2008年4月第1週

 4月になった。新年度であり、新学期だ。この時期になると、毎年思い出すことがいろいろあるが、今年はゆっくり感傷に浸っている時間もない。7日の月曜から始まる新年度の授業の準備で相変わらず目の回る忙しさだ。とはいえ、このまま疲れも取れないまま新学期に突入するのも嫌なので、温泉に行って来た。家の近くの、よく行く天然温泉じゃなく、ちゃんとした温泉宿だ。その前に、まずは3月の話から。

 春分の日の休みがあった週には、ちょっと時間が出来た。相変わらず、仕事は朝から晩まで目一杯だが、来期のカリキュラム編成も目途がついてきて、講師の手配も順調に進み、いろいろな人が入ってくれることになって楽しみが増えた。そう、教えてもらうなら、なるべくいろいろな人からいろいろな話を聞いた方がいいと思う。よく、先生が違って話も違うと、どれが正しいのかわからない、という学生がいるが、どれも正しいのだ。表現の世界に、これが正しいという正解などない。正解は、自分で探していくものなのだ。そのためには、いろんな人の話をしっかり聞いて理解し、判断していく力を持たないとだめだ。その力は、台本を分析して理解し、自分なりの表現へと結び付けていくことに通じる。最近の、いや、こういういい方は好きじゃないし、昔からいただろうから、一部の若い子に、といっておこう、その連中には、何でも与えてくれないと出来ない、という子が多い。つまり、自分で考えて判断して行動出来ないのだ。そのくせ、文句や愚痴ばかりいう。文句や愚痴と「意見」とは違うということがわからない。「意見」は結果を導き出すために述べることで、文句や愚痴からは何も生まれない。まったく……いかん、おじさんの愚痴めいてきたぞ。とにかく、と、A型はすぐまとめたがるが、いろいろな人からいろいろな話を聞いて、実際にやってみて、その中から自分に合ったものを見つけていくことが大事なのだ。自分に合わないやり方をずっとやっていても、成長はしない。経験としてはいいけど。

 春分の日の前日、19日の水曜日には、久しぶりに青山円形劇場に行って芝居を観て来た。黒色綺譚カナリア派の公演『葦の籠』だ。作・演出の、黒ならぬ赤澤ムックの作品は、以前、『リュウカデンドロン』を観ている。番外公演を入れると、今回が3回目。いつも思うことなのだが、確かに赤澤ムックの特異な世界は感じるのだが、それがうまく昇華されていない。中途半端に終わってしまっている気がして、もったいないと思うのだ。私の好きな世界だけに残念に思う。まぁ、あれでいいと感じる人もいるだろうが、演劇的には、もっと深く出来るのに、と思ってしまう。いや、単に外連(けれん)的な部分じゃなく、役者の演技や台本の解釈にしてもね。う〜ん、最近の若い世代の芝居は、みんな物足りなさを感じるか、みんな同じような芝居をしているように感じてしまうのだが、あれでいいのかねぇ。いや、黒色綺譚に限ったことじゃなく。観客を、これでもかこれでもかと驚愕させて、打ちのめしてくれる芝居はないのかなぁ。じゃあ、自分がやれよ、ってことになるんだろうけど……確かに、月光舎も韓国公演と凱旋公演をした2002年以来やっていないし、今年は螳螂を解散して20年だし、やりたい気も少しは出て来たんだけど、まぁ、こればっかりは自分一人で出来るものでもないんでね。

 そういや、長男のみんとが、今回の黒色綺譚の公演も演出助手で関わり、なかなか熱く演劇論(などとまだいえるものではないかもしれないが)を語っていたらしいし、今年も夏の椿組の野外劇も手伝うらしいし、そういうことも刺激になってるのかもしれないな。実はやりたい作品はいくつかあって、演出プランは立てているんだけど。まぁ、これもいつのことになるやらだが。

 26日の水曜は、学校は休みで、仕事がひと段落したこともあり、朝から夜まで遊んだ。遊んだといっても、昼間は次男の野球の応援。甲子園も始まっていたが(次男の親友の松本君が1番バッターで出ていた横浜高校は、残念ながら負けてしまった)、こっちは神奈川県の春の大会の地区予選。湘南地区のひとつのブロックで、4校のうち上位2校が県大会に出場することが出来る。初戦の相手は茅ケ崎高校。場所は鎌倉高校。カメラマンの加藤さんの母校で、前日、「鎌高に次男の野球の試合を観に行って来ますよ」と電話をしてしまった。鎌倉高校は、漫画『スラムダンク』に出て来る陵南高校のモデルにもなった高校で、漫画のカットと同じ風景があちこちにある。鎌高に行く途中の坂の、正面に江ノ電の踏切と海が見える風景や、目の前に海が広がる江ノ電の「鎌倉高校前」駅も、ドラマや映画によく使われる。そんな素敵な湘南の地での初戦だったが、応援の甲斐あり、8対1でコールド勝ち。次男は、3打数1安打、打点2。まぁまぁだったが、2アウト満塁のチャンスに打てなかったのが残念だった。予選の方は、翌日に対鎌高戦があり、これは苦戦しながらも、何とか5対4で勝ち、29日の土曜日の最終戦、藤沢工科高校との試合も8対1で勝ち(この試合、キャプテンの次男は、5打数3安打、先制点含め3打点の大活躍。観に行けなかったけど、キャプテンの役目を果たしてくれて、よかった)、見事湘南A地区1位通過で県大会出場が決まった。10日に抽選があり、12日か13日に試合がある。また、応援に行かなくては。次からは強豪校が相手になってくるだろうから、そう簡単には勝てないと思うが。

 その日、昼間、茅ケ崎高校との試合を観た後、久しぶりに藤沢の街をぶらつき(片瀬江ノ島の天文館で稽古や公演をしていた頃は、よく行っていた)、夕方から、大井競馬場に行った。24日の月曜日からナイター競馬のトゥインクルレースが始まっていて、タイミングがよかったので、急遽、行くことにしたのだ。これまた久しぶりに生で観るトゥインクルレースは、気持ちよかった。まだ少し肌寒かったが、ライトアップされた競馬場は美しく、スタンドの一部も改装されてきれいになっていた。地方競馬はレースが多く、いつも観ることが出来るわけではないので、JRAのように好きな馬を追いかけるということはなかなか出来ず、どうしても好きな騎手から買ってしまう。この日も、私と同い年の的場文男やJRAにも参加しているイケメンの御神本、ベテランの桑島や張田、相性がいい坂井などを中心に買ったが、うまく噛み合わず、4戦全敗(時間的にトゥインクルレースの4レースしか出来なかった)。ま、正月の川崎競馬に続いて、今年2回目の生競馬(どちらも地方競馬だが)で、サラブレッドが疾走する姿を間近で観ることが出来たので、充分満足だった。もちろん、さらに馬券が取れれば、大満足なのだが。

 3月は、他にあまりどこにも行っていない。いや、それが普通なんだろうけど。芝居も、他に観たいのが何本かあったのだが、結局、2本しか行けなかった。普通に忙しく仕事をしていると、なかなか行けないものだ。4月も授業の時間割を見ると、かなりタイトなスケジュールだ。ま、何とか水曜日の休みと土曜日の夜は確保しているので、その時に仕事を残していない限りは、いろいろ芝居や映画を観に行ったり、遊びに行ったりしたいとは思っている。いや、本来は、休みの時間にまで仕事を残さないようにしないといけないんだけど。やることが多過ぎるってのも問題だ。

 3月最後の週末に温泉に行った話は次回。行ったのは宝川温泉。22年ぶりぐらいかな。いや、いいところだったぁ。

(2008.4.6)


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