何のコスプレ?」とか聞いて回っていたが、段々、私のようなおじさんには入り込めない世界になっていったので、なるべくコスプレ会場には近づかないようにした。“ハマフェス・わんだふりゃ”は11時から3時まで開かれ、カレーやおでんなどの出店もあり、片付けをした後は、みんなで軽い打ち上げをし、いつもとは違う横浜校の、楽しい1日を過ごすことが出来た。

 日曜は結局、新装なった東京競馬場に行くこともなく、家で、11月の学院祭でやる1年生の舞台の台本の直しをしていた。学院祭というと思い出すのが、福岡校の最初の年に腎臓結石で倒れたことだが、今年も午前・午後クラス合わせて6チームの発表があり、そのすべてを監修する。作品は、学生たちに夏休みの宿題として書かせたもので(書かせることで、台本の構造や読み方を理解させる)、それをみんなの前でプレゼンさせ(これもアピール力の勉強)、学生たちの人気投票プラス、講師が考えて、選んだ。詳しくはまた改めて報告するが、1作品20分ぐらいで、それが6本。まぁ、出演者も1作品6〜7人と、福岡に比べたら少ないし、時間も短いので、気は楽だ。すでに稽古、というか授業は始まっているが、6チームとも、それぞれ劇団名を付け、団結力はかなり固まっている。なかなかバラエティに富んでいるので、もしお暇でしたら、11月3・4日の横浜校の学院祭、ぜひ観に来て下さいな、って、まだどうなるかわからないけど。また、報告する!

 日曜日の台本直しの合間には、F1、ではなく(すみません、車も運転しないし、まったく興味ないもんで)、TVKで競馬(フジテレビはF1なので、珍しくUHFで午後の全レース中継)と、パ・リーグのプレーオフ第1ステージを観ていた。競馬は、毎日王冠の方は、ダイワメジャーを軸にしたのはよかったのだが(見事1着!)、3着になったローエングリンはまったく買ってなかったので、3連複の馬券は当たらなかった。京都大賞典の方は3連単を買うことにして、フォーメーションの2着3着に、実際に2着3着に来た穴馬のファストタテヤマもトウショウナイトも入れていたのだが(いや、これは実にいい狙い目だった!)、牝馬のスイープトウショウの1着はないだろうと読んでいたので買わず、外れてしまった! 野球の方は、ホークスが前日の完封負けを払拭する猛打爆発で勝って喜び、月曜日もパナマウンガー! の一発で勝って大喜びした! 水曜日からは札幌ドームで日本ハムとの第2ステージだ! すでに1勝のハンデがあるわけだが、札幌でひとつ勝てば福岡ドームに帰れるわけだから、何とか1勝でもして(連勝でもいいけど)、今週末に福岡ドームで優勝を決めて欲しいなぁ!

 さて、先週、報告しておきたいことがあると書いたのは、今年の3月に福岡で上演した韓国現代戯曲ドラマリーディングの『豚とオートバイ』という作品を、大阪の劇団が作者や翻訳者に無断で上演しようとした、ということだ。しかし、実はすでに、『豚とオートバイ』のサイトの制作日誌に翻訳者の熊谷さん自身が事の顛末を書いてくれていたり、fringeのトピックでも紹介されているので、今さら私が書くこともないと思うのだが、この作品を2年半前から気に入り、作者のイ・マニさんにも会いに行き、今年の3月、多くの人たちの協力があって上演することが出来た、演出家の私としては、一言いっておきたいのだ。

 自分が好きな作品、上演したいと思う作品に出会ったら、まず最初に、その作品に、より興味を持つことが、一番なのではないだろうか。もちろん、それを上演するために具体的な企画書を作るなり、上演許可を取るなり、制作的なことも大切だ。だが、演出家としては、まずは、その作品に興味を持ち、その作品のことをもっと知りたいと思うはずだ。そのために、作者のことを調べ、作品についてわからないことを訊いたりしたいと思うのではないだろうか。当然、それが上演許可につながってくると思う。多分、その劇団の演出家は、その作品が好きなのではなく、その作品を上演することの方に、興味が膨らんでしまったのだろう。だから、熊谷さんが求めた企画書にも、演出プランばかり書いてしまうことになったのだと思う。もちろん、私も演出プランは考えるが、具体的なことは、劇場や役者、スタッフ等すべてが決まってからだ。最近の芝居、特に小劇場系がおもしろくないといわれる理由には、もしかすると、こういうことも関係しているのかもしれない。ただ、おもしろければいいとか、楽しんでいればいいとかで、その作品に対する愛を感じない、というやつだ。どうだろうか? 私はやはり、たとえ拙くても、その作品に対する愛や思いが溢れているような舞台が、好きだ。

 話変わって、先週、レイトショーで『イルマーレ』を観てきた。もちろん、韓国版ではなく、今公開している、キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックのリメイク版の方だ。何しろ、韓国版の方は、乾坤一滴プラスで書いている通り、私が一番お気に入りの韓国映画で、10回以上、いやもう15回以上は確実に観ている作品なのだ。当然、リメイク版は早く観に行きたいと思っていて、ちょうど残業の帰り時間とレイトショーのタイミングが合っていたので、観に行ったわけだ。しかし、この映画の元は韓国映画だってこと、知らない人、結構いるみたいだなぁ。

 作品は……いやぁ、いろいろおもしろかった! まず、映画としてはよく出来ていて、韓国版と比べたりしない場合、私は結構、好きな作品だ。キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックという『スピード』のコンビが12年ぶりの共演ということで、二人とも年を取った分、こういうラブ・ストーリーにも似合っていたと思う。ただ、どちらかというと、淡々とした恋愛映画なので、二人の共演で、テンポのある楽しい作品を期待していた人には、期待はずれなのかもしれない。何しろ、イビキをかいて寝ている人もいたからなぁ。ま、レイトショーだから仕事帰りで疲れててってこともあるかもしれないが。

 さて、韓国版を観ている人と、観ていない人というのも、随分感じ方が違うと思う。つまり、韓国版を観ている人は、当然、ストーリーは知っているわけで(おおまかな流れは、ほぼ同じ)、二人の出会いが、韓国版よりもミステリーっぽく作ってあるのだが、それが私にはどうも、あざといという感じに思えてしまったのだ。タイムパラドックスの問題にしても、韓国版ではぼかしていたところを、はっきり出してしまったり(手紙が入ると郵便受けの旗の標識がカタカタ動いたり、急に木が生えるなんて、あり?)、要するに、なんかキチンとし過ぎているのだ。いかにもアメリカ映画らしく、みんな辻褄を合わせているとでもいおうか。いや、本当はそれが当然だと思うけど。韓国映画のアバウトさは、『イルマーレ』の韓国版でも何ヶ所か見られたし。

 しかし、一番の大きな違いは、キアヌ・リーブスがサンドラ・ブロックに会い過ぎるということだ! 会いに行って、好きになるのだ。お互いに恋人がいるのに、熱いキスまでしちゃうんだから! まぁ、それがこのリメイク版のいいところでもあるわけなんだけど(笑)、韓国版ではお互いの手紙だけで惹かれ合うわけで(1回は会うが、一方的な思いだけ)、私はやはり、その方が好きだ! まぁ、ラストはネタバレになるので、って、もう随分してるかもしれないけど、韓国版と明らかに違って、それはそれでいいとは思った。韓国版では、あの後どうなるのか心配だったので(笑)、このラストでは、思わず拍手したくなった! ま、結論としては、どっちもいい映画だけど、韓国版の『イルマーレ』は、韓国映画らしくない映画だけど、やっぱり韓国映画だし、リメイク版の『イルマーレ』は、アメリカ映画らしくない映画だけど、やっぱりアメリカ映画だった、というところかな。もちろん、私が好きなのは、やはり、情緒のある韓国版の方。リメイク版を観た後、また家で観たけど、やっぱり、主演の二人も、映像も音楽も、韓国版の方がいいなぁ! ところで、リメイク版を観た後、韓国版を観ると、どういう感想になるんだろう?

 今週末は、芝居を2本観に行く予定! それと、ちょっと先だが、12月の初めに福岡に行くことに決めた! う〜ん、年末までスケジュールいっぱいだぁ!

(2006.10.10)


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