2006年8月第1週

 横浜の夏は終わった……無論、第88回夏の全国高校野球大会の横浜高校のことだ。春夏連覇という偉業はやはり難しいのだと納得させられると同時に、神奈川大会で見せてくれた、いつもの横浜高校らしい野球が出来なかったことに、「甲子園には魔物が棲んでいる」という言葉を改めて実感した。そして、全国にはまだまだ強豪がいるのだということも知らされた思いがした。「今年の横浜高校は史上最強!」「体調があまり良くない渡辺監督は、この大会で優勝して勇退!」などと舞い上がっていた自分も反省しなくてはと思う。しかし、渡辺監督にはもう少し頑張ってもらって、この敗戦で学んだことを糧に、2年後の第90回の記念大会には、3年生になっている松本幸一郎君を主将に(いや、勝手に私が思っているだけだが)、全国優勝を目指してもらいたい! その時には、甲子園に行くぞぉ! いや、今年も決勝まで残っていたら、家族みんなで行こうと思っていたのだが……残念っ!

 というわけで、神奈川代表の横浜高校は敗退してしまったが、これで高校野球を観なくなるというわけではない。むしろ、皮肉なことにそのおかげで、順調にいけば次の土曜日には、早実の斎藤と大阪桐陰の中田の対決が観られることになったわけで、複雑な気持ちながら、プラス思考(?)で、さらに楽しもうと気持ちを切り替えた。いや、他の高校もなかなか魅せてくれる試合が多く、観始めると釘付けになってしまう。

 それにしても、6日の日曜日、大会初日の試合は3試合とも凄かった! 開会式からずっと3試合観続けたが、もう、この一日で今年の夏の高校野球を満喫した気がした。第1試合では、初出場の白樺学園に声援を送りながらも、高知商業の底力に感心した。駒大苫小牧のナインがスタンドで、同じ北海道代表の白樺学園を応援している姿にも感動してしまった。白樺学園は初出場ながらよく頑張ったと思う。第2試合では、早実の18安打という強さに驚くと同時に(翌月曜日の清峰の先発全員の20安打にも驚きというより呆れたが!)、145キロという、高校生としては信じられない球(駒大苫小牧の田中は最速150キロ!)を投げる斎藤に魅せられた。大分の鶴崎工業も九州勢ということで応援していたが、相手が斎藤だし、3安打じゃ勝てないのも仕方がない。そして、第3試合。横浜は前半、もっと点を取れたはずなのに、ミスが連続して得点に結び付かなかったのが痛かった! 川角も研究されていたし、これで後半大阪桐陰の打線が爆発したらヤバイだろうなぁと思っていたら、その通りになってしまった。1年生ながら2番パッターで先発出場した座間中出身の松本君(テレビで見ていても、他の2年生や3年生に比べてまだまだ幼くてかわいいのがよくわかる!)は、1回はデッドボールで出た1塁ランナーをきっちり送って先制点に結び付けたし(彼はバントは巧い!)、5回には同点打を放つなど活躍してくれて、涙を流しながら感動してしまった! もっとも、3回には、やはり初めての甲子園で緊張していたのか、守備のショートでエラーをしてしまい、満塁にしてしまったが(この時も泣けた)、次の打者がピッチャーライナーで助かり、運のいいところも見せてくれた。あのエラーは、どこかで意地でも取り返すだろうと思っていたら、やはり、同点のチャンスの時にしっかり打ってくれたが。その松本君も、試合終了の時にはやはり泣いていた。まだ2年生の中田にホームランを打たれた横浜のピッチャーの落司も2年生だし、1年生で甲子園のグラウンドを踏んだ松本君も、この悔しさを忘れずに、来年、再来年と頑張ってくれるだろう。翌7日には神奈川に戻って来て、ウチの次男など元・座間ボーイズの仲間たちとも会った松本君は、さっそく秋の大会に向けて9日から新チームでの練習が始まるという。次は春の選抜の甲子園での活躍を見たい! あ、ウチの次男の高校にも、もちろん頑張ってもらいたいが! 次男も、「(自分の高校の野球部の)新チームは強いよ!」といっているし。

 高校野球の話だけで長くなってしまったが、やはり、夏といえば甲子園、そして、花火だ! といっても、過去の乾坤では、毎年夏、そのことに触れているわけではないが……ていうか、高校野球の話も花火の話も、今年が初めてじゃないか!

 その花火の話題だが、先週お知らせした通り、1日の火曜日の夜には、関内にある学院の屋上から、神奈川新聞主催の花火大会を観た。大きな花火大会といえば、10年ぐらい前に江ノ島の花火大会に行った時以来だ。その時は海岸で、打ち上げる場所の割とすぐ近くで観たのだが、今回は、打ち上げる場所の臨港パークとは距離があり、遠くに花火を観る感じだった。しかも、間にビル街があり、高い位置からなので、見上げるという感じではなかった。それでも、打ち上げるドーンという音は響いてくるし(やはり、この音がないと盛り上がらない!)、パーンとかパラパラッという花火が開く音もしっかり聞こえ、ビアガーデン風にしつらえた屋上で夜風に当たりながら、ビールや焼酎を一杯やりつつ観る様々な花火を、満喫した。確かに、ビルの谷間に見える花火というのは、まるで特撮映画(昔のウルトラマンとか怪獣映画とか)のワンシーンでも見ているような感じがしたし(改めて写真を見ると、特にそんな感じがする)、ビルの下の方で広がる花火など、まるでそこが爆撃されたのかと錯覚してしまうようなものもあった。そんな中で、おそらく初めて観たのだと思うが、私が気に入った花火は、下の方から上に、まるで噴水のように広がっていくものだ。これには思わず、ワァーッと声を上げながら拍手してしまった(いい酔い加減になっていたのもあると思うが)。前からお気に入りの、上に打ち上げってから、さらにあっちゃこっちゃいろんな方向にクルクルと小さく広がっていくやつもあった。改めて花火の写真が載っているサイトを見てみたら、今は、それこそいろんな花火があるようだ。機会があれば、夏の間にまたどこかで観たいと思う。

 さて、学院の方は8日の火曜日から職員も夏休みに入る。10日にローテーションの学院待機で出る以外は、お盆明けの16日まで土日を入れて9日間も休みだ! 考えたら、夏休みにずっと実家にいるのは4年ぶりになる! 3年間福岡にいたのだから当然だともいえるが、去年の夏は釜山に行き、神奈川には帰らず(その代わり、8月の終わりに妻と次男が福岡に来た)、その前の年は、ソウルに行って〈ペ・ドゥナ記念日〉が出来た後、福岡に戻り、その日に神奈川に帰って来て、5日間いた。福岡に行った最初の年は、お盆は飛行機代が高いので(もちろん、いつも自腹!)、帰らなかった、いや、帰れなかった。そんなわけで、久しぶりの長い夏休みになるのだが、いろいろ事情があって、どこかに遠出するなんてことは出来ない。実は、溜まっていたマイレージを使って、韓国以外のどこか(候補は中国)に行こうとも思っていたのだが、止めた。いや、実際、止めて正解だった。まぁ、子供たちもそれぞれ、練習だ、合宿だといろいろ夏のイベントがあるし、みんなでどこかに行くというのも、昔のように(子供たちが小さかった頃のように)、たやすく出来なくなってきたのだが。そうそう、体調の方、というか、味覚障害の方は、だいぶ良くなってきた。とはいえ、まだ舌に痺れ感が残っていて、熱いものや辛いものは何となく苦手になってしまっている。とはいえ、そういうのは好きなので、騙し騙し食べている。それにしても、やたら長い今年の夏休みはいったいどうなるのだろうか? まぁ、例によって、一回ぐらいは温泉にのんびり行きたいとは思っているが。

 そういえば、先週の土曜日、5日の夜には、5ヶ月ぶりに、今年の3月に福岡校を卒業した学生たちに会った。といっても、もちろん全員ではない。ある劇団の養成所に入った何人かが出演する、中間発表会のような公演を観に行ったのだが、私が行くということで、私が担任をやっていたクラスの一人が何人かに声をかけ、公演の後、出演したメンバーも加わって、みんなで飲んだのだ。場所は、発表会をやった、その劇団のスタジオもある、私はあまり行ったことのない荻窪(考えたら、中央線沿線の駅の中で、ほとんど行っていない駅だ!)の居酒屋だった。私が担任をしたクラスの卒業生だけではなく、20名ほどが集まり、席を換わりながらいろいろ話をした。まぁ、まだ東京に出て来て5ヶ月だから、それほど変わってないだろうと思ったが、何人かは、自分が入った養成所に、すでにあまり行かなくなっているという話を聞き、「何のために東京に出て来たんだ!」と活を入れた。発表会に出演したメンバーにも、「あれは発表会だから、まぁいいけど、作品としては、何を伝えたいのかわからなかったし、君たちもわかってないだろ!」と、ダメ出しをした。とにかく、若い連中には、変に落ち着いたり、自分で判断して諦めちゃったりするのではなく、少なくとも、今自分がやっていることに対して、若い時にしか出来ないガムシャラさで突き進んでほしいと思うのだ! 俺なんか、20代はな〜んも考えないで(いや、やっていること=演劇に関してはたくさん考えていたが、要するに、生活のこととか、有名になるとか、そんなことは一切考えていなかったってこと!)、ひたすら好きなことに打ち込んでたけどなぁ。ま、そんなところが、『下北サンデーズ』の世界と一緒なんだけど。やっぱ、明らかに今の小劇場演劇界とは違うよなぁ、あれは! 今は、すぐ有名になれるし、それが戦略になってたりするもん! いや、純粋に、自己満足といわれようとも自分たちの好きな芝居をやっている人たちもいるけど、決して貧乏じゃないもんなぁ! ま、それはいいか。

 というわけで、来週の乾坤は、夏休みということでお休み、にはならない。業界には、基本的に夏休みなんてないからだ。いや、別に業界とは関係ないけど(笑)。

 お、それと最後にもうひとつ! 何度も書いているが、サッカーのことにはそれほど詳しくないし、あまり好きじゃないスポーツだった私だが、頭の外側ではなく(つまり、ヘッディングではなく……うぅっ、すんません!)、中身を使わせるオシム監督の練習方法には、オォーッと唸らされた! これだよ、これが日本のサッカーに足りなかったんだよ! と思ったのだ。やっぱ、考えなきゃねぇ! 自分がやっていることに対して考えることは大切なことだし(これは演劇も同じ!)、「負けてもいい」「負けて学ぶことの方が大きい」なんていってくれるのも、これからの日本のサッカーが変わっていくような気がして、ちょっと日本のサッカーに対して興味というか、楽しみが出て来た、今日この頃であった! 目先の結果ではなく、4年後を見据えて育てていくという計画性こそ、今の日本のサッカー界には大事なことだと思う! ワールドカップの後にも、こんなようなこと書いたかな……う〜ん、サッカーに詳しい人たちはどう思ってるんだろ?

(2006.8.9)
(つづく)


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