2009年5月第3週
先々週、17日の日曜日は、午後3時から日本劇作家協会の総会があった。場所は5月に出来たばかりの劇場、座・高円寺。杉並区と劇作家協会がパートナーシップを結んで運営していく劇場だ。劇作家協会は、今年で創立16年目になる。私は、今は劇作家協会の会員なのだが、会員になったのは2年前で、その後も総会やイベントに参加したことがない、非協力的な会員だった。すまないと思っている。しかし、実は、この協会が発足する前の準備委員会のような会合には出たことがある。坂手洋二氏や平田オリザ氏と共に、アゴラ劇場で話し合いをしていた。だが、その頃は、友人として参加していただけで、特に劇作家という意識が強くなかった私は、協会が発足した時も、すぐには参加しなかったのだ。日本演出者協会も同じような感じで、出来てからも、しばらくは入らなかった。どうも、ずっと仕事はフリーでやってきたので(劇団は作ったが)、組織が苦手だったのかもしれない。しかし、そんなことをいったら、作家や演出家なんて、みな孤独な仕事だ。そういうクセのある連中が集まって、一人では出来ないことをやろうというのだから、今思うと、どちらももっと早くから入って、私が協力出来ることはしていればよかったと、つくづく思うのだ。そんなわけで、これからは出来ることは協力していこうと思い立ち、16年目にして初めて劇作家協会の総会に顔を出したわけだ。現会長は、昔からよく知っている坂手氏だし。
総会は、昨年度の事業報告と今年度の事業計画の発表、そして、その承認が、主な内容だった。行われたのは、座・高円寺の地下2階にある阿波おどりホール。事務局の勢藤典彦氏の進行で始まり、現会長の坂手氏の挨拶があり、劇作家協会の役員たちから、次々と報告や発表が行われていく。企画事業部から坂手氏、教育部から横内謙介氏と篠原久美子氏、国際交流部から土田英生氏、法務部から平田オリザ氏、広報部から別役実氏、出版部から小松幹生氏、地域交流部から佃典彦氏、オンデマンド出版部から鈴木聡氏、等々。広報部の別役さんからの「会報の編集をやってくれる人がほしい」という話と、出版部の鈴木聡さんの「オンデマンド出版は、まだ新しい分野なので大変だ」という話が印象的、というか、気になった。やはり私が元編集者だからだろうか。協力出来るとしたら、こういったところかな。しかし、質疑応答の時間になると、劇作家協会の会員の中にも変わった人がいて(才能と人格は違うわけで)、わけのわからない質問やら自分の意見だかを長々といって、みんなの失笑を買っている人がいたのも、ある意味楽しかった。それに丁寧に答える会長の坂手氏も大変だと思ったが。
総会は5時前に終わり、その後、5時から「会長サミット」と題された、劇作家協会設立15周年記念シンポジウムが、今、『化粧』が上演されている座・高円寺2のステージで行われた。劇作家協会の初代会長の井上ひさし氏から、2代目会長の別役実氏、3代目会長の永井愛氏、そして現会長の坂手氏までがステージ上にズラッと並び、協会の話から、それぞれの仕事部屋や煙草の話まで、約1時間半に渡って行われた。ここでは、井上さんの存在感と別役さんの飄々とした味が印象に残った。横内謙介氏が最初と最後の司会をした。
その後、7時から、劇場の2階にあるカフェ・アンリ・ファーブルで懇親会のパーティーが行われた。乾杯の音頭は、座・高円寺館長の斎藤憐氏だった。司会進行役は鈴木聡氏と西山水木嬢。立食形式のパーティーが始まり、改めて、平田氏や鈴木氏やいろいろな劇作家の方々に挨拶をした。みなと座で働いていた時、『お侠』の公演(地方公演も含め)で付き合いのあった岡部耕大さんとも久しぶりに会い、横浜の演劇の話をした。桟敷童子の東憲司氏もいたので、久しぶりに話をした。桟敷童子で、また福岡公演をやりたがっていたが、いろいろ福岡の制作的な演劇状況が変わったという話を聞いた。そういえば、福岡にいる時にお世話になった、西鉄ホールのプロデューサーの中村さんも異動になったらしい。6月に福岡に行くので、その時に演劇関係者にいろいろ聞いてみよう。演劇評論家の西堂行人さんも来ていて、いろいろ話をし、「まだまだやりなよ」といわれた。西堂さんは福岡で劇評の講座をやりたがっていた。やれるといいと思う。いや、ぜひやってほしい。赤澤ムック嬢もいたので、公演を観に行けなかったお詫びをした。パーティーのクライマックスは、『楽屋』のマチネ公演を終えて駆けつけた、劇作家協会副会長である渡辺えり嬢のライブだった。坂手氏も「すごいね!」といっていた黒の色っぽい衣装で、ジャズナンバーを熱唱する渡辺えり嬢は、劇作家というより、さすが女優、という貫禄だった。パーティーは9時前に終わった。坂手氏の「今日はまさに、一日、劇作家の日だった」という話の通り、楽しい一日だった。
高円寺というと、私にとっては明石スタジオとの関係が深いので、帰りにちょっと覗いてみたら、番頭さんの浅間ちゃんがいたので、浅間ちゃん行きつけの店に一緒に飲みに行って奢ってもらった。初めて明石スタジオを使ったのが、82年の『聖ミカエラ学園漂流記』の初演だから、もう27年という付き合いだ。私は見た目からして大きく変わったが(笑)、浅間ちゃんは昔とあまり変わらない。また明石スタジオでやりたいという話をしながら、小田急線の最終電車に間に合う時間まで高円寺で飲んだ。
というわけで、17日の日曜は、なかなか充実した、楽しい一日だった。その後、劇作家協会の事務局に連絡をして、空いている時間にお手伝いをするという話をしたので、何か協力していけたらいいと思う。
その翌週、先週24日の日曜はオークスだった。その話は後回しにして、先に、夜、観に行った芝居の話。
表参道まで、福岡から来た劇団ぎゃ。の公演を観に行った。ぎゃ。は中村雪絵と三坂恵美の女の子二人が中心になってやっている劇団で、メンバーも女の子ばかり。福岡にいる頃に知り合い、西鉄ホールでやったE−1グランプリの九州大会の決勝で初めて観た。その後、三坂とは、彼女が客演していた熊本の劇団きららの東京公演(2007年のタイニイアリスフェスティバル)の時に会ったり、東京に芝居を観に来た時に会ったり、去年、寺山修司没後25年の企画公演『大人狩り/トマトケチャップ皇帝』を大野城のまどかぴあに観に行ったりした。実は、芝居好きのお父さんとも、福岡演劇のひろばの関係で、飲み仲間なのだ。作・演出を担当する中村雪絵の作風は、今風の女の子の、おしゃれさと軽さと残酷さが盛り込まれていて、私にはなかなか作り出すことが出来ない世界だが、作品としては、好きな世界だ。演劇的にも、いろいろ試みをしようとしているし、安易に芝居をやっている輩(先週書いた某劇集団のような)に比べたら、断然、いい。ただ、いつも思うのは、やりたいことをそのままストレートにやり過ぎていて、もうひとつ客観的な目がほしいということだ。
福岡の若い劇団を観ていて、よく感じたことなのだが、おもしろい素材がいっぱいあるのに、自己完結している。つまり、観客にどう伝えるかという演出的な作業が弱いのだ。そういった中で、観客のことを考えた、というか、意識した、ギンギラ太陽'sなどは、今や全国区になってしまった。他の劇団も可能性はあるのに、もうひとつ外に向けて発信されていないことが、もったいないと思うのだ。その原因は、他の劇団の芝居を観ていないからじゃないだろうか。特に、東京から来る劇団。自分たちがやることだけに一生懸命になっていて、演劇というもののおもしろさや深さを探ろう、勉強しようとしていない気がする。それは、今一緒にやっているd'Theaterの若いメンバーや声優志望の学生たちにもいえることで、とりあえず演じさせてみると、どこかで見て来たような、あるいは、テレビのような、ありきたりの演技しか出来ない。それは、力量がないということではなく、発想が乏しいのだ。何故か? 勉強していないからだ。仲間内のつまらない芝居ばかり観ているとか(まぁ、金がなくて、なかなか高い芝居は観に行けないというのもあるだろうが)、演劇の本を読まないとか(図書館に行けばタダで借りられるのに)、気になる役者の芝居を真似てやってみることをしないとか(昔は、状況やつかやキッドや早稲小や野田の芝居の真似をしたものだ)、そんなところだろう。そういう若いエセ演劇人はいっぱいいるんじゃないかな。演劇を真剣にやりたいのだったら、もっと、演劇を好きになって、若いうちは演劇に金を使って、自分に投資しろよ、って声を大にして、いいたい!
まぁ、ぎゃ。がそうだというわけではないが、今回の作品も、15人も入ればいっぱいになるカフェを使って公演をしたり、調理場をそのまま使ったり、といろいろ工夫しているし、物語の構成的にも、なかなか話が入り組んでいて、それ自体はおもしろいし好きなのだが、やはり客観的に演出していく力が必要だと思った。演出とは、単に奇を衒う作り方をするのではなく、その作品の持っている魅力を、いかに観客に伝えるかという作業なのだ。自分たちがやっていることが、観客に伝わらないとつまらないはずだ。しかし、ぎゃ。の芝居は、なかなか東京で観ることは出来ないような作品だったので、ぜひまた東京で公演をしてほしい。
最後に、ちょっと長くなったが、競馬の話。オークスは、結局、堅い結果になって、前回の「堅い方」の予想通り、選んだ5頭が1着から5着までになり、3連複も3連単も取ることは出来た。とはいえ、配当が3連複1.250円、3連単も2.430円と、取れて損するパターン。荒れる場合の馬券も買ったからね(笑)。ま、当たったことは当たったので、良しとしよう。これで春のGT戦は、すべて入れると、3勝(桜花賞、中山グランドジャンプ、オークス)4敗(皐月賞、天皇賞・春、マイルカップ、ヴィクトリアマイル)。取れなかったのは、荒れたレースばかりだ。春のGTは、あと2戦、何とか勝ち越したいものだ。というわけで、今週はいよいよ、日本ダービー。24日は朝から雨模様だったので東京競馬場に行くのをやめたが、ダービーは久しぶりに行こうかな。4年前のディープインパクトの時以来だな。で、予想は、皐月賞馬アンライバルドの2冠達成かどうかということになるが、ブエナビスタでさえ首差という危うい勝ちだったぐらいだから(いや、あれが届いて差し切ったのだから強い、という見方もあるが)、群雄割拠のダービーは、アンライバルドでは勝てないと見る。じゃあ、ロジユニヴァースの復活かというと、まぁ、それもあるかもしれないが、私は、第三の、というか、ニューヒーロー誕生と読んだ。3冠全部が違う馬、特に皐月賞とダービーの上位馬が、まったく違ったパターンというと、最近では、去年もそうだし、2007年も、2004年もそうだった。それに当てはめると、皐月賞に出走していなかった馬や、皐月賞では4着以下だった馬(特に、去年のダービー2着のスマイルジャックは皐月賞9着だし、2007年の2着アサクサキングスは7着、2004年の2着ハーツクライは14着だった!)、そして、やはり騎手が、リーディング上位の騎手、という条件がつく。今年も、その傾向と見て、皐月賞の3着までの馬はズバッと切り、皐月賞に出走していない、ジョーカプチーノ(マイルカップ優勝馬は、キングカメハメハとディープスカイの2頭もいる)に、アプレザンレーブやケイアイライジン、アイアンルックにブレイクランアウト。ただジョーカプチーノは騎手が若い藤岡康太だから心配だ。勝てば、最年少ダービージョッキーになるので応援はしたいが。三浦皇成のアーリーロブストもね。そして、皐月賞では振るわなかったアンカツ(安藤勝己)のフィフスペトル(7着)や蛯名のナカヤマフェスタ(6着)、川田のゴールデンチケット(11着)や角田のアントニオバローズ(9着)も要注意。もちろん、横山のロジユニヴァース(14着)や武豊のリーチザクラウン(13着)の復活もありと見る。またまた、ちょっと多いかな(笑)。後は、当日の馬の気配で少し絞るが、牡馬路線は荒れているので、ダービーは手広く買って、10万馬券を狙うぞ!
(2009.5.30)