2002年2月第4週

いゃあ、先週は法事が二つもありまして、1月末からこれで五つ目というわけで、やはり季節の変わり目というのは自然環境だけでなく身体の変化もあり、それに順応出来るかどうかというのが結構生死の境目になったりするんじゃないかと実感致しました。私の大好きな宮澤賢治がいってるように、人が生きるということも自然の中のひとつの現象にすぎないのだということでありましょう。みなさんも季節の変わり目には特に御身大切に。

しかし、それ相応に長生きしたお年寄りがあの世に逝くのは、身内にとっては悲しいことかもしれないけど、何十年も演じ続けてきた人生劇場の幕が下りたというわけで、私としては心を込めて「お疲れ様でした」といいたい。いずれ私たちも逝くんだしね。けど、まだ四十代や五十代の人の訃報を聞くと、なんといっていいか、悔しくてたまらないよぉ。

1月29日に54歳の若さで亡くなったデザイン作家の谷村彰彦氏には、螳螂時代からポスターやチラシのデザインでお世話になり、螳螂十周年のパンフも作ってもらいました。月光舎のチラシも旗揚げ公演からずっとお世話になり、私の三冊の戯曲集の装丁も快く引き受けてくれて、打ち合わせでいつも谷村さんの少年のような笑顔に接しながら含蓄のある話を聞くのが楽しみだったのだけれど、それももう聞けない……。何より、このタイトルにもあるアジア征服の第一弾としての韓国公演も、実は六年ぐらい前から谷村さんに薦められていたもので、谷村さんはアジアの国々との交流が多く、葬儀にもいろいろな国から花輪や弔電が届いていました。その韓国公演がやっと実現し、ポスターのデザインをお願いしようと思っていた矢先の訃報で、ほんとショックでした。韓国公演は谷村さんに捧げるつもりで何としてでも成功させたいと思っとります!

さて、人生苦あれば楽ありで、哀しいこともあったけど、楽しいこともありました♪ これもちょっと出発点としては韓国と関係あるんだけど、私の超のお気に入りの韓国の女優にチョン・ジヒョンという方がおりまして、そのチョン・ジヒョンにクリソツな子が知り合いにいると、かつて螳螂にいて今は劇団道学先生をやっているかんのひとみから聞いたのでした(かんのも今韓国にハマッてます)。それはク・ナウカにいるたきいみきという新人の女優で、去年のク・ナウカの韓国公演では、街を歩けば振り向かれるは、地元の若者たちがわざわざ彼女を見にくるはで大騒ぎだったそうです。

というわけで、さっそくク・ナウカの新人公演『パンドラの匣』の初日にかんのと行ってきたのでした。ク・ナウカは最近月光舎の公演や稽古と重なってたりして御無沙汰だったのですが、旗揚げ公演から観ている大好きなカンパニーで、新人公演とはいえク・ナウカの世界に久々に浸れて満足でした。そして何より、たきいみきです。いやぁ……惚れました! チョン・ジヒョンに似ているかどうかなんてことは関係なく、なんだか小劇場(っていっていいのかな)の女優で久しぶりに「いいなぁ」と思いましたね。御存じのようにク・ナウカはムーバーとスピーカーがいて、彼女はムーバーだったのですが、新人の中でもダントツに輝いてました。特に姿勢(クラシックバレエやフィギィアスケートをやっていたそうです)と目の輝きがいい! あ、もちろん私の感じ方ですが。でも、演出の中野真希(彼も螳螂にいました)も彼女を主役のルルに抜擢したことですしね。公演が終わって四人で近くの居酒屋に飲みに行き、私はたきいみきの日本初お披露目の初日に観れたということを感謝し、運命を感じ、ほとんどミーハーのノリで「ファンクラブを作ろう! 私が会長になる!」などといっていたのですが、そこにまたまたすごいことが起きまして……と、その報告はまた自習、いや次週のお楽しみ!

(2.25.2002)

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