辺りはすっかり秋の気配に包まれて、雨上がりの秋晴れの空が清々しい福岡ですが、やっぱりちょっと風邪気味で、喉が痛い今日この頃です。う〜ん、先週まで授業でやってたミカエラ(12月に卒業公演として発表する、作・高取英の『聖ミカエラ学園漂流記』)の稽古(一応、部分的に作っての発表も終わり、一段落。12月公演の本格的な稽古は11月中頃から再開)で声張り上げすぎたり、なんだかんだと忙しくて疲れて寝不足ってのもあるんでしょうが、今週末の三連休には2ケ月ぶりに神奈川に帰るので、ちょっとはのんびり出来るかな……で、福岡に戻って来たら、10月末の学院祭でやる『Forest of Grecia/4部作』の稽古に集中することになるので、去年のようなことにはならないように用心しながらやっていきますが。
さて、先週、いや、先々週末に「ぽんぷらざホール」で観た、第1回ハイブリット下水劇場と名付けられた公演は、福岡のギャングママMAXと佐賀のバビロニアカンフーマンという劇団が、“戦隊ヒーロー”をテーマに1時間ほどの作品を連続してやるというものでした。
いやぁ、前半はかなり退屈してしまいました。佐賀のバビロニアカンフーマン、通称バビカンの方なんですけどね。美術は小劇場にしてはなかなか凝ってるんですよ(主宰の小牧氏は舞台美術が専門だとか)。お、何が起きるんだろう、って期待感を感じさせてくれる美術なんですけど、結局、それがただの書割的なものになっているだけで全然活きていないのが残念でした。そして何より、台詞が多いんですけど、ま、それはいいとしても、その台詞術がね、みんな同じようなしゃべり方で単調で、表面的にやってるだけみたいな感じで、台詞が心に突き刺さってこない。いや、別に突き刺さらなくてもいいんですけど、何をいいたいの? って感じで進行していくだけなんです。これはねぇ、後半のギャングママと観比べて、よりはっきりしたんですけど、要するに演出がきちんと成立してないってことなんですよ! 演出不在、つまり、役者がただ自分でおもしろおかしく(と思って)やってるだけ、なわけです。演出的なメリハリがないから、見せ場らしきところも盛り上がらない。もう、致命的でしたね。久しぶりに早く終わってくれないかなぁ(いい芝居は、ずっと終わらないでくれ、ですからね)と思いつつ、まさか後半のギャングママもこんなんだったら、悪いけど途中でも絶対帰ろうって、これまた、久しぶりに思いましたもん。美術は良くて、主役の女性の衣装も、色っぽく見せられるはずなのに、見え見えの肌着を下に着けていて、え、これは何? って、興醒め以前に信じられませんでしたもん! ま、これが佐賀の劇団のどれくらいのレベルに位置するのか知りませんが、ちょっと哀しいものがありましたねぇ。
で、終演後にFPAPの高崎氏に「福岡の若手劇団の平均的レベルです」と紹介されたギャングママは、予想を裏切ってくれました。おもしろかったです! いや、内容は他愛ないもんなんですけど(失礼!)、演劇の一番の魅力の(と、私は思っている)役者たちの個性的なキャラクターが生きているんです。脚本がいくら良くても、役者が(それを生かせるかどうかの演出もそうですが)ダメだとおもしろい芝居にならないし、脚本がダメでも、役者が魅せてしまう芝居もある、っていうか多いですもんね。もちろん、いい脚本を、さらに、いい役者が(演出の力もあって)膨らませている舞台を観ることが出来ることほど幸せなことはありませんが。
ギャングママMAXの役者たちは、それぞれのキャラクターを生かしているんです! いい感じで力の抜けた芝居を観せてくれる、これが初舞台だという主役の結城亮氏(ボソッという一言のタイミングがいい)、独特の語り口と表情とあの肉体で圧倒(笑わ)してくれた一ノ宮亜葵嬢、そして何より、私の笑いのツボにぴったりはまってしまった不思議な、それでいて芝居はきちんと出来る(失礼!)キャラの三浦としまる氏(所属は劇団・座”K2T3)など。他の出演者もそれぞれ個性的で、まったく飽きることなく、時々大笑いしながら観ることが出来ました。それは、終わってちょっと話をした、作・演出の光安和幸氏の「今回は演出に専念出来たんです」という言葉にあるように、演出の力もあると思います。もちろん、諸手を挙げて大絶賛というわけではありませんが、これまで福岡で観た福岡の劇団の中では、結構おもしろい方だと思いますよ。また、観に行きたいと思いました。でも、笑いだけっていうのは嫌ですね、っていうか、飽きちゃうんで勘弁して欲しいです。
さて、先週末にも、金・土と2本の公演を観て来ました。これについては、もう私がとやかくいうようなもんじゃなくて、何しろ、ここんところずっと観ているG2プロデュースの『痛くなるまで目に入れろ』(西鉄ホール)と、ク・ナウカの『アンティゴネ』(北九州芸術劇場・中劇場)ですからね。あっちゃこっちゃで劇評が出たり、『アンティゴネ』はこれから東京公演がありますし、2作とも全然違うタイプながらどっちも好きだし、演出も役者もかなりのレベルなんで、いいのは当たり前なんですけど、今回は、学院のかなりの学生たちと一緒に観ることが出来たというのが、内容云々についてより重要なことだったと思います。何しろ、金曜日の午後に、ミカエラのひとまずの学院内発表を終え、さんざんダメ出し、というか、12月に向けてのアドバイスを受けた直後に観た学生が多く、観終わって、自分たちのダメさ加減や甘さを感じた学生も多かったようです。単に自分のやりたいようにやるんじゃなく(やれる子はまだいいんですが)、キャラクターとして生きるということや、全体のリズムやテンポを理解して演じるということなど、なんか偶然にも『痛くなる〜』の作り方にピッタリなことをアドバイスでいってたんですよ。身体の動きとかもね。だから、『痛くなる〜』を観た学生は、私がいったことを理解してくれると思いますよ。いや、翌日の『アンティゴネ』も、ああいう舞台は初めて観た学生がほとんどだったので、かなり衝撃を受けてたようです。特に、男優陣が台詞をいう声がぴったりユニゾンするところなんかね。
2作品とも良かったし、多くの学生たちに観てもらえたことも良かったんですけど、私も嬉しかったことがいくつかありました。
『痛くなる〜』には、陰山泰氏が出てたんですが(最後の台詞には痺れました!)、陰山氏とはそれこそ25年以上前に知り合って、昔はよくお互いに芝居を観たりしてました。で、私は螳螂を解散し、陰山氏はDA・Mを辞めて遊◎機械やテレビで活躍するようになり、疎遠になってたんですが、福岡に来るというので、楽屋に顔を出そうかなと思ったんです。ところが、終演後、ロビーで学生たちと話したり、「福岡演劇のひろば」のオフ会で知り合った新鋭劇作家(?)の宮園嬢らにばったり会ったりしてるうちに、楽屋に行くことも忘れてしまい、学生たちや宮園嬢らとエレベーターに乗り込んだら、なんとそこに偶然、陰山氏がいたんです! 初めは陰山氏もわからなかったようですが(何しろ20年ぶりぐらいでしょうか、私も体型が完全に変態してますから)、「小松杏里だよ」といったら、わぁーっと叫んで抱きついてきてくれたりしたもんだから、周りにいた人たち(特に芝居を観てきた人たち)は、かなり驚いてました! 陰山氏とは、彼もその後人に会うというので、ちょっと立ち話をして、また福岡に来ることがあったら飲もうと約束をし、連絡先を教えて別れましたが、懐かしいと同時に嬉しかったですねぇ! 今の若い役者は知らない人ばかりですが、昔からの知り合いの役者が活躍してるっていうのは嬉しいもんです! 福岡に公演で来たら、なるべく会いたいと思ってます!
そしてさらに、昔からの知り合い、なんていういい方をしたら失礼、というか変ですが、螳螂(といっても、今や知ってるのは30代後半から40代、50代の人でしょうね)で一緒にやってた美加理にも、何年ぶりかで会ったんです! 中野真希やたきいみきにも!
ああ、また長々となってしまったんで、その話はまた来週ということで! なんか、盛り上げといて、また来週なんて、連続ドラマみたいですけど、別に意図してるわけじゃなく、ついつい長くなっちゃうんで……ホント、すんません! 今週は、週末に神奈川に帰る前にもいろいろあるし、神奈川の話もあるだろうし、来週も話題は多そうだ……フーッ!
(2004.10.5)