2006年3月第2週

 5日の日曜の『豚とオートバイ』の打ち上げから一週間、平日の昼は卒業式の準備や学院の資料の整理、夜は家の片付けなどで、飲む方はひと休みしていたが(まぁ、家では寝る前に毎日飲んでたけど)、先週の金曜日の夜から、ほぼ連日、飲み会が続いた。

 10日の金曜日は、学院の1年生の風クラスから誘われての送別会。このクラスは、昨年の学院祭の時の芝居(『MIREN』と『正しい「不幸」の作り方』)で、私が演出を担当した関係で慕ってくれていて、『豚とオートバイ』も大勢観に来てくれた。その時、花束と寄せ書きもくれてお別れをしたので、それで終わりと思っていたら、送別会を開きたいんですけど、といわれたのだ。ただ、水曜日になって「場所がわからないので、先生、どこかいいとこ知りませんか?」と幹事の高倉恵にいわれ、私が急遽ホットペッパーで調べることになったのには驚いた。主賓が自分で飲み会の場所を探すなんて! まぁ、そんなところがまだ子供なんだけど(笑)。結局、いくつかの候補を調べて高倉に知らせて連絡させたが、金曜夜の15、6人の飲み会の予約を前々日にやるなんてこと自体が無茶苦茶で(しかも、今は卒業式シーズンで、送別会だ、謝恩会だとあって)、案の定、居酒屋系はどこもいっぱいだった。そこで、博多駅近くのビルの地下にある中華料理屋に当たってみたところ、何とか空いていた。そこは、私も昼飯を食べに行ったことのあるごく普通の大衆的な店で、まぁ、料理の味はともかく、金曜日の夜に15、6人が集まれる場所が取れて飲み会が出来ることになったのだから、良しとしよう。

 実は、このクラスには、学院祭の後、クラスでやった2本の芝居を合体させて続編を作ろうと持ちかけ、私が脚本を書くと約束していたのだ。しかし、忙しさにかまけて、なかなか具体的に書き進めていくことが出来なかった。そこで、昨年暮れ、とりあえずストーリーは考えるから、後は誰か書きたい人が書いてくれという話になり、この日、ようやく、シノプシスを渡すことが出来た。2年になるとクラス替えが行われるのだが、どうやら、“ぷろじぇくと☆ウィンド”として、有志で集まって公演をしてくれそうだ。頑張って欲しい!

 飲み会の方は楽しく盛り上がり、周りに普通のお客さんがいるにもかかわらず、乾杯の音頭も、最後の締めもしっかりさせてもらえた。店の人も注意してこないし、多分、東京だと、怒鳴られたり、喧嘩になったりするようなうるさいノリだったにもかかわらず、だ。ホント、福岡の人たちは優しい。きっと、飲んでいる者同士、楽しく飲めばいいじゃないかと理解し合う気持ちがあるのだと思う。そうそう、飲み屋でも、意気投合すると一緒に飲んだりするしね、って、私だけかな? 東京じゃ、ナンパ目的以外、ほとんど考えられないことだ。

 中華料理屋での一次会の後、まだ時間が早いのでカラオケに行こうということになったが、こちらも花金だから空いているわけがなく、結局、駅近くの公園で、近くのコンビニで酒やつまみを買って来て飲もうということになった。こういうのも久しぶりだったが、なかなか楽しいもんだ。その日は、まだ急に冷え込む前だったし。後から、バイトの都合で一次会に来れなかった子も来て一緒に飲み、最終的に、11時ぐらいにはお開きになった。

 翌11日の夜は、私の送別会を兼ねてくれた、“福岡演劇のひろば”の10回目のオフ会だった。この乾坤でも毎回書いているが、私は2回目のオフ会から皆勤で出席し、この会で、福岡のいろいろな演劇関係者と知り合うことが出来たのだ。もちろん、『豚とオートバイ』のHiRoBaプロジェクトというのは、この、“福岡演劇のひろば”の「ひろば」のことだ。

 今回の場所は、昨年の忘年会と同じ、薬院駅近くの魚やくいだおれ本店。またしても魚が美味かったのだが、それはともかく、参加人数も、これまでで一番多いのではなかろうかという、30名! いつも全員の名前を書かないと「私の名前が入ってませんでしたけど……」といわれてしまうので、今回は私の参加も最後だと思うから(いや、福岡に来る機会とタイミングが合えば、また参加したいけど)、長くなるけど全員の名前を書いておこう。

 まず、『豚とオートバイ』関係者は、鈴木新平さん、中村とし子さん、渡辺ハンキン浩二さん、幸田真洋さんの役者陣に、チラシデザインの東内拓理さん、サイトを作ってくれた大塚健三さん、写真を撮ってくれた徳本富重さん、ビデオを撮影してくれた紀川弘之さん、受付を手伝ってくれた石田輝子さん、宮園瑠衣子さん、泊敏朗さんに、制作の薙野信喜さんの12名。他に、鈴木さんと同じリーディングシアター・リモの会の中江育子さん、劇衆南組の南新地さんと大島るびさん、R&Sバレエアティチュードの大内田早穂さんと田中理恵さん、N.T.R.の柴山麻妃さん、演劇評論家の星野明彦さん、北九州の演劇作業室紅生姜の山口恭子さん、大分の劇団吉祥じゅん&女騎士[ワルキューレ]の原尻幸子さんと古屋智子さん、唐津の演劇集団響の渡辺ゆかりさん、西鉄ホールのプロデューサーの中村絵理子さん、FPAPの高崎大志さん、それに、丸山陽子さんに浜根ミサトさん、さらに、乾坤でも紹介した“博多の元・美少女”こと坂元麿樹子さん(もう、名前出してもいいよね)に、その娘さん(といっても大人の女性)の稲生愛理さん、そして、私の30名! 2次会には誰か加わったかもしれないけど(帰った人もいるけど)、確認取れず、というか、覚えていない。すみません。

 ここでは、『豚とオートバイ』の話を中心に、この福岡での3年間の話を、いろんな人と代わる代わるした。そして、有難いことに花束と記念品の焼酎を贈られ、私も、「『豚とオートバイ』の公演が出来たことで、とりあえず、福岡に、演劇人としての足跡も残せて良かった。これも周りの人たちの支えがあってのことだ」と感謝の言葉を述べた。さらに「この出会いを、次に繋げて欲しい」ということもいった。いつも思うことは、どんなことも、それで終わりじゃないということ。次に繋げなくては、ということ。とにかく、この世を去るまで、終わりなんてものはないのだと思う。別れは決して終わりではなく、ひとつの始まりでもあるわけだし(これは、卒業式でもいった)。

 演劇関係以外の話では、こういった場ではあったが、“博多の元・美少女”の娘さんに会えたことも、うれしかった。もちろん、母親に負けない美少女、というか、きれいな女性だった。

 2次会は、例によって高崎さんの仕切りで、近くにある、昔、演劇をやっていたという御主人のいる小料理屋に行った。この頃には、毎度のことながら、私も酔いが回っていて、店の名前は覚えていない。すみません。

 12日の日曜日は、学院で今年度最後の体験入学があり、和田学院長と、アニメ『明日のナージャ』のナージャ役でデビューした声優の小清水亜美さんがゲストで来た。残念ながら、私は彼女のアニメはほとんど見ていないので実力のほどはわからないが、小清水さん本人は背がスラッと高くてスリムで、なかなか魅力的だった。その割に、声質は幼い感じだったが。まぁ、まだ20歳ということだし。

 その日の夜も、例によって学院長らとの飲み会の予定も組まれていたが、翌日の卒業式のことも考え、連日の飲み会で胃の調子が悪かったこともあり、私は、参加は遠慮した。

 そして、翌13日の月曜日、今年度の卒業式が、天神の都久志会館で行われた。その日は朝から急激な冷え込みで、チラホラ雪が舞っていたほどだった。

 私にとっても福岡での最後の卒業式だったが、クラス担任というより、来賓というような扱いで、壇上に座ることになってしまった。朝からの準備段階では会場を走り回り、リハーサルでは指示を出し、本番では壇上に座ってずっと客席を見ていたが、祝辞を述べた後は、進行が気になってしょうがなかった。貧乏性なのだろう。式自体は、細かいミスはいくつかあったが、在校生の送辞も、卒業生の答辞も、練習をした成果もあって、なかなか感動的な盛り上がりを見せてくれた。式が終了した後は、会場で、卒業生たち、そして、式の手伝いをしたり、観に来ていた1年生たちと記念写真を撮った。1年生と会うのは、ひとまず、この時が最後なので、「今度会うときは、必ず、成長した姿を見せてくれよ!」と強くいって、別れた。

 会場の片付けをして、一度学院へ戻り、礼服から普段着に着替え、ミーティングを終えてから、卒業生たちが誘ってくれた謝恩会の会場に向かった。そこは、天神南の国体道路沿いにある天神テルラの3階にあるチャタムダイニングというレストランバーで、3クラス合同ということで人数が多く、店は貸切だった。実は、昨年12月の舞台発表会の打ち上げの時、彼らに、先生方を招くにしては仕切りが悪いということをかなりいったのだが、今回は、そのリベンジです、といっていた通り、最初から最後まで段取りもよく、なかなか感動的な謝恩会になった。やりゃあ出来るじゃん、といってやったが、あの時いわれて反省しました、といっていた。大人になったもんだ。先生方の挨拶では、泣いている学生もかなりいたし、私も多少、感極まったところもあった。しかし、去年までは、東京に送り出したら、なかなかその後の情報がわからず、連絡も出来なかったが、「今年は私も神奈川に戻るので、東京でもどんどん尻を叩いてやるからな!」といってやった。最後に、私が担任だった心クラス(卒業証書授与では、私は壇上のゲストだったので、直接、名前を呼べなかったが、席に座りながら小さな声でいってたんだぞと教えたら、みんな喜んでいた)のみんなと記念写真を撮り(その前には、個人個人と、次から次へと交互に写真を撮ったが)、棚原先生の一本締めで謝恩会は終わった。会場を出て外に出ると、雪が本格的に降ってきた。そして、上を見上げると、その同じビルの2階に、学院の他の科の先生の姿を発見した。何と、そこで他の科の謝恩会もやっていたのだ。

 雪が降りしきる中、私は2次会には参加せず、もらった大きな花束を抱えて家に戻り、風呂に入ってから、もう一度、みんなの卒業を祝い、一人で祝杯を上げて、バタリと寝た。

 というわけで、金・土・月と大きな飲み会が続いたので、今週はちょっと胃を休めた後、木曜日の夜には、待望の、『豚とオートバイ』のメンバーと、呼子にイカを食べに行くツアーの予定! その報告と、私なりの『豚とオートバイ』の総括は、来週、必ず! 『豚とオートバイ』に関しては、いろいろな感想が書かれているサイトの案内が、制作日誌に載っているので、興味のある方は、ぜひ見て下さいな! まぁ、それを読むと、書いた人(=観た人)の演劇観や、演劇に関する知識や取り組み方がわかったりして、なかなか楽しい! 感想は、百人いたら、百種類あっていいわけだから!

 ところで、来週の乾坤は、福岡から送る最後の乾坤になるかもしれない……まぁ、遅れないように気をつけよう!

(2006.3.15)
(つづく)


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