2002.05.29
NYの日本人俳優(8)

オン カメラ

 コマーシャルの仕事をした。久し振りの仕事だった。あるファーストフード会社の朝食キャンペーンのコマーシャルで、設定はニューヨークの朝の通勤ラッシュの地下鉄。グランドセントラル駅のSトレインのプラットホームと地下鉄車両を使っての撮影だった。撮影開始が朝7時でその日の撮影が終わったのが午後5時。10時間プラットホームと地下鉄3車両借り切っての撮影だったが、そのレンタル料だけでも莫大な金額だと思う。

 コマーシャルの仕事は普通プリンシパル(主役)とバックグラウンド(エキストラ)に分かれていてそれで出演料も変わってくる。プリンシパルの場合はオーディションで事前に決まるが、バックグラウンドは撮影の前日に直接キャスティングから電話が来るので、その為のスケジュール調節が結構しんどい。しかし映画のバックグラウンドよりもコマーシャルのほうが組合で設定されている最低賃金が高いのと、エキストラでも8時間以上の撮影になってくると賃金が1.5倍 2倍そしと16時間を超えると1時間1日分と時間ごとに上がっていくので貧乏役者にはコマーシャルのエキストラならやるという人もかなりいる。それとまれに、もし自分の顔が画面に映ったりしたらユニオンの規定によりバックグラウンドからプリンシパルに昇格するというラッキーなこともある。そうなるとギャラに莫大な差がでてくるのでやっぱりコマーシャルはおいしい仕事。

 普通コマーシャルのオーディションはエージェントを通してしかこない。エージェントを通してないようなオーディションは99%ユニオン外の仕事なので金にもならないし、またユニオンの役者がユニオン外の仕事をしたら規定違反になって罰則を受けるので気を付けなければいけない。

 エージェントにもコマーシャル、シアター、映画、広告と色々専門職があって、我々役者は各自で専門のエージェンシーと関わりを築かなければならない。中には一つのエージェントに各分野の専門エージェンシーを置いている場合もある。どちらにしろエージェントと関係を築き契約を結ぶのは並大抵の事ではない。

 そんなコマーシャルのオーディションではいつも同じ顔ぶれが揃う。ただ東洋人を探している場合と日本人を探している場合では多少の違いはあるが、日本人を探している場合はニューヨークでがんばっている日本人の役者が勢ぞろいする。そして私もその中の一人だ。

 そんなコマーシャルのエキストラ(バックグラウンド)の仕事が突然はいった。私の役柄は出勤前のビジネスマン。集合が朝9時で私の撮影が終わったのは午後3時、途中1時間の休憩で実質の労働時間は5時間。これでその日のギャラ$275に自前の衣装$17が付いて今日の稼ぎは$289になった。日本円で¥37000弱。貧乏役者には悪くない稼ぎだと思うが…?

(つづく)


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