2008年5月第4週


 いきなり競馬の話で申し訳ないが、先週のオークスは、ここに書いた通り、すべてハズレだった(大笑)。1〜3着とも、見事にかすりもしなかった。軸にしたソーマジックは8着、穴に挙げたライムキャンディは12着。とにかく、優勝したトールポピーも、2着のエフティマイアも、3着のレジネッタも、まったく無視していたので、「惜しい」という気もしなかった。結局、あの、荒れた桜花賞の1、2着馬が2、3着になったのだから、桜花賞の結果も決してフロックじゃなかったってことだ。1〜3着までみなGTレースの上位馬で、それで素直に買っていれば取れたわけだ。ま、こういうこともあるさ。

 とはいえ、自慢じゃないが、という場合は大概自慢なのだが(笑)、ここまでIPATの今年の成績(回収率)は、100%を超えている。競馬をやっている人ならわかると思うが、これはなかなかすごいことなのだ。もちろん、世の中にはもっとすごい人もいて、複勝を買い続けて家を建てたという人もいるし(ほんとかどうかはわからないが)、1回のレースで何千万も儲ける人もいる。もっとも、そういう人は馬券を買う金額も桁違いだが。私の場合、去年は年間回収率73%、おととしは確か60何%だったと思う(データが去年の分までしか表示されない)。的中率は、毎年だいたい3割。今年も的中率はそんな感じだが、時々、大きめの万馬券を取る回数が増えた(3連単は当然だが、3連複でも)ので、回収率は100%を超えているのだ。もちろん、年間では、これからどうなるかわからないので何ともいえないが。ま、これはあくまでも結果であって、単純に、予想というか、いろいろ考えて選んだ馬が勝って(あるいは3着に入って)くれるのが、うれしい。特に、人気のない馬が来てくれるとね。これは芝居でも当てはまる。一般的に人気のある劇団より、無名でもおもしろい劇団をいち早く見つけ、そこがブレイクした時は、うれしいものだ。あそこやあそこやあそこはそうだった(笑)。自分のところも、当然そういう気持ちでやっていたのだが、ブレイクする前に辞めちゃったからな。やはり、継続は力なり、だ。おっと、月光舎は封印中なだけで、いつかまたやる。いや、実はその前に、今年、ちょっと本腰を入れてやろうと思っている計画が進行しているのだが、それは、もう少し具体化してから報告する。その時は、表題も変えようかな。

 さて、先週は特にこれといったこともなく、書く内容に余裕があるので(競馬の話ばかりじゃしょうがないので、といっても最後に今週末の第75回日本ダービーのことを書くが)、最近読んだ本や観た映画について書くことにしよう。

 本は、時々近くの図書館に行き、何冊かまとめて借りてきて読んでいるのだが(ジャンルはいろいろで、いわゆる乱読)、借り出されていて、予約をしても、他に予約をしている人が多いのでなかなか借りられない本がある。その1冊が、去年の5月に出版された『僕はパパを殺すことに決めた』だったのだが、先日、町田のブックオフで格安で売っていたので買い、さっそく読んだ。この本は、2006年6月に奈良で、進学校の東大寺学園に通うエリート高校生が自宅に火をつけ、継母と妹と弟が焼け死んだ事件の供述調書をもとに、元法務省東京少年鑑別所法務教官でフリージャーナリストの草薙厚子さんが書いた本で、一般には出回ることのない、つまり普通は読むことの出来ない供述調書がそのまま載っている。供述調書というのはこういうものか、ということがわかる(小説の『愛の流刑地』では主人公が供述調書に意義を唱えるシーンが何回も出て来た)と共に、マスコミでは報道されなかった真実がリアルに迫ってくる、なかなか読み応えのある本だ。そのために、いろいろ問題にもなった

 ここから読み取れるのは、本当の加害者は誰かということではなく(当然、父親の暴力的な教育指導ということになるのだろうが)、今の、というか、日本の教育制度そのものに問題があるということだ。いや、もっといえば、相変わらずまかり通っている権威主義そのものであり、それに踊らされてしまう(踊らされる人々はしょうがないとして)、社会の制度そのものに問題があると思う。父親にしても、自分の学歴コンプレックスや別れた妻に対する意地から、息子に暴力的教育指導をしたわけで(もちろん、他のやり方を選択出来なかったところにも問題はあるが)、そういう、学歴に対する偏見をなくすような社会にしなくては、こういう事件はなくならないだろう。

 また、個人の問題として、少年の「広汎性発達障害」という病気を周囲が早く知り、それに対する適切な対応をしてやれなかったことも重要だ。それにしても、あることに注意が向いている時は他のことに注意が向かず、周りへの配慮が欠く人間などいっぱいいるし、「字義通り性」という、冗談の通じない人間だって多い。どうも、文明が発達すればするほど、いろいろな病気が生まれているような気がする。特に精神的な病いが。もしかすると、私も、あなたも、隣りの人も、すでに何らかの病いに侵されているのかもしれない。

 映画は、なかなか映画館に行けないので、もっぱらDVDだ。最近は三男と共に『HEROES』にはまり、続けて観ているのだが、もちろん韓国映画も観ている。そんな中で久しぶりによかったのが、『恋愛の目的』だ。原題もそのまま。内容もそのまま。恋愛って何だろう、って思っている人は、ぜひ観てほしい。いや、実際は、そんな生易しいものじゃなく、まるでホン・サンスの映画のように、リアルに男と女の本質の部分を描いている。だからこそ笑えたりするのだが、その男女を、一見こういう映画には合わないんじゃないかと思える、大好きなパク・ヘイル(『殺人の追憶』『グエムル』)とカン・ヘジョン(『オールド・ボーイ』『トンマッコルへようこそ』)が演じているのだ。二人とも、スッポンポンになってのセックスシーンもある。あぁ、あのカン・ヘジョンが! とびっくりしたりもするのだが、マスコミ的にいうと、カン・ヘジョンは、付き合っていた(私もいいカップルだなと思っていた、大好きな)チョ・スンウと別れ、なんか、ふっ切れたようないい演技をする。いや、もともとデビュー作の『バタフライ』の頃から、存在感はあるし、いいと思っていたが、アイドル顔なので、演技派に見られにくかったのだ。しかし、この演技で、彼女は2005年釜山映画評論家協会賞の主演女優賞まで取ってしまった。ま、観れば、当然と思うだろうが。

 この監督、ハン・ジョリムは、これがデビュー作だが、覚えておきたい。このままいけば、キム・ギドクやポン・ジュノやホン・サンスやパク・チャヌクやチャン・ジンのように、好きな監督の一人になるだろう。まだ日本で公開されていない、ソン・ガンホ主演の第2作『優雅な世界』を早く観たい。

 最後に今週末の第75回日本ダービーの予想。これはもう、どう考えても堅いという結論に達した。すなわち、オークスと同じように、GTレース上位馬の、マイネルチャールズにディープスカイ、ブラックシェルに、私が本命としたタケミカヅチ(なぜかいつもタケミカヅキと間違えてしまう)の4頭のボックスの3連単。これしかない! しいて大穴をあげるとすれば、ダート戦ながら、デビューから4連勝中のサクセスブロッケン。父がダービー2着だったシンボリクリスエスで、父の無念を晴らすか(モンテクリスエスもシンボリクリスエスの子だ)。まぁ、そんなことをいえば、ディープスカイの父、アグネスタキオンなんか、皐月賞までデビューから無傷の4連勝で、怪我でダービーに出られなくなり、そのまま引退してしまったわけだから、思い入れはもっと強いか。レインボーペガサスやアドマイヤコマンドもアグネスタキオンの子だ。つまり、異母兄弟で父の無念をはらす戦いに臨むわけだ。ドラマだなぁ。一方、9年前のダービー馬アドマイヤベガの子がクリスタルウイング。勝てば、親子2代制覇というわけだ。このように、ブラッドスポーツといわれる競馬は、血統を知ると、さらに深いドラマをそこに感じてしまうわけだ。いやぁ、おもしろい。取れればもっとおもしろいが。今回は自信あるぞ。

(2008.5.30)


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