(17) 2000.06.26 「特集:演劇海 漂流画報」
小劇場系の芝居を観に行くと、必ずと言っていいほどたくさんのチラシの束を渡されます。福岡で芝居を見に行くと、その中に謄写版印刷されたB4二つ折りの「ペーパー」が折り込まれていることがあります。これが「演劇海 漂流画報」。現在31号まで発行されています。内容は、イラスト付きの演劇公演レビュー(地元劇団の公演が多い)を中心に、福岡の演劇事情・役者ウォッチング等々。多少辛口な批評もあったりして、いつもうーんとうならされています。 今回は、この漂流画報の主筆・画工 マヤ北島さんにお話を伺いました。
「いつから発行されているのですか?」
●第一号を出したのが、1997年11月20日でした
「発行しようと思ったきっかけは何ですか?」
●客席の攪拌、かな。
「特定劇団の(≒特定役者の)ファン」から「演劇というジャンル自体のファン」へ引っぱり込もう、というか。芝居を見に来た客に他の劇団の話を聞かせる、というフォーマットはそのためのものなんです。
「発行してから、何か変わったことはありますか?」
●観たことない劇団に興味を持って、見に行ってみてくれる人が少しは現れたんではないかと…数はサッパリつかめませんが。
●悲しいことに、あれを読んでおけば「観なくても大丈夫」というこちらの意図と逆のとらえ方をする人もいるようで。やはり「現場で配布」は崩せませんね。オンライン化もしない予定。現場に来やがれ。
「発行費用は自腹ですか? 稼ぎはあるのですか?」
●基本的に、オール自腹っす。ときどき載ってる、世界的電子網上小劇場の適正価格月報とかザ☆ネリのメンバー募集広告とかは、お金もらってます。印刷費で消えるので黒字には絶対なりませんが、かなり助かります。欄外に書いている「この芝居は観ておけ」みたいなのは、勝手に書いているだけなのでタダです。つーか、頼まれてもいません。でも、これを拾った雑誌の編集さんから声がかかって、『福岡2001』で連載枠がもらえたので、結局「自分広告の自費出版」だったわけですね。あと、私を「メディアの人」とみなして招待券を出してくれるところがボチボチ出てきました。これも「稼ぎ」のうちだな、うん。
「『主筆』という肩書きについて」
●最近はすっかり“新解さん”や“老人力”で有名になっちゃってますが、現代芸術家の赤瀬川原平さんが好きで。彼がかつて『朝日ジャーナル』に『櫻画報』を連載していたとき「主筆」を名乗っていたのがカッコよくて、それを真似してるわけです。ええと、赤瀬川さんを御存知でない方は
☆『櫻画報大全』(新潮文庫)
☆『超芸術トマソン』(ちくま文庫)
などをご一読ください。それで、彼が主筆と名乗ったのはさらにお手本がありまして、それは明治の硬派言論人・宮武外骨なんですね。そりゃもう歯に衣着せぬ人で、『滑稽新聞』の書きっぷりなんて、ほれぼれします。これまた赤瀬川さんの
☆『外骨という人がいた!』(ちくま文庫)
に詳しいので、ご参照のほどを。私が「主筆」を名乗るのは、その二人にあやかろうというわけ。どうにも、名前負けくさいんだけど
「年間何本くらい芝居を観ますか?」
●90本前後をうろうろ。
「福岡の演劇シーンに対して一言」
●こんな言葉知ってるかい「鳥なき里のコウモリ」。
(「すぐれた者がいないところで、つまらない者がいばることのたとえ」という意味だそうです)
●なんか、そのまんま自分にはねかえって来そうな諺ですけどね(笑)。
このペーパーのすばらしさは実際に手に取ってみなければわからないと思います。手に入れたい、見てみたいあなたはいますぐ福岡の劇場に足を運ぶしかありません。演劇は現場でしか楽しめないメディアです。それと同様、現場に足を運ばなければ出会うことのできない「漂流画報」。客席で偶然知り合いに会って、「この前のあの芝居、おもしろかったよ」と話をするような、そんなペーパーです。
なお、福岡の紀伊国屋書店博多座店内には、これまでのバックナンバーが製本されて置かれています。立ち読み専用。持って帰っちゃダメ。また、地元の雑誌「福岡2001」にも、チラシとは別の「漂流画報」が連載されています。
(お詫びと訂正)
以前、博多座紹介のこの欄(10)で「(「漂流画報」に)ホームページもある」と書きましたが、ホームページはありません。「世界的電子網上小劇場」は、別の方が主催されているページです。関係者の方々にご迷惑をおかけしましたことを、この場をお借りして深くお詫びいたします。
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