今年に入って約1ヶ月遅れで、今年最初の乾坤をお送りする。前回からは約2ヶ月ぶりか。ホント、すみません。ま、怒涛のような2ヶ月ではあったが、言い訳しててもしょうがないので、とにかく書き進めよう。その間の、いや、それ以前(中断していた6月から9月の間)の話も、いずれお届けする。
ところで、2月4日で53歳になった。今さら年を隠してもしょうがないので、はっきりいう。誕生日前夜には、d'Theaterの稽古の後(当日は稽古がないので)、飲みに行って祝ってもらった。
しかし、50代というのはどうも中途半端な気がする。以前のタイトルにもなっていた「天命を知る」年代のはずなのだが、今のところ、何を知ったのかわからない。それどころか、無茶苦茶忙しくなっている。このままこの忙しさが続けば、過労死するんじゃないかというぐらいだ。乾坤の更新頻度を見ても明らかだ。まぁ、更新が滞るのは年のせいばかりじゃないだろうし、忙しいのは私に限ったことじゃないかもしれないが、どうも50代というのはよくわからん。世間の50代はどうなんだろう? 義理の妹の旦那は、私よりひとつ上なのだが、50歳で男の子が生まれたから、今、子育ての真っ最中で、なかなかハードそうだ。私の4つ下の弟も、まだ下の男の子は幼稚園だから、これからまだまだ子育てだ。みんな頑張っている。私の場合は、ほぼ子供たちは手がかからなくなったので(一番下の三男が高校2年)、家の方は楽になった。ちょっと寂しい気もするが。もちろん、世間の50代もいろいろな人がいるだろうから一概にはいえないが、どうも50代というのは中途半端な感じがするのだ。ま、こんなことを考えてること私自身が中途半端なことをやっているのかもしれないが。とりあえず、早く60代になりたい。60代に何をしているかなんてわからないが、何となく、日本にいない気がする。そこでのんびりと好きなことをやって……。どこかって? もちろん、韓国。
というわけで、2ヶ月前の前回は、コ・スヒの結婚式のためにソウルに行った話が途中だったが、ちょうど今、彼女が紀伊國屋ホールで芝居に出演している。シス・カンパニーの『えれがんす』だ。今週の土曜日に、妻や結婚式に一緒に行ったメンバーが観に行くのだが、私はd'Theaterの稽古でその日は観に行けず、その後の飲み会にだけ行く。スヒとは、彼女が昨年暮れから稽古でずっと日本に来ている間に、一度飲みに行った。芝居は14日までやっているので、もちろん、それまでに観に行く。
そのスヒの結婚式でソウルに行ったのが10月で、すでに報告しているようにその1ヶ月前にも大人数で行ったのだが、実は今年に入って、1月21日から25日まで、またしてもソウルに行って来た。韓国で日本の戯曲のリーディングが行われ(4回目)、日韓演劇交流センターの委員として、というより、自分でも行きたくて、行った。他にも、パク・クニョンに会って、彼の作品を上演する打ち合わせをしてくるのと、10月に行った時に仁川空港に忘れたスーツ(大したものではないが、母がくれたものだから)を取ってくるという目的もあったが。
ソウル行きは、5ヶ月の間に3回。こんなのは初めてだ。サラリーマンなのに、よく行かせてくれる、いい職場だ。ま、私が日韓演劇交流センターの委員をやっていることもいってあるし、一応、現役の演劇人だし(大したものではないが)、韓国に行くのも、スクールのためになることもあるから、許してくれてるのだろうけど。ホントかな。そういえば、スクールの親会社のある部署の人が暮れにスクールに来て話したら、この乾坤を知っていたのには驚いた。ま、いろいろ調べられてるんだろうな。組織というのは、そういうものだ。これも見てるかな。
さて、スヒの結婚式の話をしてしまおう。
結婚式は、大学路[テハンノ]にある成均館[ソンギュングァン]大学の中にある明倫堂という古い建物の前の庭、つまり、野外で行われた。その日は、スヒの結婚を祝福するかのような晴天で、その青空の下、韓国の伝統式結婚式が執り行われたのだ。その様子は写真を見てもらうとして、こういった伝統的な古式ゆかしい結婚式に立ち会えたということは、参会した人間も幸せな気持ちになれるということを改めて実感した。日本の結婚式も、西洋のウェディングドレスより、やはり文金高島田に羽織袴の神前結婚式の方が、日本人として心に残るんだろうな。ちなみに、私はどっちもやっていないが。
式の途中、スヒと映画で共演した女優のスエがいるのを見つけた。『ファミリー』『ウェディング・キャンペーン』『夏物語』と、彼女の日本公開作品は全部観ている。ミーハーな私は当然サインをもらった。が、写真はダメといわれた。ジャニーズか。他にも、ドラマ『グリーン・ローズ』でファンになったコ・スがいて(パク・クニョンの芝居に出た関係でスヒと友だち)、コ・スは、次々と来るファンたちにサインはするし、写真は一緒に撮ってくれるしで、いい奴だなぁと思った。しかも、素顔は写真で見るよりカッコイイ。ますますファンになった。さらに、6年前に観たペ・ドゥナやスヒが出た芝居『サンデーソウル』にも出ていて、キム・ギドクの映画『受取人不明』や『春夏秋冬そして春』や2008年公開の映画『アドリブ・ナイト』に出ているキム・ヨンミンがいた。地味な役者だが、私は大好きなのだ。前に、クマさんにそのことをいったら、クマさんがサインをもらって来てくれたこともあるくらいなのだ。で、彼とパク・クニョンと3人で写真を撮った。3人も好きな役者たちに会えるなんて、いやぁ、ホントにスヒの結婚式に来てよかった、と思った。スヒ、呼んでくれてありがとう。
式の後は、受付の時にもらった入場券のようなものを持ってレストランに行き、バイキング形式の食事を食べた。これは、伝統式の結婚式でなくても、普通にあるらしい。このバイキングは、いろいろな韓国料理を一度に少しずつ食べられるので(別にたくさん食べても構わないが)、うれしかった。何を食べたかは忘れてしまったが、いろいろ食べた。ホンオフェ[エイの刺身]を食べたのは覚えている。アンモニア臭がきついので、中村さんに「よく食べられるね」といわれたが。しばらくすると、花婿や花嫁や家族の人たちも現れ、挨拶をして回り、同じフロアの一角で一緒に食べた。日本から来た鄭義信さんや『焼肉ドラゴン』の出演者たち、『えれがんす』の関係の人たちもいた。日本の結婚式の食事は、畏まったテーブル席で、大しておいしくもない料理を(いや、おいしいところもあるが)、知らない人と隣り合って食べたりするが、このバイキング形式は、あっちこっち行って食べることも出来るし、気楽な感じで誰とでも話したり出来るので、いいと思った。
食事も終わり、スヒと1月に東京で会う約束をして、成均館[ソンギュングァン]大学を後にした。
成均館[ソンギュングァン]大学は、ヨン様やムン・グニョンが通っていたことでも有名なので、私も、おそらくムン・グニョンも撮ったであろう、正門の前で写真を撮った。
その後、ソウルでまた新たな初体験をして、この10月のソウル行きは(というより、毎回なのだが)、実に充実した旅だったのだが、その話はまた次回。
さてさて、今現在の話もしなければ。
12月から、d'Theaterの3月公演『銀幕迷宮―キネマラビリンス―』の稽古が始まった。公演の詳細は後述するが、この作品は、今から27年前、私が26歳の時に書いたもので(実は、ニューヨークに滞在している時にイメージが膨らんで書き進めた)、初演が83年の5月、劇場は高円寺の明石スタジオ。前に乾坤でも書いたかも知れないが、この『銀幕迷宮』の楽日の翌日、寺山修司さんが亡くなった。この作品の主人公のモデルである川島雄三監督も寺山さんも青森出身で、井伏鱒二訳の「花に嵐のたとえもあるぞ、サヨナラだけが人生だ」の名文句は、川島も寺山さんも使っている。寺山さんには『銀幕迷宮』を観に来てはもらえなかったが、何か縁のようなものを感じた作品なのだ。その後、87年に本多劇場で再演し、それを23年ぶりに、初演と同じ明石スタジオで上演する。実は、昨年の8月には、この日程で別の作品をやろうと思っていたのだが、明石スタジオの創立30周年記念公演ということになり、さらに、昨年、寺山さんと縁の深い唐十郎さんの唐組にいた丸山厚人という役者に出会い、何かを一緒にやりたいと思ったことなどが重なり、思い切って『銀幕迷宮』を再演しようと決めたのだ。確かに、まだ出来たばかり(第3回公演になる)のd'Theaterの若い役者たちには、少し荷が重いかもしれないとも思った。しかし、私は少なくとも今まで安定した演劇などやって来たつもりはないし、演劇には、常にチャレンジ精神や実験精神は必要不可欠だと思っている。そういうのがなくなり、単なる娯楽や自己満足やひとつの方法論の繰り返しになっているから、最近の演劇はおもしろくないとも思うのだが。d'Theaterの役者たちだって、若いとはいえ、『銀幕迷宮』を初演した時の私たちとほぼ同じ年代だし。そんなわけで、『銀幕迷宮』をやることにした。
本番まで2ヶ月を切った『銀幕迷宮―キネマラビリンス―』の情報は、この乾坤でも、随時報告していきたいと思う。そのためには、毎週更新していかなくてはね。今、いえることは、いろいろな部分で、初演とも再演ともまったく違う『銀幕迷宮』になっているということ。もちろん、大鷹明良や美加理や冬雁子や原幸子や阿部能丸や新童龍二じゃないし。ま、同じことをやってもつまらないので、当然だが。初演や再演を観た人は、すでに40代や50代や60代になっているわけで、もちろん、そういう人にも観に来て欲しいが、若い世代にも、80年代にはこんな作品があったということもわかって欲しいという思いもある。決してわかりやすい芝居ではないが(何しろ、迷宮だから)、この作品に込められたテーマはいろいろあり、いろいろな見方、感じ方が出来る作品だと思う。まぁ、80年代の芝居って、そういうのが多かったしな。今の小劇場演劇に飽き足らない人にはピッタリなんじゃないかな。
というわけで、また。次回は早めに頑張ります!
d'Theater vol.3
第7回杉並演劇祭参加作品
明石スタジオ創立30周年記念公演
銀幕迷宮 ―キネマラビリンス―
作・演出 小松杏里
2010年3月17日(水)〜22日(月)
高円寺・明石スタジオ TEL:03-3316-0400
開演:平日7時半/土日3時・7時/祭日3時
出演:丸山厚人・吉富睦[Palette]・岡村多加江[椿組]・武田智弘[流山児★事務所]・とりいちえ・堀田俊・花岡ゆか・河崎ヨシカズ・大山奈津・成田ひらく・金子未佳・小寺陽太・橘龍希・内山次音・山本真理奈・尾崎卓也・稀莉果・木ノ下紘・功刀あきら・かとう統・古徳純一・梅田ゆうと・瀬戸浩司・野見山修
料金:前売3000円 当日3500円
グループ割引(3人以上)2700円
チケット取り扱い:e+イープラス
予約・問い合わせ:ドワンゴプランニングアンドディベロップメント TEL:03-5226-7221
E-mail
(2010.2.5)