2005年3月第1週

 まずは、先週の日記の続きから。あ、先々週のことですが。

■2月24日(木)

 代アニ東京校、二日目の特別講義。前日に引き続き、同じ時間の準急電車に乗るも、この日は町田を過ぎても座れず、結局、新宿までラッシュの中、立ちっ放し。ま、それが普通なので仕方がない。

 この日、前日に約束していた通り、授業終了後、東京校の河合先生らと飲むことに。河合先生というのは、実は今から10年前に放映されていた『忍者戦隊カクレンジャー』のニンジャイエロー・セイカイ役の河合秀氏のことで、私も何度も面識があり、彼が福岡に特別講義で来た時も一緒に飲み歩いた仲だ。この日は彼ともう一人、学院の森尾先生と、現在は舞台を中心に活躍している、やはりカクレンジャーのニンジャレッドのサスケ役だった小川輝晃氏と4人で飲むことになった。小川氏とも結構古い付き合いで、彼は流山児★事務所の舞台によく出ているし、福岡でも何回か飲んでいる。

 この日飲んだ場所は、前々日に引き続き、新宿西口の居酒屋。最近増えている、各テーブルが個室風の造りになっているしゃれた店だ。小川氏はFM世田谷で毎週土曜日に放送している『TheaterF』の収録の仕事を終えてからで1時間ほど遅れ。その番組は毎回演劇関係者のゲストとの対談があり、そのいくつかはホームページで聞くことも出来る。学院の話で盛り上がりながら、男3人だと飲むペースも早く、小川氏が来る前にすでにかなり飲んでいたが、小川氏が来てさらに話はいろいろ膨らんでペースも上がり、結局、ボトル2本も空けてしまった(その前にビールとかも飲んでたが)。で、結構酔いどれて新宿から相武台前までの最終電車に間に合わず、雪が降ってきた中、相模大野のタクシー乗り場で30分も待ってタクシーで帰宅。昔はよくあったことだけど、年を取るとつらい。

■2月25日(金)

 東京での仕事、代アニの授業の最終日。この日も結局座れないまま新宿へ。やはり朝の通勤ラッシュは疲れる。東京のサラリーマンが元気ないのは、そのせいなんじゃないかな。

 この日は10何人かしか出席していないクラスもあって驚く。まぁ、もう授業もあと一週間だけで、進路も決まっている卒業する学生たちだからしょうがないのかもしれないが、40人近く出てきているクラスもあるのだから、この差は何だろうと思う。ちなみに東京校の2年生は6クラスだった(福岡校は3クラス)。

 この夜の飲み会は新大久保。土曜日の韓国現代戯曲ドラマリーディングの時には、飲んだり話したりする時間も取れなかった、イ・マニ氏の『豚とオートバイ』の翻訳者・熊谷対世志氏と飲む約束。熊谷氏とは御存知のように昨年8月ペ・ドゥナに会いに行った時にお世話になった仲。3年前のドラマリーディングの後には、パク・グニョン氏やチョウ・ガンファ氏らと鎌倉にも行った

 この日は熊谷氏の友人が一人同席し、3人で飲むことになった。場所は新大久保にある中国延辺料理の店・千里香。延辺というのは、北朝鮮の国境に近い中国の吉林省東部に位置する延辺朝鮮自治州の略称で、朝鮮半島から移り住んだ朝鮮族が多く住んでいて(約40%だとか)、言語も中国語と韓国語を併記している地域のこと。当然、店のメニューもハングルが書いてある。私は初めてだったが、これがまたまたお気に入りの店になってしまった。特に羊肉の串焼きが有名らしいのだが、韓国料理でも中国料理でもなく、まさに“アジア”という感じのする料理なのだ。焼いた肉を独特の香辛料をつけて食べる。この香辛料がクセになる味で、帰りに少しもらってきてしまった。名物の串焼きの中で、牛ケッカンなるものと牛サオなるものも食べる。ケッカンは血管で、サオは当然、ナニである。ケッカンはうまかったが、サオは淡白な味であまりおいしくなかった。テーブルににんにくが置いてあり、これは好きなだけ串に刺して焼いて食べることが出来る。他にもいくつかのお通しを好きなだけ食べることが出来るのは、韓国と同じだ。当然、キムチもある。串焼きの他に、狗肉のサラダを食べる。まさか日本で狗(犬)肉を食べられるとは。韓国焼酎をグイグイやりながら熊谷氏と話していると(店員にも韓国語で話し掛けるので)、酔いも手伝って、ここは韓国なんじゃないかと何度も錯覚した。他にもまだ食べてみたいメニューがいろいろあったので、ぜひまた来ようと思う。店を出た後、熊谷氏は新宿に飲みに行くといったが、私は連日の飲み疲れもあって遠慮し、まっすぐ帰宅。


 というわけで、火曜から金曜まで、仕事の後、毎晩飲み歩いてしまい、さすがに土曜は家でゆっくり休んでました。そうそう、月光舎の角舘章子が2月8日に結婚したので、そのお祝いを届けにちょっと出掛けましたっけ。夜は久しぶりに家族5人揃っての夕食でした。

 で、翌日曜日の早朝、例によって4時起きで6時半羽田発の飛行機に乗り(さすがに機内にサラリーマンの姿はほとんどなく、若者たちのグループ旅行やカップルが多かったですね)、福岡に戻って来て、そのまま、その日は福岡校のオープンキャンパスに出て、外郎売りをやりました。あ、私が実際にやったわけじゃないですけど。ここまでが先々週。


 さて先週は、学院の一年間の授業の最終週で、1年生の戯曲実践の発表のためのダメ出しをしたり、2年生の映像演技のためにビデオを回したりと、とにかく慌しく過ぎ、金曜日に、無事、授業が終了しました! パチパチパチ! 福岡に来てからの2年間じっくり教えてきて、すごく思い入れのある今年の卒業生ですから、最後の授業も感慨深いものになるかなと思ったのですが、1年生の発表を観るということもあって、なんかバタバタという感じで過ぎてしまい、感傷に耽ってる暇はまったくなかったですね。最後の挨拶の時も拍子抜けで、思わず笑ってしまいましたから。ま、卒業式でググッとくるんでしょうね。

 しかしまぁ、授業が終わった後、自分に「お疲れ様でした!」と、その日は例の天然温泉“天神・ゆの華”に行って疲れを癒して来ようかなと思って着替えなんかも持ってきてたんですが、授業終了日ということもあり、いろいろ残業をしているうちにかなり遅くなり、結局、行くのはやめてしまいました(その後もまだ行ってません、トホホ)。

 土曜日には、夕方、卒業する学生たちが作る文集の原稿を渡しに天神まで出掛け、その帰りに、博多駅前の行きつけの焼き鳥屋“太一”に久しぶりに寄ったんですが、そこで偶然、韓国から観光で来ていた女の子二人連れと仲良くなってしまいました。初め、カウンターのショーケースの中にある焼き鳥を不思議そうに見ながら指差して注文していたので、日本人じゃないな、中国か韓国の人かなと思っていたんですが、思い切って韓国語で話し掛けてみたら、すぐニコニコと応えてきたんです。しかし、焼き鳥はなんていうのかわからず、「モドゥ マシッソヨ」としかいえなかったんですけどね。それでも喜んでくれて、少し話し出し、私が太一自家製のいわしのつみれの串を「ソンムル」といってプレゼントしたら、不思議そうに食べ、換わりにチェジュドで買ってきたというハルモニの小さな置物をくれました。二人はスウォンに住んでいるとかで、スウォンの演劇祭(ク・ナウカが参加したことがある)は知っているという話もし、結局、一緒に写真を撮り(彼女たちも)、メールアドレスを教え、ソウルに行く時は連絡をするという約束をして別れました。太一の店員は、韓国の人も結構来ますよといっていましたが、思わぬところで日韓交流が出来てうれしかったですね。

 そして、日曜日は1年生の海クラスのお別れ会(2年になるとクラス替えでバラバラになるので)に呼ばれ、久しぶりに学生たちと飲み語り合いました(ミカエラの打ち上げ以来かな)。話の内容はともかく(叱咤激励がほとんどでしたが)、そこで、山芋焼酎というのを初めて飲んだんですが、これが普通の芋焼酎よりもドロリとしているというか、なかなかコクがあって美味かったです。あと、黒糖焼酎も飲みましたが、これは前にも何回か飲んだことがあって、これも美味しいですよね。そういえば、このお別れ会、「先生、お酒のおいしいところだそうですよ」と誘われたんでしたっけ。さすが吉富(海クラスの幹事)、私のこと、よく知ってる! おいしそうな日本酒もいろいろありましたが、時間が限られてて飲めませんでした。飲み放題だったんですけどね。

 学院が春休みに入った月曜日は(もちろん職員は出勤してます)、一週間後に迫った卒業式の準備を進め、夜は久しぶりにぽんプラザホールに熊本の劇団0相の公演を観に行きました。劇団0相の女優でもあり制作担当でもある松岡優子さんとは、福岡演劇のひろばのオフ会で何度か会い、今回、劇団0相初の福岡公演ということで案内をいただいていたので、何をおいても駆け付けたわけです。タイトルは『猥々野郎(わいわいやろう)』。6人の女の子が溜まり場にしている部屋が舞台で、そこは覗き部屋サイトもやっていて、人気投票を競ったりしている女の子たちそれぞれの苦悩や思いが語られていく話なんですが、私にはどうもよくわからなかったというか、なじめなかったのが正直な感想です。いや、6人の女の子たちは初めは誰が何だかよくわからないけど、次第に個性が感じられてきて、賑やかな猥々感(?)というのも出てきていたので、こういうのもありだと思うんですが、どうも、ただ普通に普通なのは私[わたし]的にはダメなんですよ。どこかに演劇的な仕掛けが欲しいんだなぁ。女だけの芝居というと、近いところでは暮れの『すぎのとを』を思い出しますが、あれはかなり劇的な構造をしていたし、女優陣もしっかり芝居をしてたから好きなんですが、今回のは「まんま」という感じで、別に演劇じゃなくてもいいんじゃないと思ったんですけどね。普通っぽい芝居って、実はただ普通なだけじゃ成立しなくて、平田オリザのリアルな日常会話的な芝居にしても実はすごく計算されて作られているし、チェルフィッチュの岡田君の芝居にしても、今風の若者言葉や動きをさらに劇的に構築して作っているわけで、ただ普通にやるのと違うってことを、「静かな演劇もどき」や「フツーっぽいエセ演劇」をやってる人たちは知らないんじゃないかと思うんですよ。女の子たちのちょっとエッチな話にしても、なんか軽いだけで、中途半端な感じがしてしまいました。韓国映画の『ディナーの後に』を観て欲しいなぁ。内容も過激でしたが、会話の背景に、きちんと劇的構造がありましたからね。

 個人的に知っている松岡さんに関していえば、いつも会う制作の松岡嬢じゃない、女優としての松岡優子さんを初めて観ることが出来て、なかなかいいじゃんと思いましたけどね。いやぁ、女は化けますねぇ。あ、いい意味でですよ。まぁ、劇団の芝居というのは、継続性のある劇団という活動の意味から考えても、一回だけで見限ったりする気はないので、次回も観る機会があれば行きますよ、0相。女優・松岡優子さんを観に。あともうひとりお気に入りになった女優さんもいたしね。19〜21日の連休には日本劇作家大会もあるし、20日の「九州演劇人サミット」でも観に、熊本まで行きますか!

(2005.3.8)
(つづく)


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