2004年12月第2週

 いやぁ、先週、大変なことがあったんですよぉ! 私が学院で使っていたパソコンのハードディスクが、な、なんとクラッシュしてしまいまして、つまり、この2年間にいろいろ入力して保存していた学院関係やメールのデータが、すべて消滅してしまったわけです! ハッハッハッ……って、もう自虐的な笑いしか出ないぐらいにショックでした! IBMの黒いノートパソコンだったんですが、他の先生方でも同じパソコンで壊れた人が出てきているぐらいに、パソコン自体の寿命だったらしいんですけどね。気をつけていればよかったんですけど、突然、フリーズして、ウンともスンともいわなくなったので、仕方なく、スイッチを切り(ここまでは、今までも何回もありました)、その後、しばらくしてスイッチを入れたら、カタカタカタカタ、ギーギーギーギー音がして、それ以降、起動してもハードディスクを読み込まなくなってしまったわけです。今のところは、ミカエラのことばかりなので大丈夫なんですが(ミカエラ関係の台本や香盤表や諸々の資料はフロッピーに保存していたので助かりました!)、これからいろいろ、「あ、あれもない!」「これも消えてる!」って……ああ、考えただけでも恐ろしいことが起こりそうです。まぁ、長年パソコンを使ってる人にとっては当たり前のことなんでしょうけど、大切なデータはハードディスクじゃなく、ちゃんと別にバックアップしとかなきゃいけないということを、身をもって知りました。過去はすべて捨てて、一から出直しです、トホホ……

 さて、気を取り直して、というか、楽しいこともいろいろありました。現在、あと一週間後に迫った『聖ミカエラ学園漂流記』の稽古と共に、衣装や小道具の打ち合わせや準備、装置作りなどを進めているんですが、タタキはねぇ、やはり学生は慣れてなくて、ちょっと危なっかしい(計ってやってるはずなのに材が同じ長さに切れてなかったり、鉄ノコの歯が折れたり、ペンキを塗るのにベタベタ塗り過ぎて足りるはずのが足りなくなったり、まぁいろいろ……)んで、私が率先してやってます。それがまた、ちょっと楽しいんですよ! 月光舎の時は、他にやることがいっぱいあったし、役者たちが装置を作ったりしてましたから、ほとんど私の出番はなかったんですが、昔から、結構、タタキは好きなんです。てなわけで、自分で図面ひいて、学生が放課後の稽古を終えて帰った夜遅く、ひとり楽しくトントンやったり、ギコギコ切ったりしています! ミカエラの演出も20年ぶりですけど、タタキをやっていると、なんか、螳螂の初期の頃、明治大学の学生会館の地下のアトリエでタタキをやっていた頃のことを思い出しました。この楽しみは、今週も続きます! しかし、大変なんですけどね、って、実は、こんなに大掛かりなことをやろうとしたことを、ちょっと後悔してたりして……まあ、今年が最初で最後だと思いますけど。

 ところで、映画の方は、なんとか忙しい合間をぬって、『春夏秋冬そして春』は観て来ました。なんたって、大好きなキム・ギドク監督作品ですからね。前公開作『悪い男』は、もう単純に今年のベストワン候補なんですが、この『春夏秋冬そして春』は、なんというか、なんかいい映画過ぎちゃって、どうしちゃったの、キム・ギドク! って感じでした。いえ、決して悪い意味じゃないんですよ。もう、うっとりするぐらい美しい風景の中で、一人の男の人生を四季に例えて、人間の業を描いているという、単純といえば単純な話なんですが、その表現の仕方がね、やっぱりキム・ギドクで、ドキドキしながら感動してしまうわけです。う〜ん、しかし、キム・ギドクフリークだからこそ、評価が難しい映画ですね。別に彼が仏教に目覚めたとも思えないし、本人がしっかり中年僧として出演しているのも、別に違和感は感じませんでしたしね。ただ、なんでキム・ギドクが出てくるの! って意識して観ると、身体を鍛えているのも、なんかナルシスティックな感じがして嫌ですけど、素朴な雰囲気を持った一人の役者として観る分には(刑期を終えて出て来たっていう設定で坊主頭もぴったりだし)、いいと思う、っていうか、なかなかはまっていると思いますよ。

 もちろん、8月にソウルで、出演している舞台『サンデーソウル』を観た私のお気に入りのキム・ヨンミンも、鋭い目の輝きがさらに増した感じで、よかったですね。そうそう、8月に一緒にソウルに行った熊谷さんが、つい先日も行って来て、再演しているパク・グニョンの代表作『青春礼讃』を観て来たそうなんですが、それに出演していたキム・ヨンミンに、わざわざ私の話をしてサインをもらってきてくれたそうなんです! うれしいなぁ! 私が韓国の芝居を書いた時には(実はもう題材はあるんですが)、ぜひ彼にも出てもらいたいですね!

 で、先週末には、久しぶりに、二日連続で結構飲んでしまいました! まずは、金曜日の夜。西鉄ホールの制作の中村さんと打ち合わせしなきゃいけないことがあり、『聖ミカエラ〜』のチラシも出来たので、それを西鉄ホールに置いてもらうために行ったんですが、ホールでは、12月25・26日に公演する『すぎのとを』の稽古をしてました。それも、日替わりゲストのシーン。つまり、ギンギラ太陽’s主宰の大塚ムネト氏と、クロックアップ・サイリックス主宰の川原武浩氏、非・売れ線系ビーナス主宰の田坂哲郎氏がいたわけです。残念ながら、というか、お楽しみは後にとっておくため、というか、稽古は観ずに、事務所で中村さんや福岡市文化振興財団の人と話をしてたんですが(話の内容は、まだ内緒!)、話も稽古も終わり、大塚さんや、『すぎのとを』の出演者でもあるギンギラの立石義江さんに、『南国から来た寒いヤツ』の御礼をいうためにホールに行ったら、大塚さんに「軽くいきませんか!」と誘われ、いかなる時でも飲みに誘われたのを断ることほど野暮なことはないという信念を持っている私としては、あぁ、明日も忘年会で飲むのになぁ、と思いつつも、「いいですねぇ、いきましょう!」と返事をし、演出の江口カン氏やもう一人のゲストの川原氏、出演者の、ギンギラの立石さんに杉山 英美さん、飛ぶ劇場の内田ゆみさんら、総勢8名で近場の居酒屋に繰り出したわけです。考えてみたら、大塚さんや立石さんとも、飲みながら話すのは初めてでした。で、結局、“軽く”の予定が、家に戻ったのは夜中の3時過ぎでした。まぁ、よくあることです、っていうか、福岡では、これが、“軽く”なんです!

 しかし、大塚さんは楽しい! 飲んで話してても、芝居そのまんま、って感じで、他のギンギラの女優さん二人とのやりとりは、ギンギラの内幕ってこうなの? って楽しい話で、「小松さんが本気にするからやめましょうよぉ!」と立石さんがいっても、大塚さんは一向にやめる気配はなく、英さんこと杉山さんと大いに盛り上がってました。そういえば、立石さんはかぶりものをしてても、すぐわかるんですけど、杉山さんは、素顔で会うと、ギンギラではどんな役をやっていたか全然わからなくて、でも、「あの役です」と聞くと、これが、私が気に入ってた役ばかりで(お母さん役など)、こりゃ、素顔の芝居もちゃんと観なくては、と思いました。飛ぶ劇場の内田さんも不思議な雰囲気を持った方でした。

 で、演出の江口カン氏がこれまた楽しい人で、なんだかんだいいながら、大塚氏が提案した、これからはOLを対象にした下品な芝居を作りたい(でも、きれいなやつ)、というのを受けて、『下品とOL』というユニットを作ろうということになってしまい、その記念写真も撮ってしまいました! これって、私も入ってるんでしょうかねぇ……まぁ、うれしいですけど。

 もう結構飲んだ後、江口氏は、いつも最後にいい話をするんだ、ということで、その日は無理矢理、「バランスは大事だね!」という話で締め括りました。なんかよくわからないかもしれませんが、とにかく、おかしいんですよ。そんな江口氏の演出する舞台『すぎのとを』、すごく楽しみです!

 翌日は結局、かなり酒が残っているまま、昼間は『聖ミカエラ〜』の小道具や音楽を探しに声優科の棚原先生の車であちこち回り、学院にそれを置いた後、夜の6時には、福岡演劇のひろばとアートマネージメントセンターの合同忘年会のために、博多区の店屋町にある瑛琳という中華料理屋に行きました。この時もまだ前日の酒が残っていましたが、久しぶりのおいしい中華料理(山東料理です)と、この店で評判の紹興酒をグイグイいって、酔いが早く回りながらも、大大大満足でした! 飲み放題で、食べ切れないほどの、あの本格的な味のおいしい中華料理で、そうそう、鯛の煮付けが絶品でした! 名物の肉厚の水餃子もおいしかったです! で、一人3.500円は安いっ! ほんとに福岡には、刺身やもつ鍋ばかりじゃなく、うまくて安い店がいろいろ揃ってますね! あ、またこんなこと書くと、妻や友人たちになんかいわれそう……

 おいしい中華料理と、参加者たちとの話に夢中で写真を撮ることも忘れてしまった忘年会ですが、なんと総勢43名の参加という盛況ぶり! 今回は、とても、ここで参加した人たちすべての名前を列挙することは出来ませんが、薙野さんを中心に、いつも福岡演劇のひろばのオフ会に参加している人たちの他に、『弥次さん喜多さん』の時に小倉でお世話になった谷瀬未紀さんにも会えて御礼をいうことが出来ましたし、他に、Selbst(ゼルプスト)というダンス・ユニットの代表でダンサーの宮原一枝さん、劇団GIGAの制作で女優の宮原清美さん、FPAP事務局長の高崎大志さん、劇団ティンカーベルというアマチュアのミュージカル劇団代表の原千波さんらとも、飲みかつ話をすることが出来ました。

 閉会の10時まで、飲みながら席をいろいろ移動しつつ、もちろん、『聖ミカエラ〜』のチラシを配って宣伝しつつ(もう予定に入れてます、といってくれた人もいてうれしかった!)、途中で『聖ミカエラ〜』のことを思い出して衣装班の子と連絡を取ったりしながら、かなりへべれけになり(最初から、結構飛ばしてた上、4時間飲みっ放しですから)、最後は気分よく、みんなで博多一本締めで締めて、お開きになりました。その後、何人かで二次会(?)に行ったようですが、私はいつのまにかみんなとはぐれていて、みんながどこに入ったのかもわからなかったので、しばらくしてタクシーで帰路に着いてしまいました。実際、かなり疲れてて、短い距離のタクシーの中でも寝そうになってしまいました。

 さて、『聖ミカエラ学園漂流記』の方ですが、月曜日には、本番の公演をする博多市民センターを使って素舞台での通し稽古をしてきました。公演は3クラスあるんですが、時間の関係で通しが出来たのは、残念ながら1クラスのみ。そのクラスは、本番の時、時間的にゲネプロが出来ないかもしれないので(去年も最後のクラスはそうでした)、一回でも劇場空間で声を出して動いてもらおうと配慮してのことなんですが、他の2クラスも客席で客観的に観れて、よかったんじゃないでしょうか。ていうか、観ることも勉強になる、ってことをちゃんと学んで欲しいですね。やった側も、観た側も、いろいろ感じたと思いますが、学生たちにしてみれば、500人入る劇場の舞台でやるなんてのは初めての人も多かったと思うので、結構舞い上がっているのか、ミザンがメチャクチャになってしまったり、声が出てなかったりと、いろいろ問題もありました。でも、本番じゃないですからね。一回やって失敗したことを、自覚出来たり、観ることが出来たことで、本番に対する意識を変えてくれればいいわけです。つまり、その日の素舞台での通しで学んだことを、次に生かしてくれればいいと。単に私のダメ出しを聞いて、ということではなく、自分自身で自覚するということが、大切ですね!

 ところで、問題点といえば、劇場の問題がねぇ、いろいろと……まぁ、それは本番までお楽しみに! というか、すでに前にもちょっと書きましたが、規制が多くて……まるで『笑の大学』のように、いろいろ手直ししています! 市民センターですからね、市民のみなさんの劇場ですからね、大切に、大切に使っているんでしょうねぇ。あれもやめてほしい、これもやめてほしい、っていわれて……別に喧嘩する気ないですから、いいんですけどね。やめますけどね。でも、そんなに規制ばかりしてたら、児童劇ぐらいしか出来ないんじゃないですかねぇ……ま、消防署が「心配ない」と許可してくれたんですから、やれることはやっちゃいますけどね!

 というわけで、盛りだくさんで長〜くなってしまった今週ですが、いよいよ20年ぶりの『聖ミカエラ学園漂流記』まで、アト一週間です! お近くの人、ぜひ観に来て下さ〜い! e−Fukuokaのステージ情報にも載ってます!

 あ、そういえば、先週、“妻にも「恐るべき楽天家!」といわれてますし”と書きましたが、厳密には、「恐るべきプラス思考!」といわれたんでした。いや、別に妻にどうこういわれたわけじゃないし、どうでもいいんですけど、ただの楽天家じゃないってことをいいたかったんですっ! なんでも気楽に考える楽天家と、なんでもプラスに考えるのとは違いますからね。『聖ミカエラ〜』のいろんな問題点も、プラス思考で乗り切っていきますよ!

(2004.12.15)
(つづく)


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