2005年11月第2週

 エリ女はまぁ、勝つべき馬が勝ったわけで(スイープトウショウ)、まだまだ古馬の方が強かったということですね。でも、これで来年はエアメサイアが勝つのは決まりましたね。だって、去年、スイープトウショウはオークス2着で、秋華賞勝って、エリ女は5着。エアメサイアも、まったく同じく、オークス2着で、秋華賞勝って、エリ女5着でしたからねぇ。早い話ですけど、一応ね。でも、来年、忘れてたりして。

 さて、今週末のGT、マイルチャンピオンシップは私の好きなデュランダルの3連覇がかかっています。池添騎手もエリ女に続いての2週連続GT制覇なるかというところですが、もちろん応援しますよ! しかし、今年は牝馬が強いからなぁ。ダンスインザムードはもちろんだけど、1600だったら、3歳だけどラインクラフトだって強いしね。いろいろ楽しみではあります。しかしまぁ、サンデーサイレンスの血を引いている馬が勝つのは確かでしょう! すみません、軟弱な予想で。ほとんど当たり前ですもんね。で、マイルCSのある20日は、久しぶりに競馬場へ行って馬が走っているのを見て来る予定です。どこへ行くかは……フフフ、って、もうわかってますね。佐賀競馬ですよ。20日、開催してるんです。マイルCSの馬券も売っているそうなのでバッチリです。そういえば、12日の土曜日の佐賀競馬で、10レースの馬単、なんと1.371.580円という高額配当が出たそうです! 地方競馬でも、出るんですねぇ……思い切って狙ってみますか!

 競馬の話で始まってしまいましたが、肝心の演劇の話をしないと……といっても、実は、馬も関係あるんですよ。本物の馬が出て来たんですから、芝居に! あ、マツケンの暴れん坊将軍の白馬じゃありませんよ。ステージに登場したそうですけど。ま、それはともかく、先々週観た芝居の残り2本のうちの1本が、小倉駅北口の広場に作られた特設野外劇場“海の砦”での公演、水族館劇場の『月と篝り火と獣たち』です。水族館劇場は東京の劇団で、1987年から公演していたようですが、残念ながら私は観たことがありませんでした。まぁ、東京の劇団の野外劇を北九州で観ることになるとは思いませんでしたが、サブタイトルに“NOSTALGIA”とあるように、私のようなアングラ世代にとっちゃ、確かに懐かしい世界ではありました。

 5日の夜、学院の土曜待機を終えてから、例によってソニック号で小倉に向かい、11年前に北九州演劇祭で来た当時の面影なんかまったくない(客寄せパフォーマンスをした小倉祇園太鼓の像も2階に移っちゃったし)、でっかい小倉駅の北口に出ても、どっちに行っていいのかわからず、それでも演劇の匂いを感じ取って、まっすぐ進んで行ったら、見えて来ましたよ、水族館劇場と書かれた幟[のぼり]がはためいている、建設現場のイントレで組んだ大きな小屋が! 「大きな小屋」っていうとなんか変ですが、テントではないし、野外劇場というより芝居小屋って感じの大きな建物で、横には櫓[やぐら]が立っていて、隣りにはうどんや酒を売っている露店があり、その周りには灯りが点いた小さなテントがいくつかあってアートっぽくなっていて、辺り一帯はまさに暗闇の中に現出した異空間て感じでしたね。小倉駅の方を見るとネオン輝く高層ビルや駅舎が見え、小屋の向こうには小倉港の海が広がり、もうそれだけでワクワクしてしまいました。開演を待っていると、福岡演劇のひろばのオフ会で会った劇衆南組の南新地さんと会いました。南さんは、以前、福岡の劇衆上海素麺工場という劇団にいたんですが、今回の公演にそこの座長である支那海東さんがゲストで出ているということで観に来たそうで、公演が終わっての宴会で、南さんに支那海東さんを紹介してもらいました。支那海東さんは、70年代に状況劇場にいた人で、やはり、この公演の出演者の中でも異彩を放ってましたね。ていうより、なんか割とまともな芝居をする人が多い中で(これがどうも、私には気に入らなかったんですが)、しっかりアングラ芝居をしてくれていて、うれしかったです! ちょっと唐さんに似てるなぁとも思いましたけどね。

 芝居の方は、櫓と小屋の間の広場での、オープニングの野外劇から始まり、火吹きや火の点いた松明[たいまつ]でのジャグリングがあったり、ゼーロン号という馬も登場するし、生バンドの歌と演奏や、最後には宙乗りもあったりして、雰囲気は次第に盛り上がってきました。それはそれでいいんですけど、私はなんかもうひとつ入り込めない感じがしました。要するに、芝居に迫力がないんですね。歌も長いと思っちゃったし。野外でのオープニングが終わり、ちょうど雨が降ってきた頃、みんな整理番号順に小屋の中に移動。これがまたすごい人数だったもんで、時間のかかったこと、かかったこと。確かに、「せぇの」の掛け声と共に一人3cm移動という、懐かしいテントの客詰めの儀式もありましたが(最近はほとんど椅子席ですからねぇ)、芝居が始まるまでが長くて、手持ち無沙汰でした。仕方がないので、芝居が盛り上がってきた頃か寒かったら飲もうと思って買って来た日本酒のワンカップを飲み出してしまいました。さきいかをつまみにして。ま、おかげで芝居が始まってからは、いい気分で観ることが出来ましたが。しかし、私としては、昔の状況劇場の芝居のように、オープニングからワァーッと持っていって欲しいと思ったんですよね。ギュウギュウ詰めにされて座らされたテントの中で、真っ暗になって音楽がバァーッと高鳴ると、李や唐や根津が登場して掛け声がかかる! そんなのはもう観れないのでしょうか……

 物語を説明していると、さらに長くなりそうだし、脚本自体はあまりおもしろいと思わなかったので、見せ場だけ紹介すると、やはり、一幕のラストに舞台の上から滝のように2屯[トン](ということですが)の水が流れ落ちて来たところでしょうか! 舞台の前には池があり、当然、芝居の中でもボッチャンボッチャン飛び込むので、一番前の席の人にはビニールが用意されていて、水を被りそうになったら、それで防御するわけですが、3列目に座れた私のところにも水がかかってきました。でも、アングラですからね。そんなのは喜んで浴びました。

 装置や仕掛けもすごいし、馬だって頑張ってるんだけど(いや、別に走ったり演技をするわけじゃなく、ただ牽かれていただけでしたが)、とにかく不満だったのは、役者たちの演技がねぇ、なんか普通なんですよ。あんまり迫力も感じないし。やっぱり徹底的にアングラ芝居して欲しかったなぁ、支那海東さんのように! いやぁ、紅テント(状況劇場)の怪物役者たちはすごかったですよねぇ! 根津だって、ひたすらカッコよかったし! ま、比べちゃいけないんでしょうけど……その中で、私がお気に入りになったのは、鏡野有栖。カガミノアリスだそうです。ちょっと、チェ・ジウに似てると思ったんですけど。まぁ、いつかまた、水族館劇場の公演で会いたいですね。

 脚本はあんまりおもしろくなかったし、役者たちの演技にも不満はあったんですが、私は、とってもいい気分で“海の砦”を後にすることが出来ました。いや、それは公演後の宴会に出て飲んだからというわけじゃありませんよ。傘を持って来てなかったので、小倉駅まで雨に濡れて帰りましたしね。でも、いい気分だったのは、懐かしいアングラの雰囲気に浸ることが出来たからなんです。いや、もちろん、これが本物のアングラじゃないことぐらいわかってます。でも、最近、こういう感じの芝居ないから。あ、GIGAもどっちかっていうと、こっち系ですが、規模が全然違いますからね。しかし、まさか九州に来てアングラの雰囲気に浸れるとは思いませんでしたね。いずれにしても、私の根は、やっぱりアングラなんでしょうか。観終わった後、演技に不満だったのも手伝ってか、徹底したアングラ演劇やりたくなりましたもん! 観たくもなったし。自己満足的演技のつまらない小劇場演劇なんかより、これでもくらえっ! って感じの迫力満点のアングラ芝居、ないかなぁ……あ、蜷川の『天保十二年〜』には、充分その匂いを感じましたけどね。

 う〜ん、競馬と水族館劇場の話でいっぱいになってきてますが、好きだからしょうがないんで、わかって下さいな。で、翌日の6日の昼には、西鉄ホール飛ぶ劇場の『IRON』を観に行って来ました。小倉で東京の劇団を観て、福岡で小倉の劇団を観るというのも変な話ですが。さて、この『IRON』、確かにいい脚本だと思うし(いや、ホントに!)、装置も西鉄ホールにマッチしていた感じだし、装置が動くのもおもしろかったんですが……こちらも、残念ながらいまいち入り込めませんでした。その原因ははっきりしています。これも、役者の演技のせいなんですよ。この乾坤でも何回もいってると思うんですが、私はみんながみんな同じような演技をしている芝居はダメなんです。嫌いというより、気持ち悪くなっちゃうんですよ。だって、人間ってみんな違うじゃないですか。同じだったら気持ち悪いでしょ。表現するにしたって、みんな違ってみんないい、のはずなのに、なんで同じようなしゃべり方したり、同じような演技をするのかって思うわけです。いわゆる高校演劇的な芝居ね。なんていうと、また高校演劇関係者に怒られちゃうかもしれないけど、みんながみんなそうといってるわけじゃありませんからね。要するに、お芝居ってこうですよ、というような、いかにも私はお芝居をしてますよ、っていうような演技のこと。代表的な劇団あるじゃないですか。あそことか、あそことか。ま、それはともかく……いや、飛ぶ劇場の役者たちがみんなそうだといってるわけではなくてですね、ただ、あの脚本のいろいろなキャラクターを生かした個性的な演技を演出出来れば、そして、そのぶつかり合いがあれば、もう少しのめり込むことが出来たんじゃないかと思う、ということなんです。泊氏の演出、仕掛けはおもしろいと思うんですけど、前の『東京物語』にしても、この『IRON』にしても、演技の面に関しては、なんか甘いような気がするのは私だけでしょうか。そうそう、3年前にク・ナウカの宮城聰さんの演出で『IRON』をやったことがあるらしいんですけど、どうだったんでしょうか? 今、改めて観たいと思いますね。

 ででで、いよいよ先週の話。先週も行って来ましたよ、芝居。12日土曜のマチネ。ギンギラ太陽’sの『翼をくださいっ! さらばYS−11』。これは3月にも観たんですけど、今回は“福岡西方沖地震による公演中止リベンジ&東京凱旋公演”ということで、さらには、代アニの今年の3月の卒業生でギンギラに入った石丸明裕と田中侑希の二人の福岡初お目見えということで、観に行ってきました。もう、ギンギラは大好きだしおもしろいのはわかっているので、ちょっと楽しみ方を変えて、客席の方も見てました。今回、代アニからも1年生が多数、初めてギンギラの芝居に触れたわけなんですが、みんな喜んでましたねぇ。終わって、よかった、よかったの連発。一般の観客も結構初めての人もいたんじゃないでしょうか。なんでも、東京公演の取材ドキュメントがテレビで放映されてから(私も偶然見て、あわててビデオ録画しました)、すぐチケットが売り切れになったそうです。卒業生の二人も、佐賀の気球と牛になって、しっかり舞台に立ってました。石丸は、客入れ時のバス軍団の中にもいました。しかし、西鉄ホールに、ついこの間まで教えていた卒業生が出ているなんて(東京ではパルコですし)、ホントうれしかったですねぇ。失敗するなよという心配と共に、しっかり演じている姿に感動してしまいました。親心ですねぇ。ま、案の定、牛役の田中の方は、客席から舞台に上がる時に靴が脱げて客席の方に落ちてしまい、そのまま最後まで靴を履かないまま芝居を続けていましたが(笑)。芝居は同じですが、役者たちも観せどころの芝居にさらに磨きがかかった感じで、3月に観た時より確実に良くなって、感動も盛り上がっていましたね。東京公演で自信をつけたっていうのもあると思います。しかし、これがパルコ劇場で、東京の観客相手に行われただなんて、ホント痛快な感じがしますね。来年、あるいは、再来年にはきっとまたパルコ劇場での公演があるでしょう。その時には、絶対みんなと渋谷で一緒に飲みたいですね!

 というわけで、飛ぶ劇場の『IRON』とギンギラの公演については駆け足で紹介した感じですが、この2劇団は、東京の演劇関係者からもしっかり認められているので、これからがさらに楽しみです!

 さて、来週は……佐賀競馬のことと、そうそう、ギンギラに入った二人と同じく、今年3月の代アニ福岡校の卒業生で、なんとすでにTBSラジオで30分のソロパーソナリティのレギュラー番組も持ってしまったという子がいるんで、紹介しましょう! この乾坤にも何回か登場してましたね、酒井香奈子は!

(2005.11.16)
(つづく)


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