2005年7月第3週

 いやぁ、観て来ましたよぉ、博多祇園山笠の追い山! もぉサイコーでしたっ! 感動しましたねぇ、いろいろと! 祭り大好き(演劇も祭りみたいなもん、ていうか、演劇は祭儀から始まったんですから)の私の血の中にアドレナリンが大量に放出され、「オイサッ! オイサッ!」と一緒になって叫んで走り回ってましたから! 福岡に来て三年目、なんか、ようやく福岡の、というか博多の、良さというか奥深さが実感出来たような気がしました。私が博多生まれの博多っ子だったら、絶対、小さい頃から褌締めて走ってましたね。で、大きくなったら山を舁く(かく=担いで走ること)、と。いやぁ、いいなぁ、こういう、子供から大人まで、一緒にコミュニケーションを取りながら興奮して楽しめる祭りがあるっていうのは! おじいちゃん、お父さん、息子と、親子三代で舁いたり走ったりしている人もいるらしいですからね。で、そんな男衆に沿道から“勢い水”を掛ける女性たちが、また、いいんですよ! その関係が! 小さい男の子たちも走ってるんですが(彼らはまだ舁けません)、それに女の子たちが「頑張ってぇ!」と声援を送ったり拍手をしながら“勢い水”を掛ける。小さい頃からこういう関係が出来てるんですねぇ。いわゆる“九州男児”というのを支えているのは、女たちなんだ、という図式がはっきり見えました。で、女たちは男を立て、決して前にしゃしゃり出て来ない。いいなぁ、こういうの、って私は結構古いタイプの人間なんで、そう思うんですけど、今の時代はどうなんでしょうかねぇ。女性蔑視はいけませんが、あんまり女性が強いのもどうかと思うんですけど。あ、男性が弱くなってるのかな。そうですよね。現実問題として、昔に比べて男性機能も退化している(具体的に精子の数が減少している)らしいですから……なんか変な方向に話が進んでしまったので、追い山の話に戻します。

 博多祇園山笠のクライマックス、追い山は、7月15日金曜日の早朝! 私は4時起きで(当然、参加する人や櫛田神社で観る人たちは前の晩から寝ないで準備をしているわけですが)、シャワーを浴びてすっきりし、追い山の生中継をする番組(福岡の放送局だけでしょうね)を予約録画して、チャリンコで家を出ました。もちろん、外はまだ暗いです。家のある博多駅の筑紫口の方から博多口の方に出ても、駅前はいつも通りの(といっても、そんな早い時間に通ったことはないんですけど)、早朝の静かな街といった感じで、とても、これからすごい祭りがその近くで行われるといった雰囲気は、微塵も感じられませんでした。

 ところがっ! 博多駅から大博通りを北西に走っていくと、次第に歩道のあちらこちらに、いったいこんな時間(まだ5時前です)にどこから来たんだろうって感じで、人だかりがたくさん出来ているんです! どういう人たちなのか詳しく見ている時間はありませんでしたが、観光客も多くいるようで、通行止めの手前までタクシーもたくさん来てました。地下鉄も特別に早朝から動いていたようですね。

 広くて観やすいかなと思っていた大博通りは、逆に広いからこそ人が多いのでやめて、私は祇園の交差点にチャリを止め、舁き山が往復するところを観られるという承天寺の方に向かいました。そこは狭い道だったからか、人もそれほど多くなく、見物には絶好のポジションを確保することが出来ました。穴場ですね、ここは。なんて、初心者が偉そうにいってますが。

 さて、4時49分、櫛田神社に大太鼓の音が鳴り響き、今年の一番山笠(八番まであります)の千代流[ながれ](流れというのは、博多の街を区分けしたブロックのことで、七つの流れがあります)が櫛田入り(近くの待機している場所から櫛田神社に入る)をし、“博多祝い唄”(博多では、祝いの席や宴会では最後に必ず唄われ、その後、博多手一本で締めるそうです)を一番だけ歌い(この様子は、後で家に帰ってきてから録画したビデオを観たんですが、これも感動的でした。何しろ一番山笠は7年に1回、回ってくるだけなんですから)、それから約5kmのコースを舁き山を担いで走っていくわけです。七つの流れで、この最初の櫛田入りの時間(30〜35秒ぐらい)が競われるわけです。去年は東流が一番早かったそうですが、結果としては、今年も東流が一番でした(31秒17)。

 私が待っていた承天寺近くに、一番目の千代流の舁き山がやって来たのは、5時を5分ほど回った頃。まだ辺りが暗い中、「オイサッ! オイサッ!」という掛け声が遠くから聞こえてきたと思ったら、アッという間に舁き山が現れました。大きな山笠に、さらに人が乗っていて(台上がり)、総重量は約1tにもなるというのに、かなりのスピードです。当然、舁き手の男衆はみな必死の形相! 周りでは拍手が起き、桶やバケツで“勢い水”が掛けられます。私も興奮して掛け声を掛けながら、デジカメのシャッターを押してましたが、最初のうちはその動きとスピードについていけず(なんたって初体験ですから)、うまく撮れませんでした。で、なぜか涙も流れてきたんですよ。もちろん、感動しての嬉し涙です!

 それからは、次第に辺りも明るくなってきて、次々とやって来る舁き山に、写真のタイミングも合わせられるようになってきたんですけど、舁き山がやって来る前に、前走りの子供たちが“招き板”という、それぞれの流れの名前が書いてある板を持って走ってくるんですが、それがまた、かわいくてねぇ! 沿道の観客からの拍手も一段と盛り上がります。中には、褌を締めた小さな女の子も飛び入りで、お父さんや兄弟かなんかと一緒に走ったりするんですよ。

 全部で七つの舁き山が承天寺の前でUターンして走っていった後、私は急いで大博通りの祇園の交差点に向かいました。そこはまた、さらにすごい人で溢れ返っていました。そして、しばらくすると、承天寺の方に来ない(大きくて入って来ることが出来ない)ショートコースを、八番山笠が走って来ました。これは、舁き山とは違う“飾り山笠”(博多の街のあちこちに、博多祇園山笠の期間中、飾られている。祭り後は、中洲川端商店街で観ることが出来る)で、高さが10m以上もあるんです。途中で、虎の口から煙が噴き出してきたり、ニョキニョキとさらに上に伸びたりする仕掛けもあり、これを何十人という男衆が担いで走る様は、周りのビル街の風景と実にミスマッチで、不思議な興奮というか、感動しながらも、異様な感じを受けました。なんか、遠くから観ていると、まるで、ハウルの動く城のような感じでしたね。

 舁き山は、廻り止めという須崎問屋街の路地が終点になっていて、そこで止まるんですが、私は八番山笠を祇園の交差点で観た後、すぐ家に帰り、最後の方はテレビ中継で観ていました。廻り止めに次々に入ってくる舁き山をテレビで観ながらも感動していたんですが、当然、その日も平日なので授業があるわけで、テレビ中継が終わった後、ひと眠りすることにしました。何しろ、前日の夜は、まるで遠足の前の晩の小学生のように、ベッドに入ってもなかなか寝付くことが出来ず、2時間ぐらいしか寝てなかったと思います。結局、朝のひと眠りも興奮冷めやらぬという感じで、ほとんど眠ることは出来なかったんですが、それでも、その日は夜まで一日中、感動と興奮が続き、全然、眠気を感じませんでしたね。

 というわけで、私の追い山初体験は、いまだに感動がしっかり身体に残っていて、録画したビデオも何回も観直しています。もちろん、一杯やりながらね。一緒にその場にいる雰囲気になって、気合が入って酒も進むんですよ。

 翌日の土曜日は、学院でいつも通りの体験入学があったんですが、今回のゲストは声優さんではなく、俳優の五代高之さんでした。五代さんは大変楽しくて、気さくな方だったんですが、この日は当日入りの日帰りだったので、飲みに行くことは出来ず、「ぜひ今度は博多で飲みましょう!」という約束をして、見送りました。後で確認したら、私と同学年なんですね。

 さて、先週最後にしたお知らせした日・月の初の鹿児島行きは、結局、今週のためにやっておかないといけないことがたくさんあって、前乗りはやめ、当日、学院の先生方と一緒に行くことにしたんですが、その話は、次週お送りしますね! 今週末は、久しぶりに特になんの予定もない週末なんですが、きっと、なんかします。あ、夏の小倉競馬が始まってるんだ! それと、8月2日から三日間、一年ぶりに韓国に行くことが決定しました! といっても、今回は釜山だけなんですけどね。その話も次週!

(2005.7.20)
(つづく)


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