5月も残すところあと10日。すっかりひと月に1回のペースになってしまった。これじゃ、乾坤月一だ。別に書きたくないわけじゃなく(むしろ、文章を書くのは好きだ)、今は落ち着いて書いている時間がないだけのこと。とにかくハードな日々が続いている。
そんな中、今年のゴールデンウィークは、結構休むことが出来た。3月、4月と怒涛のように過ごして来た身としては、かなり助かった。いや、こういう休みでもないと、とても身がもたない。もう、いい年だし。気持ちは若くても、現実的に身体がね。
最初の3連休(28日は授業がなかったので代休にした)は、2月に亡くなった義母の散骨のために、27、28と義母の故郷である長野県の松本へ行って来た。義母は脳梗塞で倒れる前、田舎に行きたがっていたのだが、叶わなかったため、代わりに行き、故郷に骨を撒いてあげようと思ったのだ。散骨は、特に規制する法律もなく、今は環境に気をつけさえすれば容認されているようだ。私の骨も、一部、韓国と福岡に撒いてもらいたい。本当の故郷である下北沢は、変わり過ぎたから、もういいや。撒くところもないし。
長野へは、子供たちはバイトやクラブ活動で行けないので、妻と二人で行くことになった。朝9時に家を出て、相模湖インターから中央高速に入り、いろいろなサービスエリアに寄りながら(それぞれの名物を見たり食べたりするのは楽しい)、岡谷JCTで長野道に入り、塩尻北インターで降りた。もちろん、すべて妻の運転。そこから、妻のいとこがいる松本市の並柳というところに行った。いとこが義母の両親や兄弟姉妹の墓地も案内してくれることになり、夜も引っ越したばかりのいとこの家に泊めてもらえることになったのだ。
最初にお参りに行った義母の兄弟の墓地は安曇野の山の裾野にあった。義母の生家も安曇野だ。昔から話は聞いていたし、長男は小さい頃に行ったことがあるのだが、私は初めてだった。安曇野は北アルプスの麓にある街で、広々とした平野が広がる(当たり前か)、いいところだ。涼しいし、空気もおいしいと感じる。都会からここに移り住んで来た人も結構いると、夜、いとこの御主人から聞いたが、納得出来る。やる気と最初の資金さえあれば、移り住んで自給自足の生活も出来るだろう。私は、今は両方ともないが、自給自足の生活に憧れてはいる。都会人だからね。もちろん、そんなに甘いもんじゃないということも知っている。ま、いつのことになりますやら。
その後、近くにある義母の両親のお墓に行き、そこに散骨をした。翌日、義母をかわいがってくれたというお姉さんのお墓にも行った。ここ(中山霊園)がすごいところで、ひとつの山の上すべてが広い墓地になっていて、山の斜面にズラーッと墓石が立ち並んでいる様子は圧倒される。現世ではない別の世界に迷い込んだような感じがした。よく香港映画とかで、広大な墓地が出て来ることがあるが、あんな感じ。家に帰ってからGoogle Earthで見たら、空からの写真を見てもすごかった。こういうところは、日本の各地にあるんだろうな。映画を撮る時には、ぜひロケに使いたいと思った。
義母の家の菩提寺は満願寺という、山の中にある寺で、ここにも2日目に行って散骨をしたのだが、駐車場から山の上の方まで、かなりの石段を上がって行くので、上がりきった頃には息が切れていた。こりゃ年寄りには絶対無理だぞと思って、ふと横を見ると、車があった。何のことはない、そこまで行く道路もあったのだ。満願寺の周りはいろいろな樹や花があり、山の上なので、その時点で桜が満開だった。野に咲いているきれいな花は、思わず摘んで持ち帰りたくなるが、ここの樹木や生き物を持ち帰ると三代たたりがある、といわれているので(看板に書いてあった)、断念した。
最初の日の夜、案内してくれた妻のいとこと妻の3人で、『ものぐさ』という松本市内の郷土料理の店で食事をした。そこのコース料理がまた、絶品だった。出て来たのは、地元の旬の野菜の天ぷら(やまうど、たらの芽、こごみ、こしあぶら)に、うどの酢の物、わらびのおひたし、こごみの味噌和え、長いものポテトサラダ、うどの皮のきんぴら、わさび菜、野沢菜、たくあんに、筍とふきと高野豆腐の煮物。そして、信州産の馬刺しと岩魚の塩焼き。車を運転しない私は、地元のそば焼酎「しなの」をそば湯割で飲みながら、おいしい料理を堪能した。そして〆は、当然、信州信濃の手打ちそば。これがまた美味かった。さらにデザートに、りんごのワイン煮が出て来た。これだけ食べて飲んで3人で1万円でお釣りが来るとは、他県から来たということでサービスしてくれたのかもしれないが、あまりの安さに驚いてしまった。また松本に行く機会があったら、絶対行く。現在、まつもと市民芸術館の芸術監督であり、先日、紫綬褒章を受章した串田和美さんもよく食べに来るという。
散骨や墓参をすべて済ませた2日目は、帰る前に、妻に安曇野案内をしてもらい、まずは、妻も小さい頃によく行ったという『大王わさび農場』に行った。ここは、とにかく広いわさび農場で、ここも家に帰ってGoogle Earthで見たら、私たちが観たところよりもさらに大きなわさび田が広がっていた。やはりわさびで有名な伊豆は、私の父方の田舎で、小さい頃によく連れて行かれてわさびを栽培しているところも見たことがあるが、これほどまでに広いわさび田を観たのは初めてだ。わさび田の他にもいろいろ観るところがあり(黒澤明の映画『夢』の水車小屋のシーンのロケ地でもある)、観光客もひっきりなしに来ているが、入場料はタダなのがいい。そこでちょうど昼時だったので、食堂でわさび菜丼とそばのセットを頼み、わさびビールを飲んだ。まさに、わさび三昧だ。わさび菜丼はかなり鼻にツーンと来て心地よかったし、わさびビールはスッキリしていておいしかった。妻は本わさびジュースを飲んだ。これは氷の中にわさびが入っていて、氷が溶けてくると、わさびが広がり、より辛くなってくる。他にもいろいろわさび料理があった。いずれもまぁ、ある意味マニアックな味だったが、わさびの風味は嫌いではないので、すべておいしくいただいた。おみやげも、生わさびにわさび漬け、わさび茶にわさびのかっぱえびせんを買い、家に帰ってからも、しばらくはわさび尽くしが続いた。小松家の中で唯一人、唐辛子の辛さは苦手な次男も、わさびの辛さは大丈夫なので、刺身に生わさびを擂ったものをたくさんつけ、「うまっ!」と喜んで食べていた。わさびについても、ついでに少し勉強したが、なかなか奥が深いということがわかった。
夕方、神奈川に帰る前、安曇野蝶ヶ岳温泉の公共の宿でもある『ほりでーゆ〜四季の郷』に寄り、温泉に入った。ここは日帰り入浴が500円で、北アルプスの山々を観ながら入れる庭園露天風呂があり、安曇野でいろいろ遊んだ後に疲れを取るにはもってこいだ。その後、道の駅(ほりがねの里)に寄って地元の野菜などを買いながら、神奈川に帰って来た。
ゴールデンウィーク後半の5連休(7日の水曜日が通常の休みなので3日から7日まで)は、遠出はしなかった。4日以外は、昼間、家にいて、学校の資料の整理をしたり、教材を作ったり、DVDを観たり、乾坤の原稿を書いたりして(まとめられなかったが)、過ごした。4日の日曜だけ、朝から長男と一緒に出掛けた。行き先は東京競馬場。新装なった東京競馬場にようやく行くことが出来たのだ。今年になって、川崎や大井など地方競馬の競馬場には行ったが、さすがに中央競馬場、久しぶりに観た第一印象は、ただ一言、でかい! ディープインパクトのダービーを観に行った時には、まだスタンドの真ん中辺りが工事中でゴチャゴチャしている感じだったが、全面的に完成してつながったスタンドは、とにかく広い! そして、人が多い! 混んではいたが、幸い、コースに近いスタンドの席を確保することが出来、最終レースまで、そこで観戦した。昼休みに、少し場内を観て回ろうかと思ったが、とにかく広くて、どこをどう観ればいいのかわからないので断念し、いつも食事をとる府中本町駅側の入り口(西門)に近いフードコーナーで、豚骨ラーメンを食べた。競馬の方は割と調子がよく、前半は連戦連勝だったが、後半崩れて、ほぼトントンという収支だった。その日、京都競馬場であった第137回天皇賞は、勝ったアドマイヤジュピタを軸に、3着になったアサクサキングスも入れて3連単も買っていたのだが(他にアイポッパー、ポップロック、ドリームパスポートにトウカイトリック)、メイショウサムソン(2着)をはずしていたのでダメだった。武豊好きの長男は、それまで負け続けだったが、天皇賞だけ当てた。勝ち負けはともかく、広い東京競馬場の鮮やかな緑のターフを、美しいサラブレッドが力強く疾走している姿を観ることが出来ただけで、気分はかなり癒された。そう、芝コースは地方競馬にはないからね。やはり、東京競馬場はいい。ぜひまた行きたい。
5日の子供の日の夜は、義妹夫婦の家にみんなで行き、パーティをし、今年3才になる甥っ子や小学4年生の姪っ子と遊んだ。ウチの家の子供たちの時もそうだったが、はっきりした言葉を覚え始める3歳ぐらいの頃が、一番楽しいし、おもしろい。今まで「ボク」といっていた甥っ子が、何の影響だか、突然「オレ」といい出していて、その似合わなさに、みんなで爆笑した。そういや、ウチの三男はその頃、「オラ」といい出して、私のことをいまだに「父ちゃん」といっている。こりゃ『クレヨンしんちゃん』の影響だな。長男は『ドラえもん』好きだったから、言葉だけは丁寧だ。漫画の影響は大きい。
一般的には連休最後の休みの日の6日の夜には、例によって、スーパー銭湯好きの小松家4人(長男は仕事でNG)で、藤沢にある『湘南喜彩・湯乃市』という銭湯に行った。この日、次男は高座渋谷でバイト、三男は茅ケ崎で高校のバスケの試合があったため、夕方、車で次男のバイト先に行き、その後、藤沢駅で三男と待ち合わせをして行ったのだ(ローカルな話ですいません)。初めて行った『湘南喜彩・湯乃市』は、なかなかよかった。露天風呂はこじんまりとした感じだが入りやすく、炭酸泉という風呂があり、そこに入っていると、ジワーッと全身の隅々まで効いてくる。塩サウナもあり、塩を身体に擦り込んで発汗作用を促すことが出来る。先に三男と一緒に塩サウナに入った次男は、福岡の那珂川清滝で塩サウナに入った時のことを思い出し、三男にいろいろ教えてあげたらしい。ちなみに、塩サウナの時には、足の裏に塩を擦り込むといいと、私も那珂川清滝で教わってから実践している。
5月の学校の方は、授業以外にプロフィール写真の撮影があり、久しぶりにカメラマンの加藤さんに会った。今年は200人近い学生を撮ってもらうので大変だ。延べ8日間もかかる。加藤さんの奥方は、元・螳螂の女優で、加藤さんも今は演劇関係の写真(ポスターやパンフ等)の仕事が多く、芝居もたくさん観ている。最近観た芝居で良かったのは何かと訊くと、断然『焼肉ドラゴン』だといっていた。加藤さんも、本来は、ああいうベタな芝居より、斬新で実験的な作品(野田作品とか)の方が好きということだが、それでも、『焼肉ドラゴン』は良かった、という。しかも、オモニ役をやった太った女優が素晴らしかったというので、スヒのことだと思い、調べたらそうだった。唯一行けそうだった日に長野に行くことになり、観に行けなくなってしまったのがつくづく残念だ。スヒにも悪いことをした。テレビではあるが、NHKの芸術劇場で6月にやるらしいので楽しみに待っていよう。
というわけで、ようやく久しぶりの乾坤をまとめられたが、最近のハードな状況をわかってもらうために、身体が疲れている時になる病気にかかることにした。で、帯状疱疹になった! いや、冗談はともかく、ちょっと前から、どうも頭がチクチク痛いなぁと思っていたら、頭皮が赤くなっていたので皮膚科に行ったら、帯状疱疹だといわれた。雅子さまもなった病気だとかで、医者に「高貴な方がなる病気ですよ」といわれたが、全然笑えなかった。証拠の写真は、三男にそのところを見せたら「キモッ!」といわれたので(こいつは平気でそういうことをいう奴なのだ)、撮るのはやめた。
帯状疱疹は、小さい頃の水疱瘡のウィルスが体内の神経節の中に残っていて、疲れたり、ストレスが溜まったり、年を取ったりすると出て来るそうだ。う〜ん、何十年ぶりかの再会というわけだ。すごい潜伏期間。ただ、1回出て来ると、もう出て来なくなってしまうそうだ。それにしても、今頃出て来るなんて……。もっと疲れていた時もあったろうに。それとも、今、ほんとによっぽど疲れていたのかなぁ。まぁ、年をとって抵抗力が弱まったというのもあるんだろうけど。
そんなこんなの病気になったりしながらも、やることがいっぱいあるし、もちろん授業もあるし、家族のためにも、学生たちのためにも、倒れるわけにはいかないので、気晴らしに今週も競馬をやる。ほんとは芝居も観に行きたいのだけど、時間と体力がねぇ。平日は、今年はほとんど毎日、夜間クラスがあるので行けないし。競馬は、今週末はオークスで、来週はダービー! ほんとは東京競馬場にまた行きたいのだけど、医者にも「休める時にはゆっくり休みなさい」といわれているので、家でIPAT。桜花賞の時は、乾坤でも書いたけど、荒れたからねぇ。オークスの軸は、桜花賞で狙って3着だったソーマジックで、オディールやエアパスカルやブラックエンブレムやマイネレーツェルやレッドアゲートを絡める予定。あと大穴で、名前が気に入ったライムキャンディ。去年のダービーを牝馬で勝ったウオッカと同じタニノギムレット産駒だし。ただ、私ゃ今年のGT全然当たってないから、これみんなはずすといいかもよ。ダービーについては、来週書けたらね。
そうそう、乾坤一滴プラスの方も久しぶりに更新、というか、去年、日本で公開された韓国映画一覧を載せたので、見てみて下さいな。しかし、年々、公開作は減ってるなぁ。そんな中、去年は、地味だけどいい映画がいろいろあった。ベストテンの方は、観てないやつをもう少しDVDで観るまで(全部の9割ぐらい)、しばしのお待ちを。
(2008.5.24)