週刊FSTAGE
リレーエッセイ「私とFSTAGE」
リレーエッセイ「私とFSTAGE」vol.35
みやび猫 11.12.1999


ごろうやっこさん、お疲れさま。ごろうやっこさんから、リレーされたみやび猫と言います。FSTAGEは、本当に不思議な出会いがあるところで、ごろうやっこさんとこみたいに、とうとう結婚しちゃい新婚ほやほやってカップルが何組も出来るほどですが、関西在住の私と東京近辺に住んでるごろうやっこさんが知り合うって、やっぱりネットのおかげだなと思います。

私がパソコンを購入したのは、Windows95のブームも一段落した96年の3月。本来、仕事用だったのですが、ずっとniftyをやっている知人 (FCLASSICでのハンドル名がダノンだそうです) の勧めで、恐る恐るネットの世界に足を踏み入れました。小劇場を観るのが好きだったので、迷うことなくFSTAGEへ飛び込んだのですが、初めてモニターに映し出された劇団と公演の一覧には目を見張りました。聞いたこともない劇団名までずらり並んだその膨大な数に圧倒される思いでした。もともと演劇専門誌は少なく、情報への飢えは常のことだったのですが、ここには隔月刊誌では追いつけない鮮度の高い公演内容が満載されていたからです。むさぼるように拾い読みした私は、1週間後には「初めまして」の挨拶もすっ飛ばし、公演の感想を書き込んでいました。忘れもしません、かっぱのドリームブラザーズ「高嶺の花」で、それがFSTAGEデビューでした。

自分の書き込みにレスをもらうのは、とてもうれしいもので、「高嶺の花」へレスつけてもらった感激はいまだに覚えているのですが、ごろうやっこさんから、初めてレスをもらったのは確か、その6月の加藤健一「レンド・ミー・ア・テナー」の時だったと思います。同じ芝居を観ても、他人はこう観るのだ、という違いが新鮮な驚きでした。こういう見方もあったのかと、ごろうやっこさん始めFSTAGEでの発言には、それ以来感心させられっぱなしです。違う意見、感想ほど、自分と他人との違いを思い知らされて興味深いのです。けれど、視点は違うのに、いい芝居はやっぱり皆がいいと思うのも事実で、このあたりがおもしろいところでしょう。

今年、東上した関西の劇団、太陽族、桃園会、MONOなどは、東京でもおおむね好評で、地域性は当然あっても、それが障害とならないことが証明されたようです。ごろうやっこさんの「関西人への偏見」を解くことに、もし私が寄与したとしたら、そして太陽族を観るキッカケのひとつだったとしたら、とてもうれしく思います。 (ご存知のように太陽族の芝居は、関西弁で行われます)

地域性を越えるという利点は、関西でしか東京でしか公演のない劇団の評判をチェックするにも役立ちますが、東京〜大阪と公演する際のいち早い情報が、私には何より助かります。それは、公演内容だけでなく、客席の反応、混み具合、当日券販売の有無、関連グッズの値段、上演時間など多岐にわたります。土・日など2本立で観劇する折は、終演時刻が予想出来、劇場を移動するのに、あるいは待ち合わせに大いに参考になるからです。

FSTAGEの速報に一喜一憂した思い出は尽きませんが「西遊記」の東京公演に出演した鳥居かほりさんが事故のため休演、急遽、保坂エマさんを代役に立てた時も、FSTAGEでそれを知り、えっ誰それって、期待と不安がないまぜになったものです。保坂エマさんは、代役とは思えぬ見事な新感線デビューを果たされたのですが、その時はキメ細かいFSTAGE情報に観劇前からワクワクしたものです。

けれど、新感線関係では「野獣郎見参」で、不正入場した客 (というか犯人) が咎めれ、逃走のために催涙スプレーを噴射、公演中止に追い込まれた事件が、最も強烈でしょう。センセーショナルに扱うだけのマスコミより、しっかり事件の詳細を報告し、その回の延期公演の決定や払い戻しを素早く告示したFSTAGEに強い信頼感を持てたのがその時です。それは、作家の中島かずきさんの要請を受けてのシスオペ・こささんの代理アップという事情もあったのですが。

実際、驚くほど多くの演劇関係者がFSTAGEをご覧になってるようで、青年団、燐光群、プロジェクト・ナビ、NODA・MAP、維新派、遊気舎、桃園会などの作演出家やスタッフ、制作、役者さんの内部からの発言はとても楽しみです。作品の見方へのヒントや、劇中の使用曲の教示、追加公演のお知らせ、生々しい稽古場日記が、芝居を理解するのにどれだけ助けになったかわかりません。演劇は、けっして表現者だけでは成り立たず、それを観る観客の反応、劇場の空気があってこそなのですが、その出会いの興奮が、ここFSTAGEにも引き継がれているのです。

もちろん、オンラインでの会話だけでも成立するFSTAGEですが、オフ会の楽しさはみなさんがおっしゃってるとおり格別です。最初にオフに参加させてもらったのが、さきほどの加藤健一「レンド・ミー・ア・テナー」の時だったのですが、いったいどんな人たちが来るんだろうってドキドキの不安は、見事に5分で霧散していましたね。打てば響く尽きない芝居の話に、初めて会った人たちが、何十年もの知己のように懐かしく感じたのを覚えています。

その時お世話いただいた幹事の方、参加していた人には本当に感謝しています。そのお返しではありませんが、私も共同幹事になってオフ会を開かせてもらっています。本当ならチケットの確保から配布までするらしいのですが、私たちの場合は、たんに日程と宴会場を決めるだけの大雑把な集まりに過ぎません。けれども、できるだけアットホームな感じを心がけてますので、もし機会がありましたら、ぜひ一度ご参加ください。

オフでお会いすると、みなさん驚くほど熱心に芝居をご覧になり、劇団を役者さんを愛していることに驚かされます。東京、九州、四国、岡山、福島、山形という遠方から大阪まで観劇する、その距離をものともしない愛に打たれざるを得ません。みなさんのその愛に励まされ、煽られて、つい次のお芝居のチケットを買ってしまう私です。

それでは、当然大阪オフにも来ていただいたことがあり、東京での新感線オフを今回も企画されているこの方に、次のリレーエッセイを手渡したいと思います。ご存知、逸行さんです。福岡でのオフ開催もありますが、新感線「LOST SEVEN」大阪オフからの引き継ぎを兼ね、東京オフの盛況を祈りつつ、エッセイのリレーもよろしくお願いします。

みやび猫 (CZA00744)
miyabi.nishio@nifty.ne.jp



リレーエッセイ、次は逸行さんです。
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